- 子犬販売ならブリーダー直販のフローエンス
- わんちゃんコラム
- 噛み
- しつけ・トレーニング
- 犬の甘噛みの意味とは|成犬の甘噛み・本気噛みとの見分け方
犬の甘噛みの意味とは|成犬の甘噛み・本気噛みとの見分け方
公開日:2026年8月7日(金) 更新日:2026年10月6日(火) 噛み
この記事の要点
- 甘噛みは、力を加減して軽く噛む行為で、真の攻撃行動とは別のものです。
- 子犬の噛みつきや口を当てる行動は、歯の生え替わりの行動と思われがちですが、たいていは社会的な遊びの形です。
- 伝えているのは「遊ぼう」「構って」「甘えたい」「眠い」「歯がむずむずする」「発散したい」のどれかで、順位や上下の話ではありません。
- 「愛情表現」も、関わりたい気持ちの表れと読むのが正確です。
- 成犬の甘噛みは、遊び噛みが残った・要求と注目・不快や痛みの合図、の3型に分かれ、急に始まったものは先に体を診てもらいます。
- 本気噛みとの見分けは、噛む前後の体の合図(ゆるんで弾む・噛んでは離す・手を引くと追ってくる/硬直・口を閉じた低い唸り・直視・空噛み・手を引くと落ち着く)と、傷の深さ(穴が開いたか、犬歯の半分より深いか)で行い、血がにじんだだけなら甘噛みの範囲です。
- 放っておかず、叱らず、歯が当たったら遊びと注目を止める・手で遊ばずおもちゃを口の高さに置く・噛む欲求と体力を先に満たす、の3つを。
- マズルをつかむ・叩く・叫んで逃げるは、甘噛みを本気噛みに変えます。
- 唸りを叱った、噛んだら人が引くを繰り返している、押さえつけたときに噛んだ、急に始まった、犬歯の半分より深い穴が開いた、なら家庭の手順で扱う段階ではなく、動物病院とドッグトレーナーへ。
「手を軽くはむはむと噛んでくる。これは愛情表現?」「成犬なのに甘噛みが続いている。意味があるの?」「甘噛みと本気噛みは、どこで見分ければいい?」。この記事に来られる方の検索語は「犬 甘噛み 意味」「犬 甘噛み 成犬」「甘噛みと本気噛みの違い」「甘噛みとは」で、知りたいのは「直し方」より先に、犬が噛むことで何を伝えているのかです。この記事は、そこから書きます。
先に結論を書きます。甘噛みは、力を加減して軽く噛む行為で、真の攻撃行動とは別のものです。甘噛みとは「人や物をじゃれるようにして軽く噛む行為」です。アメリカの動物病院グループ(VCA)は、子犬の噛みつきや口を当てる行動を「歯の生え替わりの行動と思われがちだが、たいていは社会的な遊びの形」としています。伝えているのは「遊ぼう」「構って」「甘えたい」「眠い」「歯がむずむずする」のどれかで、順位や上下の話ではありません。一方で、本気噛みは体が硬くなる・低く唸る・口を閉じて歯を見せる・噛む前に凝視する、という別の合図の先にあります。この記事では、甘噛みとは何か、場面別の「意味」、成犬の甘噛みが何を表しているか、本気噛みとの見分け方(体の合図と傷の深さ)、放っておいてよいかの答え、本気噛みに変わりかけているサインと相談の目安を順に書きます。噛む力の加減を教える手順は噛む理由と加減を教える手順の記事に、いつまで続くかは甘噛みはいつまでの記事に、怒りの段階は犬が怒る理由とサインの記事に分けているので、ここは「意味と見分け」に絞ります。
いま子犬999頭がご家族を募集中です
子犬を見る犬の甘噛みとは|攻撃ではなく「遊び」と「口で確かめる」行動
「甘噛みとは」で調べて来られる方へ。犬の甘噛みは「人や物をじゃれるようにして軽く噛む行為」で、子犬でよく見られ、真の攻撃行動とは異なります(ペット保険会社・アニコム損害保険の定義)。本気で噛むこととの違いは、犬は生命の維持に必要な食べ物や休む場所を取り上げられたり、恐怖や不安を感じる状況に連れて行かれたり、苦痛を与えられたりすると、それを避けるために本気で噛みつく攻撃行動をとることがあり、それに対して甘噛みは力を加減して軽く噛む行為を指す、という点です。つまり、甘噛みと本気噛みの違いは、まず「力を加減しているかどうか」と「何を避けようとしているか」です。
