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犬のボディランゲージ|目・耳・口・しっぽ・体の読み方一覧【2026】
公開日:2024年9月6日(金) 更新日:2026年10月6日(火) 犬の育て方
この記事の要点
犬のボディランゲージは、目・耳・口・しっぽ・体(重心)・毛・声の7か所を「組み合わせ」と「前後の流れ」で読み、1か所だけで決めません。しっぽを振る=うれしい、お腹を見せる=なでて、あくび=眠い、目をそらす=無視、毛が逆立つ=攻撃、はどれも取り違えで、しっぽを振るのは感情が高ぶっているということだけ、あくびと鼻を舐めるのは緊張、目をそらすのは場を落ち着かせる合図です。攻撃は「攻め」と「守り」に分かれ、飼い主さまが噛まれる場面で見落とされやすいのは低くなって目をそらしている守りの側で、しっぽを巻き込んだ犬に手を伸ばさないことが最初の予防です。犬はこちらの体も読んでいて、正面から目を合わせたままゆっくり近づくのは犬にとって脅しの近づき方です。読んだサインには距離で返し、唸りを叱らないことが、サインを残すいちばんの方法です。
「しっぽを振っていたのに噛まれた」「お腹を見せているから、なでていいと思った」「あくびばかりするのは眠いから?」。犬のボディランゲージの悩みは、たいてい「読み違え」から始まっています。犬は声より体で気持ちを伝える動物で、しかもその読み方は、人の常識と逆のものが多いのです。あくびは眠いのではなく緊張、目をそらすのは無視ではなく遠慮、歯を見せるのが挨拶のこともあります。
先に結論を書きます。犬のボディランゲージは、目・耳・口・しっぽ・体(重心)・毛・声の7か所を「組み合わせ」と「前後の流れ」で読みます。1か所だけで決めないのが、いちばん大事な決まりです。この記事では、部位ごとの読み方を一覧にし、リラックス・遊び・警戒・不安・攻撃の場面別に「どの部位がどうなっているか」を表で並べ、人が取り違えやすいサイン、犬がこちらの体をどう読んでいるか、そして読んだあとに何をするかまでを、獣医行動学の資料と研究にそって書きます。しっぽの細かい読み方は犬のしっぽの意味の記事に、犬が自分や相手を落ち着かせる合図はカーミングシグナル一覧の記事に分けています。この記事は、その全体像です。
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子犬を見る犬のボディランゲージとは|体で気持ちを伝える。読むのは「組み合わせ」と「前後」
ボディランゲージとは、体の姿勢・表情・しっぽ・耳・毛・声の出し方で気持ちを伝えることです。動物の行動を専門にする獣医師が書いた、アメリカの動物病院グループ(VCA)の解説は、人と犬の違いをひとことで「人は聞く生き物、犬は見る生き物」と言い表しています。犬どうしの伝え合いでは、体の姿勢とにおいが大きな部分を占め、声の役割は人より小さい、ということです。犬のボディランゲージが伝えるのは「今どんな気持ちか」であって、「これから何をするか」までは伝えないこともあります。だから「怒っている」は読めても、「噛む」かどうかは、その前後と場所を見て判断することになります。
もう一つ、犬の表情は「勝手に出ているもの」ではなく「こちらに向けて出しているもの」だと分かってきました。2017年の研究(Kaminski ら)では、人が犬のほうを向いているときのほうが、背中を向けているときより、犬の顔の動きがはっきり多くなりました。目の前に食べ物があるかどうかでは変わらなかったので、表情は興奮で勝手に出るのではなく、見ている相手に向けた伝達だと考えられています。犬はこちらが見ているときに、いちばん表情を出します。読む側が見ていなければ、そもそも出ない、ということでもあります。
