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犬を叱ったあと寄ってこない・元気がない|接し方と信頼の取り戻し方
公開日:2025年1月23日(木) 更新日:2026年10月6日(火) 犬の育て方
この記事の要点
犬を叱ったあとに寄ってこない・元気がない・目をそらすのは、反省でも拗ねているのでもなく、「叱った場面」と「叱った人」に「こわい」が結びついた状態です。叱られた犬は、飼い主のそばにいること自体を怖がり始めることさえあります。上目遣いの「反省顔」は罪悪感ではなく、叱られると予測したなだめのサインです(2009年の研究)。叱った直後は、続きを言わない・追いかけない・「おいで」を繰り返さない・声を低く小さく横を向いて座る・来たら静かに短く触る・いつもの日課をいつもどおり、の6つ。関係は、叱るのを家族全員でやめ、犬が自分から近づく形で「この人が近づくと良いことが起きる」を積み直して戻します。戻った目安は、呼ばなくても寄ってくる・触ると力が抜ける・手を伸ばしても低くならない・名前でしっぽが自然に揺れる、の4つで、日数では見ません。隠れる・震える・食欲の低下が続く、唸る・空噛みが出る、特定の人だけを避けるなら、動物病院と専門家へ。
「怒鳴ってしまったら、その日から寄ってこなくなった」「叱ったあと、元気がなくて部屋の隅にいる」「呼んでも来ない。目を合わせない」。犬を叱ったあとに調べる方の多くが、「これは自信を無くしたのか、嫌われたのか、どう接し直せばいいのか」を知りたくて来られています。この記事は、その状態で犬に何が起きているか、寄ってこない・元気がないのサインをどう読むか、叱った直後に何をするか、関係をどう積み直すかを、動物の行動を専門に診る獣医師が書いた資料と、獣医師の学会の見解、研究にそって書いたものです。「何日で戻る」という数字は書きません。資料に無いからです。
先に結論を書きます。叱ったあとに犬が寄ってこないのは、反省しているのでも拗ねているのでもなく、「叱った場面」と「叱った人」に「こわい」が結びついた状態です。だから直し方は、叱り直すことでも、謝って構い倒すことでもなく、「この人が近づくと良いことが起きる」を、犬が自分から近づく形で積み直すことです。叱り方そのものの考え方は犬の叱り方の記事に、目・耳・しっぽなど部位ごとの読み方は犬のボディランゲージの記事に分けているので、この記事は「叱ったあと」に絞ります。
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子犬を見る叱ったあとに犬に起きていること|「反省」ではなく「こわい」が残っています
「犬 怒ったあと 寄ってこない」で調べて来られる方がいちばん多いので、まずここから書きます。動物の行動を専門に診る獣医師が書いた、アメリカの動物病院グループ(VCA)の「犬の恐怖と恐怖症」の解説は、怖がっている犬を罰したり叱ったりしてはいけない理由を、こう書いています。叱られた犬は、その状況をもっと怖がるようになりやすく、「飼い主のそばにいること自体を怖がり始めることさえある」。同じ解説は、犬は叱られた瞬間の刺激(そこにいた人や物)と、叱られたという嫌な結果を結びつけてしまう、とも書いています。つまり、叱ったあとに寄ってこないのは、犬が「悪いことをした」と分かって遠慮しているのではなく、叱った人と、その場面が、犬の中で「こわいもの」として結びついた状態です。
「1回怒鳴っただけで、そこまでなるのか」と思われるかもしれません。同じ解説は、たった1回の嫌な経験でも強い恐怖を作ることがあり、その恐怖が関係のあるもの・無いものへ広がることもある、と書いています。もちろん、1回の失敗で関係が終わるわけではありません。ただ、犬の側では「1回でも残ることがある」のが事実で、それを知っておくと、叱ったあとの接し方が変わります。もう一つ、犬は「叱られた理由」を人のようには理解しません。大きな声や怒鳴り声は犬の興奮を高め、不安を悪くすることがあり、落ち着いて応じることを教えたいときには逆効果です。怒鳴った瞬間に犬が受け取ったのは「何が悪かったか」ではなく、「この人が急に怖い声を出した」です。