読むときの決まりは3つです。うちで紹介しているトイプードル、チワワ、ミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、マルチーズ、シーズーのような小型犬も、この決まりはまったく同じです。
- 1か所で決めない……一つひとつの体のサインは、その瞬間のもので、すぐ変わります。必ず前後の状況と全体の様子の中で読んでください。しっぽだけ、耳だけで判断しないのは、このためです
- 前後の流れで読む……同じ解説は、犬のサインは「段階を追って強くなる」もので、ふつうは控えめなサインが先、強いサインが後に出る、としています。ただし、その犬の経験しだいで控えめな段階を飛ばしたり、いっきに進んだりする、とも書かれています。控えめなサインのうちに気づくのが、読む目的です
- その子の「ふだん」と比べる……しっぽが上に巻いている犬種、垂れ耳の犬種、しっぽが短い犬では、部位そのものが動きにくく、読める情報が減ります。だから「教科書の形」ではなく「いつもとどう違うか」で読みます(後の章で書きます)
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部位別の読み方一覧|目・耳・口・しっぽ・体・毛・声
「犬のボディランゲージの種類」で調べて来られる方のために、部位ごとの読み方を一覧にしました。4つの列は、落ち着いているとき/高ぶり・警戒(興味も含みます)/不安・こわい/攻撃の前、です。アメリカの犬の団体(アメリカンケネルクラブ)と、上の動物病院グループの解説をもとにまとめました。同じ列に並んだサインが2つ3つ重なったとき、その気持ちだと読んでください。
| 部位 | 落ち着いている | 高ぶり・警戒・興味 | 不安・こわい | 攻撃の前 |
|---|---|---|---|---|
| 目 | まぶたがゆるみ、目を細めているように見える「やわらかい目」 | 対象をじっと見る。目を大きく開く | 視線をそらす、顔ごとそむける。白目が見える「ホエールアイ」 | 目を大きく開いたまま、長く硬く見つめ続ける(いちばん控えめな脅し) |
| 耳 | 力が抜けて自然な位置 | 立って前を向く。頭・首・耳が上がる | 後ろに下がる、頭と首も低くなる | いったん上がった耳と頭が、脅しが強まるにつれ下がる(のどと耳を守る姿勢) |
| 口 | 口元がゆるみ、舌が少し出る | 口を閉じる。息が荒くなる | 鼻や口をぺろりと舐める、あくび、素早い舌の出し入れ。前歯を見せる「笑顔」は、体がゆるんでいればこの列ではなく落ち着き | 唇の端が引き上がって C の形になり、前歯が全部見える。低い唸り |
| しっぽ | 自然な高さで、体ごと揺れるようなゆっくり大きな振り方 | 高く上がる。速く小刻みに振る=高ぶり | 低い、足の間に巻き込む。振っていても、触られると止まる・固まる | 旗のように高く立てて、細かく震わせる(「フラッギング」) |
| 体・重心 | 力が抜けて、体がくねくね動く | 重心が前にかかる。足を1本前に出す(動き出す前触れ) | 体を低くして縮こまる。前足を1本上げる。伏せる、仰向けになる(この順で強くなる)。固まる | 重心が前、足と足先を突っ張って背を高く見せる。体が硬い |
| 毛 | 寝ている | 肩から背中、しっぽまで逆立つ。高ぶっている印で、必ずしも攻撃ではない(鳥肌のように勝手に起きる) | 逆立つことがある | 逆立ち+硬い体+硬い凝視、のように他のサインと重なる |
| 声 | — | 「ワンワン」(警戒・興奮・要求) | 「クーン」「クンクン」でしっぽが下がる | 低い唸り、歯を見せる。空噛み(噛む前の最後の警告) |
目|やわらかい目・硬い目・そらす目・白目
犬の目は、「やわらかい目」と「硬い目」に分けて見ます。やわらかい目はまぶたがゆるんで、目を細めているように見え、落ち着きか喜びのしるしです。硬い目は目が冷たくなったように見え、おもちゃを守っているときや攻撃的なときに出ます。そして長く、じっと、硬く見つめ続けるのは脅しです。目を大きく開いてまっすぐ見るのは、攻撃の側でいちばん控えめなサインで、犬どうしではこれだけで済むことが多いのです。反対に、目をそらすのは場を落ち着かせるためのサインです。人はこれを無視や頑固と受け取りがちですが、犬は居心地の悪さを伝えています。白目が見える「ホエールアイ」は不安やストレスのサインで、頭をなでられて嫌なときや、骨やおもちゃを取られそうで怖いときに出ます。
「上目遣い」について、面白い研究があります。2019年の研究(Kaminski ら・米国科学アカデミー紀要)では、目の内側の眉を強く引き上げる筋肉が、オオカミには無く、犬にはそろって備わっていました。犬はこの動きをオオカミより頻繁に、強く出し、その表情は人が悲しいときの顔に似ているため、人の世話をしたい気持ちを引き出しているのではないか、とされています。つまり、あの「上目遣い」は犬が人と暮らすうちに身につけた顔で、おねだりや甘えのときによく出ます。ただし、体が低く、目をそらしがちで、白目が見えるなら、それは上目遣いではなく不安の目です。ここでも組み合わせで読みます。
耳|上がる・前を向く・下がる。垂れ耳は付け根で読む
警戒したり自信のある構えのときは頭・首・耳が上がり、なだめたり怖がっているときは耳・頭・首が下がります。おもしろいのは攻撃の前で、最初は頭と耳を上げて大きく見せ、脅しが強まると今度は下げて、のどと耳を守る姿勢になります。耳が上がっているか下がっているかだけでは、自信なのか攻撃なのか決められない、ということです。人が犬の気持ちを読む研究(後の章)では、犬の経験が豊かな人ほど「耳」を手がかりにしていたと報告されていて、耳は慣れた人ほど見ている部位でもあります。シーズー、マルチーズ、トイプードルのような垂れ耳の子は、耳の先ではなく付け根の向きと、頭の高さで読んでください。
口|舐める・あくび・歯を見せる。「笑顔」と「威嚇」の見分け
口でいちばん取り違えられるのが、あくびと舐めです。人は眠いときや退屈なときにあくびをしますが、犬は緊張したときにあくびをします。鼻や口をぺろりと舐めるのも同じで、食後の舐めとは別に、不安なときに素早く舌が出ます。この2つは「どっちつかずの行動」で、用心している・気にしている・ストレスがある・状況が続けば攻撃に変わることもある、という中間の状態です。あくびと舐めが続いたら、「眠いのかな」ではなく「今の状況が嫌なのかな」と読み替えてください。この2つを含む、犬が自分と相手を落ち着かせる合図はカーミングシグナル一覧の記事にまとめています。
歯を見せる表情は2つあります。威嚇の唸り顔は、唇の端が C の形になって前歯が全部見え、低い唸りと一緒に出ます。一方で、前歯を見せて「笑う」犬もいて、こちらは体がゆるんでくねくね動いていて、「こんにちは、敵意はありません」の挨拶です。見分けるのは口ではなく、体が硬いか、ゆるんでいるかです。歯が見えた瞬間に叱ると、挨拶を叱ることになります。
しっぽ|高さ・速さ・向き。振っている=うれしい、ではありません
しっぽを振っているのは「気持ちが高ぶっている」ということだけで、うれしいとは限りません。読むのは高さ・速さ・向きです。高いほど自信があり、旗のように立てていれば自信か攻撃、下がって足の間に巻き込んでいれば恐怖とストレス。ゆっくり大きく体ごと揺れるのはリラックス、速く小刻みな振りは高ぶりで、悪い意味のこともあります。向きについては、犬は飼い主のように良いものに向き合うと右寄りに、嫌なものに向き合うと左寄りに振る傾向があることが、研究で分かっています。2013年の研究では、さらに、左寄りに振っている犬の映像を見せられた犬のほうが、右寄りの映像を見たときより心拍が上がり不安な行動が増えました。犬どうしは、振り方の左右差まで読んでいる、ということです。高さごとの意味、短いしっぽの読み方は犬のしっぽの意味の記事に分けています。
体と重心|前に乗るか、低くなるか、固まるか