これは、学会の見解と研究でも同じ方向を指しています。アメリカの獣医師の学会(米国獣医行動学会)の2021年の見解は、力や痛みや不快に頼る方法はしつけにも問題行動の対応にも使うべきでなく、罰を使った方法は、人や他の犬への攻撃的な行動や、回避・不安に関わる行動と関連が見られ、新しいことを覚える力も落とす、としています。2020年にPLOS ONE誌に発表されたポルトガルの研究では、家庭犬92頭を、ご褒美中心の教室に通う犬と、罰を多く使う教室に通う犬とで比べたところ、罰を多く使う教室の犬は練習中に口をなめる・あくびをするなどのストレスに関わる行動が多く、緊張した状態でいる時間が長く、練習のあとの唾液のコルチゾール(ストレスに関わるホルモン)の上がり方が大きく、さらに練習の外で行った判断の課題でも「悲観的」な判断に寄っていました。2021年に英国のチームが発表した研究でも、飼い主が罰や不快を使う方法を2つ以上使っている犬は、ご褒美だけで教えられた犬より、あいまいな状況で「良いことは起きない」側に判断する傾向がありました。叱られ続けた犬は、叱られた場面だけでなく、世界の見え方そのものが慎重に寄るということです。これがいわゆる「自信を無くした」の中身です。
もう一つ、飼い主さまが必ず取り違えるのが「上下関係」です。「叱って上に立たないと、なめられる」と考えて叱っている方は、まずそこを外してください。同じ学会は、行動を専門とする獣医師の標準的な考え方として、「犬より上に立つ」という考え方を行動を直す指針として使うべきではなく、ペットの困った行動のほとんどは順位とは関係が無い、としています。犬が言うことを聞かなかったのは、飼い主さまを下に見たからではなく、たいていは「その状況で何をすればよいか分かっていなかった」からです。うちで紹介しているトイプードル、チワワ、ミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、マルチーズ、シーズーのような小型犬は、人の声も体も犬から見ればとても大きいので、怒鳴り声の「こわさ」がそのぶん強く出ます。
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寄ってこない・元気がない・目をそらす|叱ったあとのサインの読み方
「犬 叱った後 元気がない」「叱ったあと 寄ってこない」で調べて来られる方へ。叱ったあとの犬の様子は、ほとんどが「こわさ」と「なだめ」のサインです。怖がっている犬の行動は「戦う・逃げる・固まる・落ち着かない」の4つにまとめられ、具体的には、体を低くする、仰向けになる、目をそらす、しっぽを巻き込む、口をなめる、震える、口を開けて速く呼吸する、飼い主の後ろに隠れようとする、があります。ペット保険会社(アニコム損害保険)の、獣医師が監修した解説も、ストレスサインとして、あくび、鼻や口の周りを舐める、身震い、体の硬直、食欲が急に落ちる、家具の奥や人目につきづらい場所で過ごすことが多くなる、を挙げています。表にします。表は、アメリカの動物病院グループと犬の団体、ペット保険会社の解説をもとにまとめました。
| 見えているもの | 犬の側で起きていること | 今すること |
|---|---|---|
| 寄ってこない。離れた場所で座っている。呼んでも来ない | 回避。叱った人との距離を、犬が自分で取っている(「逃げる」は恐怖の反応の一つ) | 追いかけない、呼び続けない。距離は犬に決めさせる(次の章) |
| 目をそらす、顔をそむける、上目遣いで見る | なだめのサイン。目をそらすのは「なだめ」のいちばん控えめなサイン。「反省顔」に見えるが罪悪感ではない(次の項) | 目を合わせ続けない。こちらも横を向く |
| 体が低い、しっぽを足の間に巻き込む、耳が後ろに倒れる | 恐怖。体を低くして縮こまるのは恐怖とストレスで、巻き込んだしっぽも恐怖のサイン | 大きく動かない。声を低く小さく。抱き上げない |
| あくび、鼻や口をぺろりと舐める、身震い | 緊張。あくびと舐めは「どっちつかず」のサインで、状況が続けば攻撃に変わることもある | 叱るのを完全にやめる。その場から離れる |
| 触ろうとすると固まる。動かない | 「やめて」のサイン。固まるのは、関わりを終わらせたいという意思表示のことがある | 手を引く。今日は触らない |
| 部屋の隅・家具の奥・クレートにこもる | 逃げ場を探している。人目につきづらい場所で過ごすのはストレスサイン | 引っぱり出さない。そこを「安全な場所」として守る |
| 食欲が落ちる、寝てばかり、遊ばない | ストレスの表れ。ただし、体調不良でも同じことが起きる | 数日続く、下痢や嘔吐が重なるなら動物病院へ。叱ったせいと決めつけない |
| 逆に、しきりに飛びつく・なめる・お腹を見せる | なだめのことがある。なだめのサインは「前足を上げる→伏せる→仰向け」と進み、おしっこをもらすこともある | 「機嫌が直った」と読まない。落ち着いてから静かに触る |
この表でいちばん大事なのは、寄ってこないのも、目をそらすのも、飛びついてくるのも、犬の側では「この場を落ち着かせたい」「これ以上こわいことが起きないようにしたい」という同じ動機から出ていることです。どれが出ても、飼い主さまの返し方は同じで、「こわさを足さない」です。そして、犬が体を低くする・後ずさるといった控えめなサインで避けようとしているのに、それが繰り返し無視される(楽にならない)と、次は先回りして唸る・向かっていくに進むことがあります。「寄ってこないから、こちらから捕まえて構う」を続けると、いちばん避けたい方向に進みます。ストレスサインそのものの一覧はカーミングシグナル一覧の記事に、しっぽの読み方は犬のしっぽの意味の記事に分けています。
「反省している顔」は、悪いことをした自覚ではありません
叱ったあとの上目遣いや、耳を伏せて縮こまる姿を「反省している」「分かっている」と読む方が多いのですが、研究はそれを否定しています。2009年に発表された研究では、飼い主が部屋を出ている間におやつを「食べた犬」と「食べなかった犬」を作り、戻ってきた飼い主に叱る場合と叱らない場合で、犬の「しょんぼりした顔」を比べました。14頭という小さな規模の実験ですが、結果は、実際に食べたかどうかで表情に差は出ず、飼い主が叱ったときのほうがその表情が多く出て、しかも言いつけを守った(食べていない)犬のほうが、叱られたときに強く出た、というものでした。いわゆる「反省顔」も、罪悪感ではなく、人の体の様子や過去に受けた罰から「叱られる」と予想した犬が、それをやわらげようとしているなだめの行動です。つまり、あの顔は「何をしたか分かっている」証拠ではなく、「あなたが怒っていることは分かっている」証拠です。あとから叱って、しょんぼりしたのを見て「伝わった」と思うのは、取り違えです。
叱った直後の接し方|追いかけない・呼び続けない・横を向いて待つ
「犬を叱った後の接し方」「犬 叱ったあと 対応」で調べて来られる方へ。怒鳴ってしまった直後、叱ってしまった直後に、その場でやることを順に書きます。考え方は一つで、こわさを足さないこと、そして「近づくかどうか」を犬に決めさせることです。アメリカの獣医師の学会の見解は、怖いものに慣らすときの原則として、学ぶ側が常に安全だと感じられ、その場から降りられるようにしておくこと、いきなり浴びせる方法は避けること、を挙げています。叱った直後の飼い主さまは、犬にとって「怖いもの」になっているので、この原則がそのまま当てはまります。表は、アメリカの動物病院グループと犬の団体の解説をもとにまとめました。
| 順 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 叱るのを、その場で終える。続きを言わない、にらまない、ため息をつかない | 怒鳴り声は興奮と不安を上げる。叱っているあいだ、犬は「何が悪かったか」ではなく「この人が怖い」を学んでいる |
| 2 | 追いかけない。抱き上げない。「おいで」を繰り返さない | 距離を取るのは犬の側の対処。追い詰められた犬は固まるか向かってくる。呼んで来ないのに呼び続けると「おいで」が嫌な言葉になる |
| 3 | 声を低く小さくし、体を横に向けて、座るかしゃがむ。目を合わせ続けない | 犬の行動研究で「脅かす近づき方」とされるのは、正面から目を見つめたまま、上体を前に倒してゆっくり近づく動きで、家庭犬(ボーダー・コリー220頭)の半数近くがなだめ、4分の1が後ずさりした。その逆をする |