「犬 前傾姿勢」で調べて来られる方がいます。重心が前にかかるのは「近づきたい」の合図です。ただの興味のこともあり、高く上げて震わせるしっぽのような攻撃のサインと重なれば攻撃の意図で、体を大きく見せようとしています。攻撃に向かうときは、重心を前に移す→足と足先を突っ張って背を高くする→肩と腰の毛が逆立つ→しっぽを立てるか背中の上に反らせる、の順に進みます。前傾で足を1本前に出しているのは「動き出す前触れ」で、近づく用意がある構えです。散歩中にこの姿勢で何かを見つめて固まったら、興味なのか攻撃なのかは、しっぽの震え・毛・口で決めます。何も重なっていなければ、対象に気を取られているだけです。
反対が、低くなる姿勢です。体を低くして縮こまるのは恐怖やストレスで、「害を加えるつもりはない」と小さく見せています。なだめのサインは、目をそらす→耳・頭・首を下げる→体を低くする→前足を1本上げる→伏せる→仰向けになる、の順で強くなります。そして「固まる」です。なだめている犬はしっぽを振っていても、触られると振るのをやめて固まることが多いのです。なでていて犬が固まったら、それは「もっと」ではなく「やめて」です。遊びの誘いは、胸を床につけてお尻を高く上げる「プレイバウ」です。いちばん読みやすいボディランゲージで、犬にも人にも使います。伏せる姿勢の見分けは犬が伏せる意味の記事へ。
毛と声|逆立つ毛は「攻撃」ではない。声は状況と一緒に
背中の毛が逆立つのは、高ぶっているのは確かですが、必ずしも悪い意味ではありません。動揺やストレスのこともあれば、興奮や強い興味のこともあり、人の鳥肌のように勝手に起きる反応です。強く高ぶっている印であって、攻撃するという意味とは限りません。毛だけで「怒っている」と決めないでください。
声は、ペット保険会社(アニコム損害保険)の獣医師が監修した解説が、鳴き方ごとに分けています。「ワンワン」は警戒・興奮・要求、「ウーッ」の唸りは威嚇や、食べ物や物を守るとき、「クーン」「クンクン」はさみしさや不安(しっぽが下がる)か、おねだり(上目遣いでしっぽが上がる)、そして短い「キャンッ!」は痛みのことがあり、心当たりの無い場面で出たら体に傷がないか見るように、とあります。同じ「クーン」でも、しっぽと目で意味が分かれます。唸り声については、2010年の研究で、犬の唸りが状況ごとに違い、出している犬の体の大きさの情報を含んでいることが分かっており、犬は唸り声を聞いただけで、その大きさに合う犬の絵のほうを先に長く見ました。犬は唸りから相手の大きさまで読んでいます。吠え方の見分けは吠え方の種類の記事、唸りへの対応は触ろうとすると唸る犬の記事に分けています。
場面別の見分け表|リラックス・遊び・警戒・不安・攻撃
部位ごとの読み方を、今度は場面の側から並べます。読むときは、横一列に並んだサインのうち2つ3つが同時に出ているかを見てください。1つだけなら、まだ決められません。攻撃は「攻め」と「守り」の2つに分けています。飼い主さまが噛まれる場面で見落とされやすいのは、守りの側です。
| 場面 | 目・耳・口 | しっぽ・体・毛 | 声 | 飼い主さまがすること |
|---|---|---|---|---|
| リラックス | やわらかい目。耳は自然。口元がゆるみ舌が少し出る | しっぽは自然な高さでゆっくり大きく揺れる。体はくねくね。横になって寝る | ほぼ無し | そのまま。なでるなら横から胸や背中を |
| 遊びの誘い | 口を大きく開けた表情。目はやわらかい | 胸を床につけてお尻を上げるプレイバウ。弾むような大げさな動き。しっぽは大きく振る | 大げさな唸りが混じることも | 遊ぶ。犬どうしなら役割が入れ替わっているかを見る(遊びと喧嘩の見分け方) |