| 4 | 犬が自分から来たら、静かに、横から胸や背中を短く触る。来なければ、何もしない | なでることも、犬がその気でないときは恐怖と不安の元になる。近づいてきたことをほめるのは、声ではなく「何も嫌なことが起きない」で |
| 5 | いつもの日課を、いつもどおりにやる。ごはん、散歩、寝る時間を変えない | 決まった日課は犬を安心させる。「叱られたあと、いつもと違うことが続く」は不安を長引かせる |
| 6 | 落ち着いてから、「何をしたときに、どう叱ったか」を書き出す | 叱る場面を作らない準備に使う(後の章)。叱った回数と犬の様子を並べると、家族で共有できる |
「謝ったほうがいいのか」「抱きしめて安心させたほうがいいのか」もよく調べられています。犬は「ごめんね」の言葉を理解しませんが、声の高さと体の向きは読みます。怖がっている犬には、そっとなでるのは構いませんが、慰めすぎるのは避け、落ち着いて明るくしていてください。泣きながら抱きしめる、何度も名前を呼んでなでまわす、は「この人はまだ落ち着いていない」と伝わり、犬の側の緊張が続きます。やることは、低い声で短く一言、あとは横を向いて座って、いつもの空気に戻す。それだけです。おやつでご機嫌を取るのも、叱った直後は勧めません。ご褒美は「してほしい行動の直後」に渡すもので、理由なく渡しても何も教えていません。叱った直後におやつを渡すと、犬にとっては「怖い声のあとに、おやつ」という不思議な並びになるだけです。おやつは、次の章で「近づく=良いことが起きる」に使います。
信頼関係を取り戻す手順|「この人が近づくと良いことが起きる」を積み直す
「犬との信頼関係を取り戻す」「信頼関係 再構築」で調べて来られる方へ。やることは、犬の中で「叱った人=こわい」になった結びつきを、「この人が近づく・この人の手が伸びる=良いことが起きる」に、上書きしていくことです。怖いもの(たとえば人)と、とても良いもの(おやつ)を組み合わせて、「人が現れると良いことが起きる」という結びつきを作ります。怖がっているものに「良いことが起きる」結びつきを作ることは、恐怖と不安をやわらげるうえで欠かせません。相手が飼い主さま自身のときも、やることは同じです。順に表にします。表は、アメリカの動物病院グループ・犬の団体・獣医師の学会・ペット保険会社の解説をもとにまとめました。
| やること | 具体的に | 理由 |
|---|---|---|
| ① 叱るのを、家族全員でやめる | 「叱らない」を家のルールにする。トイレの失敗は黙って片づける、いたずらは届く範囲を変える(次の章)。誰か1人が叱り続けると戻らない | 罰を使った方法は、こわがって避ける行動や不安と関連し、覚える力も落とす。怖がっている犬を叱るとさらに怖がり、飼い主のそばにいること自体を怖がり始めることがある |
| ② 近づく=良いことが起きる、を作る | 犬が離れた場所にいるとき、こちらから近づかずに、通りすがりに床へおやつを1粒置いて去る。犬が自分から寄ってきたら、横を向いたまま手のひらから1粒。1日に何度も、短く | 怖いものと良いものを組み合わせて結びつきを変える。近づくのは犬の役目で、飼い主はこわくない位置で待つ |
| ③ 触り方を変える | 頭の上から手を出さない。横から胸や背中を、短く。固まったら手を引く。抱き上げるのは、自分から膝に乗ってくるようになってから | 頭をなでられて白目が出る例がある。固まるのは「やめて」。触り方は犬の撫で方の記事へ |
| ④ 「できた」を毎日作る | おすわりなど、確実にできる合図を1日に数回、1回1分。できた瞬間にほめておやつ。できないことは今はやらせない | ご褒美は行動の直後に、練習は成功で終える。「この人の合図に応じると良いことが起きる」を積む |
| ⑤ 日課を予測できる形に戻す | ごはん・散歩・遊び・寝る時間をなるべく同じ時刻に。散歩ににおいを嗅ぐ時間を入れる。留守番の前後を静かに | 決まった日課は犬を安心させる。運動不足・ふれあいの不足はストレスの原因 |
| ⑥ 逃げ場を守る | クレートや部屋の隅など、犬が自分で選んだ場所には手を入れない。そこへ入ったら追わない。罰としてクレートに入れない | クレートは罰ではなく静かな時間の場所として使う。逃げ場が無いと、恐怖は攻撃に変わりやすい |
「戻った」と言える目安も書いておきます。呼ばなくても自分から寄ってくる、触ったときに体の力が抜けている、こちらが立ち上がったり手を伸ばしたりしても体が低くならない、名前を呼ぶとしっぽが自然な高さで揺れる。この4つが、叱った人に対しても出ていれば、結びつきは戻っています。何日でそうなるかは、犬と、叱った回数と、それまでの関係で違うので、この記事には書きません。数字を目標にすると、戻っていないのに「もう大丈夫」と決めて触りに行き、また固まらせることになります。見るのは日数ではなく、上の4つです。
もう一つ。生後6か月から1歳前後の犬で「急に言うことを聞かなくなって、つい叱った」という方は、その時期の犬の側の事情も知っておいてください。生後5か月と8か月の犬93頭を調べた研究では、8か月では飼い主の「おすわり」に従う割合が5か月より下がった一方、知らない人に対してはむしろ良くなっていました。飼い主にだけ従いにくくなる時期がある、ということで、反抗でも、なめているのでもありません。アメリカの犬の団体(アメリカンケネルクラブ)の解説では、生後6〜14か月には2回目の「怖がる時期」も来るとされていて、この時期に叱ると、こわさが強く長く残りやすい時期でもあります。思春期の詳しい話は犬の反抗期の記事に書いています。
叱った理由を、叱らずに直す|トイレ・いたずら・吠え・呼んでも来ない
関係を積み直すあいだも、叱るきっかけになった行動そのものは続きます。ここで「叱らない=放っておく」にすると、飼い主さまがまた我慢の限界で怒鳴ることになるので、叱らずに直す形を先に決めておきます。しつけは「罰する」より「何をしてほしいかを教える」ほうが効きます。困りごとごとに、叱らない直し方の入口を並べます。
| 叱ってしまった場面 | 叱らない直し方の入口 | 詳しくは |
|---|---|---|
| トイレの失敗 | 黙って片づける。失敗できない配置(サークル・トイレの場所・回数)に変える。できた瞬間にほめる | 犬のトイレのしつけの記事 |
| 家具や靴をかじる、いたずら | 届く範囲を変える。かじってよいものを常に置く。退屈と運動不足を減らす | 犬が噛む理由の記事・ノーズワークの記事 |
| 吠える | 何に吠えているかで分ける。警戒なら音や視界を減らす、要求なら応えない、こわさなら距離 | 吠え方の種類の記事 |
| 呼んでも来ない | 来たら必ず良いことが起きる形に戻す。来なかったときに叱らない(「おいで」が嫌な言葉になる) | 呼び戻しの教え方の記事 |
| 飛びつく、興奮して手を噛む | 四つ足が床にあるときだけ良いことが起きる。上がりきる前に区切る | 子犬を落ち着かせる方法の記事 |
| 唸る、歯を見せる | 叱らない。手を引き、原因から離す。急に始まったなら痛みを疑って動物病院へ | 犬が怒る理由とサインの記事 |
どうしても止めたい瞬間には、「叱る」の代わりに「その場から離す」「別のことをさせる」を使ってください。してほしい行動をしたときだけご褒美を渡し、困った行動には何も渡さない。これが勧められている形で、叱ることはその中に入っていません。「叱らないと分からない」は、獣医師の学会の見解でも、動物病院グループの解説でも、支持されていません。叱り方そのものを見直したい方は犬の叱り方の記事へ。
やってはいけないことと、相談の目安
叱ったあとに飼い主さまがやりがちなことは、どれも「こわさを足す」か「結びつきを戻す機会をつぶす」方向に働きます。並べておきます。
- 寄ってこない犬を追いかけて捕まえる、抱き上げて構う……逃げ場を奪う形です。追い詰められた犬は固まるか、向かってくることがあります
- 「おいで」を繰り返す……来ないのに呼び続けると、合図そのものが嫌なものになります。呼ぶのは、来たら良いことが起きる形が戻ってから
- 泣いて謝る、大げさに慰める……慰めすぎるのは避け、落ち着いて明るくしていてください。飼い主さまの緊張が犬に伝わります