| 警戒・強い興味(前傾姿勢) | 対象をじっと見る。耳は立って前。口は閉じる | 重心が前。足を1本前に出す。しっぽは高め。毛が逆立つこともある | 警戒吠え、または無音 | 何を見ているかを先に見る。リードを短く持ち、興味なら距離を取ってやり過ごす。しっぽの震え・毛・口が重なれば次の行へ |
| 不安・こわい | 視線をそらす、顔をそむける。白目。耳は後ろ。鼻を舐める、あくび | 体が低い。しっぽが低い・巻き込む。前足を上げる。固まる。飼い主さまの後ろに回る | 「クーン」。息が荒い | 怖がっているものから距離を取る。無理に近づけない、抱いて差し出さない(男性を怖がる犬の記事) |
| なだめ(「反省している顔」に見えるもの) | 目をそらす。耳・頭・首が下がる。上目遣い | 体が低い。伏せる。仰向けになる(おしっこが少し出ることも) | 無音 | これは罪悪感ではなく、飼い主さまの体の様子や過去の罰から「叱られる」と予測した犬が、それを止めようとしている姿。叱るのをやめる |
| 攻めの威嚇 | 目を大きく開いて硬く見つめる。耳と頭が上がり、脅しが強まると下がる。唇の端が C の形、前歯が見える | 重心が前、足を突っ張る。体が硬い。毛が逆立つ。しっぽを高く立てて細かく震わせる | 低い唸り。吠える。空噛み | それ以上近づかない・近づけない。手を出さない。叱らない。原因(物・場所・相手)から離す(犬が怒る理由とサインの記事) |
| 守りの威嚇 | 目をそらしながら白目。耳は後ろ。唇が引きつって歯が見える | 体は低く、しっぽは巻き込んだまま毛が逆立つ。後ずさりできる構え。逃げ場が無いと固まる | 唸り、または「クンクン」と唸りが混じる | 逃げ道を空ける。触ろうとしていた手を引く。追い詰めない。「怖い」が先なので、慣らしは距離から(犬が噛む理由の記事) |
「守りの威嚇」の行を、もう少し書きます。「うちの子はおとなしく従うから噛まない」は、よくある思い違いです。攻めの構えも守りの構えも、目的は同じで「こわいものを止めたい」であり、こわいものが引かなければ、どちらの側からでも噛むところまで進むことがあります。しっぽを巻き込んで低くなっている犬は「大丈夫な犬」ではなく、「逃げ場を探している犬」です。その犬に手を伸ばすと、逃げ場が無くなった瞬間に、守りの噛みが出ることがあります。子どもがいるご家庭では、子どもの顔が犬の口の高さにあることも忘れないでください(犬と子どもの記事)。
人が取り違えやすいサイン|「うれしい」と読んで噛まれる形
2012年の研究(Wan ら・PLoS ONE)は、人が犬の気持ちをどれだけ読めるかを、2,163人に犬の映像を見せて調べました。犬の専門家があらかじめ「うれしい」「こわがっている」に分けた映像です。「うれしい」映像は、犬と暮らしたことの無い人でも9割前後が正しく読めました。ところが「こわがっている」映像を正しく読めたのは、犬と暮らしたことの無い人で3割、犬の専門家で7割超と、経験で大きく分かれました。経験のある人ほど手がかりにする部位が多く、とくに耳を見ていました。うれしい犬は誰でも分かる。怖がっている犬は、慣れないと分からない。これが、ボディランゲージを学ぶ意味です。取り違えやすいものを並べます。
| 見えているもの | 人が読みがちな意味 | 実際は | 見分けるところ |
|---|---|---|---|
| しっぽを振っている | うれしい | 気持ちが高ぶっている、ということだけ。警戒や不安でも振る | 高さと速さ。高く速く小刻みなら高ぶり。低く振りながら触ると止まるなら不安 |
| お腹を見せて仰向け | なでてほしい | リラックスした犬ならそのとおり。だが強い不安やストレスのこともあり、おしっこが少し出ることもある | 体がゆるんでくねくねしているか、硬く固まっているか。目をそらして固まっていたら触らない |
| あくび・鼻を舐める | 眠い、退屈、食べたい | 緊張や不安。状況が続くと攻撃に転じることもある中間の状態 | 眠る前以外の場面で出る。抱っこ中、来客中、動物病院で出る |
| 目をそらす、顔をそむける | 無視している、頑固 | 場を落ち着かせようとしている。居心地が悪い | こちらが近づく・見つめる・声を大きくしたときに出る |
| 歯が見える | 威嚇 | 体がゆるんでいれば「笑顔」の挨拶 | 体が硬いか、くねくねか。唸りがあるか |
| 背中の毛が逆立つ | 怒っている | 高ぶっているだけで、興奮や強い興味のこともある | 目と口としっぽが攻撃の列に入っているか |
| 伏せて動かない、上目遣い | 反省している | なだめのサイン。叱られると予測して止めようとしている | 叱る前に出ているか。飼い主さまの声や姿勢の直後に出る |
| 飛びつく、走り回る | 喜んでいる | うれしい高ぶりのことも、不安の高ぶりのこともある | しっぽが高く体が前なら喜び。白目・鼻を舐める・きょろきょろが混じるなら不安(子犬の興奮の記事) |
もう一つ、犬種と体の作りによる読みにくさです。2008年の研究(Leaver と Reimchen・Behaviour)では、しっぽの長さと動きを変えられる実物大の犬の模型を、リードの付いていない犬492頭に近づけました。長いしっぽでは、振っているときと止まっているときで犬の近づき方が変わったのに、短いしっぽでは振っていても止まっていても反応が変わりませんでした。短いしっぽは、犬どうしでも情報が伝わりにくい、ということです。しっぽが上に巻いている犬種、垂れ耳の犬種、顔の毛が長い犬種でも同じことが起きます。うちで紹介している子でいえば、シーズーやマルチーズは耳と目が毛に隠れやすく、ポメラニアンはしっぽが背中に乗ったままです。こうした子は、部位の形ではなく「いつもとの違い」と「体の硬さ」で読んでください。いつもより耳の付け根が後ろ、いつもより体が硬い、いつもならしないあくび、が読める子です。
人の側のボディランゲージ|犬はこちらの体も読んでいます
犬はこちらの細かな合図や気持ちを読んでいることが、研究で分かってきています。犬は、私たちが犬を分かっているより、ずっと私たちのことを分かっているのです。だから、犬を読むのと同じだけ、こちらがどう見えているかにも気を配ります。犬の行動研究で使われる「脅かす近づき方」の手順(2016年の研究)は、見知らぬ人が5メートル離れた位置から、約4秒に1歩というとても遅い足取りで、上体を少し前に倒し、犬の目をじっと見続けながら近づく、というものです。家庭犬(ボーダー・コリー220頭)にこれをしたところ、なだめる(しっぽを下げ耳を伏せて体を硬くする)が47%、後ずさりが24.7%、唸る・歯をむく・噛みつこうとするが14.6%で、友好的に近づいてきたのは6.5%だけでした。人が「慎重に、そっと近づいたつもり」の動きが、犬にはいちばんの脅しに見えるということです。アメリカの獣医師の学会(米国獣医行動学会)の2021年の考え方でも、避けるべきことの中に「見つめる」が入っています。
| 人のしぐさ | 犬にどう見えるか | 代わりに |
|---|---|---|
| 正面から、目を合わせたまま、ゆっくり近づく | 「脅かす近づき方」そのもの。硬い凝視+前傾(2016年の研究) | 体を横に向けて、目を合わせ続けず、犬が自分から近づくのを待つ |
| 上からかがみ込む、頭の上から手を伸ばす | 大きなものが上から覆いかぶさる。頭をなでられて白目が出ることがある | しゃがんで低くなり、手は下から、胸や背中を横から。なでる場所は犬の撫で方の記事へ |
| 抱き上げて、知らない人に差し出す | 逃げ場を奪ったうえで対象を近づける | 犬が自分の足で近づける形にする。嫌がったら降りられるようにする |
| 大きな声、急な動き、上から叱る | 脅威。なだめのサイン(低くなる・目をそらす)が出る | 声は小さく短く。叱り方は犬の叱り方の記事へ |