- しょんぼりしたのを見て「伝わった」と思う……あの顔は罪悪感ではなく、叱られると予測したなだめです(2009年の研究)。次も同じことをして、また叱ることになります
- 押さえつける、仰向けにする、マズルをつかむ、叩く……仰向けに押さえるなどの対決型の方法は、身を守るための攻撃を引き出すことがあります。叱ったあとに寄ってこない犬に、いちばんやってはいけないことです
- 罰としてクレートに入れる……逃げ場が罰の場所になります。クレートは犬が自分から入って休む場所として守ります
- 「戻らないから」と、また叱る……戻らないのは、叱った結びつきがまだ上書きされていないからです。叱り足しても、こわさが増えるだけです
- 家族で対応がばらばら……1人が叱らなくなっても、別の1人が怒鳴っていれば、犬は家全体を「先が読めない場所」として覚えます。「叱らない」は家族全員で
相談の目安です。叱ったあとの「寄ってこない」「元気がない」は、上の手順で、犬のほうから近づいてくる日が少しずつ増えていきます。ただし、次のどれかに当てはまるなら、家庭の手順だけで抱え込まないでください。
- 隠れる・震える・食欲の低下が何日も続く、または下痢や嘔吐が重なる(先に動物病院で体を診てもらう)
- 家族の特定の1人にだけ近づかない、その人が立ち上がると隠れる
- 触ろうとすると固まるだけでなく、唸る・歯を見せる・空噛みが出る
- 自分の足や体をなめ壊している
- 叱った場面(トイレ・玄関・特定の部屋)そのものを避けるようになった
- 飼い主さまの側が、叱らずに直す形を作れずに、怒鳴ることが繰り返されている
人を強く怖がる犬は、恐怖に気づいた時点でできるだけ早く専門家に診てもらってください。まず動物病院で体の問題がないか確かめてから、行動の治療計画を組むか、専門家を紹介してもらいます。相談するときは、「いつ・何をしたときに・どう叱って・そのあと犬がどうしたか」を書いたものを持っていくと、その場で具体的な話になります。フローエンスはブリーダー直販で、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。「怒鳴ってしまってから寄ってこない」「どこまで近づいていいか分からない」といった、その子の様子に合わせた相談は、トレーナーダイヤルで受けています。相談のタイミングに迷ったら、ドッグトレーナーに相談するタイミングの記事も参考にしてください。
よくある質問
犬を叱ったあと、寄ってこなくなりました。なぜですか?
反省でも拗ねているのでもなく、叱った場面と叱った人に「こわい」が結びついた状態です。叱られた犬はその状況をもっと怖がるようになりやすく、飼い主のそばにいること自体を怖がり始めることさえあります。離れた場所にいるのは、犬が自分で距離を取って身を守っている行動なので、追いかけたり抱き上げたりせず、声を低く小さくして横を向いて座り、犬が自分から近づくのを待ってください。近づいてきたら、静かに横から胸や背中を短く触るか、何もしないで、いつもの日課に戻します。
犬に怒鳴ってしまいました。1回でも信頼関係は壊れますか?
1回で関係が終わるわけではありませんが、犬の側では1回でも残ることがあります。たった1回の嫌な経験でも強い恐怖を作ることがあり、関係のあるもの・無いものへ広がることもあります。怒鳴り声は犬の興奮と不安を上げ、犬が受け取るのは「何が悪かったか」ではなく「この人が急に怖い声を出した」です。だから直後にやることは、叱り直すことでも謝って構い倒すことでもなく、こわさを足さないこと、そして「この人が近づくと良いことが起きる」を犬が自分から近づく形で積み直すことです。
叱ったあと、元気がなくて食欲もありません。どうすればいいですか?
食欲が急に落ちる、人目につきづらい場所で過ごすことが多くなる、あくび、鼻や口を舐める、身震い、体の硬直がストレスサインで、叱られたあとに出るのはこれです。追い出さず、逃げ場を守り、叱るのを完全にやめて、ごはんや散歩の日課はいつもどおりにしてください。ただし、食欲の低下や元気の無さは体調不良でも同じように出ます。何日も続く、下痢や嘔吐が重なる、なら「叱ったせい」と決めつけずに動物病院で診てもらってください。
叱ったあとに謝ったり、おやつをあげたりしてもいいですか?