| 寝ている・食べているときに触る | 噛まれる事故を防ぐうえで、してはいけないことの1つ | 起きて、こちらを見てから。子どもには「寝ている犬と食べている犬には触らない」を教える |
| 犬に背を向けて、見ていない | 犬は見ている相手にいちばん表情を出す(Kaminski 2017) | 読みたいときは、犬のほうを向く。表情はこちらが見ているときに出る |
サインを読んだら、どう返すか|距離・手を引く・叱らない
読めるようになった次は、返し方です。返し方はサインの種類ごとにほぼ決まっていて、共通するのは「不安と攻撃の前のサインには、距離で返す」ことです。犬のサインは「これを止めてほしい」の意味であることがほとんどなので、止めれば、それ以上に進みにくくなります。
| 読んだサイン | 返し方 | してはいけないこと |
|---|---|---|
| リラックス(やわらかい目・ゆるんだ体) | そのまま。声をかけるなら低く短く | — |
| 遊びの誘い(プレイバウ・弾む動き) | 遊ぶ。犬どうしなら役割が入れ替わっている間は見守る | 興奮が上がりきる前に区切る。相手の犬が離れたがっているのに続けさせない |
| 警戒・前傾(じっと見る・重心が前) | 何を見ているかを確かめ、リードを短く持って距離を取る。こちらに注意を戻せたらほめる | リードを強く引く。見ている先へ引きずって近づける |
| 不安(そらす・白目・低い体・あくび・舐め) | 原因から離れる。抱っこか、飼い主さまの後ろに回れる形に。近づくのは犬の役目にする | 「大丈夫だよ」と対象に押し出す。抱いて差し出す。叱る |
| 固まる(触っている最中) | 手を止めて引く。少し待って、犬が自分から寄ってきたら再開 | 「嫌がっていないから」と続ける。固まるのは、振るのをやめた「なだめ」のサイン |
| 攻撃の前(硬い凝視・C の口・高いしっぽの震え・唸り) | それ以上近づかない。手を引く。原因(物・場所・相手)から離す。繰り返すなら専門家へ | 唸りを叱る。押さえつける。マズルをつかむ |
最後の行の「唸りを叱らない」は、とくに大事です。犬のサインは段階を追って出るもので、控えめな段階が先です。唸りは、噛む前の「まだ言葉で言っている」段階です。そこを叱って唸らなくなった犬は、次に困ったとき、唸りを飛ばして噛むことがあります。その犬の経験しだいで、控えめなサインを飛ばすことがあるのです。アメリカの獣医師の学会の2021年の考え方では、力や不快に頼る方法はしつけにも問題行動の対応にも使うべきではなく、罰を使った方法は攻撃的な行動や不安に関わる行動と関連が見られるとされています。サインを出したことを叱ると、サインが消えて、行動だけが残ります。
読めたサインの意味に迷うとき、同じサインが毎日続くとき、攻撃の前のサインが家族に向いたときは、写真や動画を撮って、ひとりで判断せずにドッグトレーナーへご相談ください。フローエンスはブリーダー直販で、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。「どの部位が、どの場面で、どうなっていたか」が言えると、相談はその場で具体的になります。ストレスサインが長く続く子は、しつけの前に体調を診てもらってください。ストレスのサイン(あくび、鼻や口を舐める、身震い、体の硬直、うろうろ・きょろきょろ、人目につかない場所にこもる)は、環境の変化や体調不良でも出ます。
よくある質問
犬のボディランゲージとは何ですか?
体の姿勢・表情・しっぽ・耳・毛・声の出し方で気持ちを伝えることです。「人は聞く生き物、犬は見る生き物」と言われるとおり、犬どうしでは声より体の姿勢とにおいが伝え合いの大きな部分を占めます。伝わるのは「今どんな気持ちか」で、「これから何をするか」までは必ずしも伝わらないので、目・耳・口・しっぽ・体・毛・声の7か所を組み合わせて、前後の流れと場所を合わせて読みます。
しっぽを振っていたのに噛まれました。なぜですか?
しっぽを振るのは「感情が高ぶっている」ということだけで、うれしいとは限らないからです。高く上げて速く小刻みに震わせる振り方は高ぶりで、硬い凝視や C の形の口と重なれば攻撃の前のサインです。低く振っていて、触ると振るのをやめて固まるのは、なだめのサインで「やめて」の意味です。しっぽだけで読まず、目と口と体の硬さを一緒に見てください。
お腹を見せて仰向けになるのは、なでてほしいのですか?
体がゆるんでくねくね動いていて、目がやわらかければ、そうです。ただし仰向けは、強い不安やストレスのなだめのサインでもあり、おしっこが少し出ることもあります。目をそらして固まったまま仰向けになっているなら、触らずに距離を取ってください。触って固まるかどうかが、いちばん分かりやすい見分け方です。
あくびや鼻を舐めるのは、眠いのですか?
犬は緊張したときにあくびをします。鼻や口をぺろりと舐めるのも同じで、この2つは「どっちつかずの行動」です。用心している・ストレスがある・状況が続けば攻撃に変わることもある、中間の状態です。抱っこ中、来客中、動物病院、なでている最中に出たら「今の状況が嫌」と読み、いったん手を止めるか距離を取ってください。
犬の前傾姿勢は、どういう意味ですか?
重心が前にかかるのは「近づきたい」の合図です。ただの興味のこともあり、足を1本前に出しているのは動き出す前触れです。しっぽを高く立てて細かく震わせる、毛が逆立つ、口を閉じて硬く見つめる、が重なれば攻撃の意図で、体を大きく見せようとしています。散歩中にこの姿勢で固まったら、まず何を見ているかを確かめ、リードを短く持って距離を取ってください。
上目遣いは、何を伝えていますか?
2019年の研究では、目の内側の眉を引き上げる筋肉がオオカミには無く犬にはあり、その表情が人の悲しい顔に似ているため、人の世話をしたい気持ちを引き出していると考えられています。おねだりや甘えのときによく出る、犬が人と暮らすうちに身につけた顔です。ただし、体が低く、目をそらしがちで、白目が見えるなら不安の目です。組み合わせで読んでください。
垂れ耳や、しっぽが短い犬はどう読めばいいですか?
部位の形ではなく「いつもとの違い」と「体の硬さ」で読みます。2008年の研究では、実物大の模型で短いしっぽは振っていても止まっていても他の犬の反応が変わらず、短いしっぽは情報が伝わりにくいことが示されています。垂れ耳の子は耳の先ではなく付け根の向きと頭の高さを、しっぽが背中に乗っている子は付け根の高さと体の硬さを見てください。いつもより耳が後ろ、いつもより体が硬い、いつもならしないあくび、が読める子です。
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まとめ
犬のボディランゲージは、目・耳・口・しっぽ・体(重心)・毛・声の7か所を組み合わせ、前後の流れとその子のふだんと比べて読み、1か所だけで決めません。やわらかい目・ゆるんだ口元・ゆっくり大きく揺れるしっぽ・くねくねした体が落ち着きで、硬い凝視・C の形の口・高く細かく震えるしっぽ・前に乗った硬い体が攻撃の前、目をそらす・白目・後ろに下がった耳・あくびと鼻を舐める・低い体としっぽ・固まるが不安となだめです。しっぽを振るのは感情が高ぶっているということだけで、毛が逆立つのも高ぶりの印にすぎず、仰向けと歯を見せる表情は体がゆるんでいるか硬いかで意味が逆になります。こわがっている犬を正しく読めた人は、犬と暮らしたことの無い人で3割、専門家で7割超と経験で分かれ、うれしい犬は誰でも読めます。攻撃は攻めと守りに分かれ、飼い主さまが噛まれる場面で見落とされやすいのは低くなって目をそらしている守りの側で、しっぽを巻き込んだ犬に手を伸ばさないことが予防です。犬はこちらの体も読んでいて、正面から目を合わせたままゆっくり近づく動きは脅しに見えるので、横を向いてしゃがみ、犬が自分から近づくのを待ちます。読んだサインには距離で返し、触っていて固まったら手を引き、唸りを叱りません。叱ればサインが消えて行動だけが残ります。




