そっとなでるのは構いませんが、慰めすぎるのは避けて、落ち着いて明るくしていてください。泣きながら抱きしめる、何度も名前を呼んでなでまわす、は飼い主さまがまだ落ち着いていないことが伝わり、犬の緊張が続きます。おやつも、叱った直後に渡すと「怖い声のあとにおやつ」という不思議な並びになるだけです。ご褒美は行動の直後に渡すもので、理由なく渡しても何も教えていません。おやつは、あとで「この人が近づくと良いことが起きる」を作るために使ってください。
犬を叱った後の接し方を教えてください。
順に6つです。叱るのをその場で終えて続きを言わない。追いかけない・抱き上げない・「おいで」を繰り返さない。声を低く小さくして体を横に向け、座るかしゃがんで目を合わせ続けない。犬が自分から来たら静かに横から胸や背中を短く触り、来なければ何もしない。ごはん・散歩・寝る時間をいつもどおりにする。落ち着いてから「何をしたときにどう叱ったか」を書き出す。正面から目を見つめたまま前かがみでゆっくり近づく動きは、犬の行動研究で「脅かす近づき方」として使われるものなので、その逆をします。
叱ったら上目遣いで反省しているように見えます。伝わっていますか?
伝わっているのは「あなたが怒っていること」で、「何をしたか」ではありません。2009年の研究では、飼い主の留守中におやつを食べた犬と食べなかった犬を作って、叱る・叱らないで表情を比べたところ、実際に食べたかどうかで差は出ず、叱られたときのほうが「しょんぼりした顔」が多く、言いつけを守った犬のほうが強く出ました(14頭の実験)。反省顔は罪悪感ではなく、叱られると予想した犬がそれをやわらげようとする、なだめの行動です。あとから叱って、しょんぼりしたのを見て「伝わった」と思うのは取り違えです。
信頼関係を取り戻すのに、どのくらいかかりますか?
資料に数字が無いので、この記事には書きません。犬と、叱った回数と、それまでの関係で違います。日数の代わりに、呼ばなくても自分から寄ってくる、触ったときに体の力が抜けている、こちらが立ち上がったり手を伸ばしたりしても体が低くならない、名前を呼ぶとしっぽが自然な高さで揺れる、の4つで見てください。この4つが叱った人に対しても出ていれば戻っています。数字を目標にすると、戻っていないのに触りに行って、また固まらせることになります。何日たっても隠れる・震える・食欲の低下が続く、唸る・空噛みが出るなら、動物病院と専門家へ相談してください。
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まとめ
犬を叱ったあとに寄ってこない・元気がない・目をそらすのは、反省でも拗ねているのでもなく、叱った場面と叱った人に「こわい」が結びついた状態です。叱られた犬は、飼い主のそばにいること自体を怖がり始めることさえあります。罰を使った方法は回避・不安と関連し、覚える力を落とし、罰を多く受けた犬は判断そのものが悲観的に寄る、というのが学会の見解と研究の結果で、これが「自信を無くした」の中身です。上目遣いの反省顔は罪悪感ではなく、叱られると予測したなだめのサインです。叱った直後は、続きを言わない、追いかけない、「おいで」を繰り返さない、声を低く小さく横を向いて座る、来たら静かに短く触る、いつもの日課をいつもどおり、の6つで、謝って構い倒すこともおやつでご機嫌を取ることもしません。関係は、叱るのを家族全員でやめ、通りすがりにおやつを置いて去る・自分から来たら横向きのまま手のひらから渡す、という形で「この人が近づくと良いことが起きる」を積み直し、触り方を横からに変え、できる合図で「できた」を毎日作り、日課を予測できる形に戻し、逃げ場を守ります。戻った目安は、呼ばなくても寄ってくる・触ると力が抜ける・手を伸ばしても低くならない・名前でしっぽが自然に揺れる、の4つで、日数では見ません。叱るきっかけになった行動は、叱らずに直す形(配置・届く範囲・分けて対応)を先に決め、隠れる・震える・食欲の低下が続く、唸る・空噛みが出る、特定の人だけを避けるなら、動物病院と専門家に相談してください。




