では、子犬はなぜ噛むのか。アメリカの犬の団体(アメリカンケネルクラブ)は、子犬は口で世界を探るので、手や足や物を口に当てることは「まったく正常」で、遊び噛みは発達の自然な一部だとしています。冒頭で紹介したアメリカの動物病院グループは、もう一歩踏み込んで、子犬が人をつつくように噛む・口を当てる・噛みつく行動は「歯の生え替わりの行動だと思われがちだが、たいていは社会的な遊びの形」としていて、歯の生え替わりのむずがゆさは、人を噛むよりも家の中の物をかじることに出やすいです。「歯がかゆいから手を噛む」という説明は半分で、手を噛むのは「遊びの相手として人を見ている」からです。子犬は兄弟犬と噛み合って遊ぶ中で、どのくらいの力なら相手が遊びを続けてくれるか(噛む力の加減)を覚え始めます。子犬は生後7〜8週になるまで新しい家に行くべきではないのはこのためです。日本の動物愛護管理法は、それより長い生後56日を過ぎるまで販売できないと定めています。
もう一つ、子犬の甘噛みが「痛い」理由を書いておきます。子犬の口には「28本の小さなかみそり」があります。乳歯は28本、永久歯は42本です。乳歯は細く鋭いので、力を加減していても皮膚に引っかかって血がにじむことがあります。血が出た=本気噛み、ではありません。見分けは、傷ではなく体の合図で行います(後の章)。乳歯は生後6か月ごろまでに永久歯に生え替わり、生後4〜6か月ごろに生え替わりが始まる時期は、歯がぐらついてむずがゆく、人の手や家具を噛むことがあります。
お迎え後のしつけ相談つきの子犬(999頭)
甘噛みの意味|犬は何を伝えているのか(場面別の表)
「犬の甘噛みの意味」「犬が手を甘噛みする理由」で調べて来られる方へ。甘噛みの「意味」は1つではなく、場面で分かれます。理由として挙げられるのは、噛みつき欲求(動くものを追って噛む習性・何でも口に入れて確かめる習性)、遊び、甘え、歯の生え替わり、ストレスの5つです。これに、注目は子犬にとってご褒美になること、疲れすぎた子犬は口が出やすいこと、速く動く手足は追いかけてつかむ本能の引き金になること、も加わります。場面ごとに表にします。この表は、ペット保険会社・アメリカの動物病院グループ・犬の団体の解説をもとにまとめました。
| 場面 | 犬が伝えていること | 手がかり |
|---|---|---|
| 遊んでいる最中、手や袖を噛む | 「遊ぼう」「もっと続けよう」。犬同士が体を噛み合って遊ぶ「遊び関連攻撃行動」が人に向いたもの | 体がゆるんで弾む。噛んでは離す。おもちゃを差し出すとそちらへ移る |
| 手を動かした瞬間・走ったときに噛む | 「動くものを捕まえたい」。獲物を追う習性の名残 | 手をひらひらさせる・足早に歩く・子どもが走ると出る |
| 大きな声を出したあと、余計に噛む | 「構ってもらえた」。噛んだら人が反応した、という学習 | 「痛い!」と騒ぐと繰り返す。静かに離れると減る |
| 膝の上や横で、手を軽くはむはむと噛む | 「甘えたい」「構って」。子犬が母犬に甘えるように、人の手を舐めたり噛んだりする | 力が弱い。舐めるのと噛むのが交互に出る。落ち着いている |
| 夕方以降・長く遊んだあとに噛みが荒くなる | 「眠い」「疲れた」。休みが足りないと機嫌が悪く衝動的になる | あくび・目がとろんとしている・急にスイッチが入ったように走り回る |
| 生後4〜6か月ごろ、手より家具や物をかじる | 「歯がむずむずする」。乳歯から永久歯への生え替わり | おもちゃに血がつく・抜けた乳歯が落ちている。人よりも物に向く |
| 留守番が長い日・散歩が少ない日に増える | 「発散したい」。噛んで遊ぶことでストレスやエネルギーを発散する | 噛む相手が人にも物にも広がる。遊びと散歩で減る |
| 触られている途中で、触っている手を口で押しのける | 「それは嫌」「そこは触らないで」。遊びではなく、なだめのサインの続き | 体が硬い・目をそらす・口を舐める・振っていたしっぽが止まる。噛む前に顔をそむける |
表の最後の行だけ、ほかと種類が違います。上の7行は「遊び・要求・体の都合」で、犬から人へ近づく方向の噛みです。最後の行は「離れてほしい」で、人から離れる方向の噛みです。なだめのサイン(自分や相手を落ち着かせようとする合図)には、目をそらす・耳や頭を下げる・口を舐める・体を低くする・触られると振っていたしっぽが止まって固まる、があり、それが続くと攻撃に変わることがあります。同じ「手を口で押す」でも、直前に犬が顔をそむけていたなら、それは甘噛みではなく「やめて」の合図で、そこで手を引くのが正しい対応です。合図の読み方は犬のボディランゲージの記事に一覧があります。
「甘噛みは愛情表現」は本当か
「愛情表現」と書いたページを多く見かけます。言える範囲は「甘え」までです。飼い主に甘えて構ってもらおうとして甘噛みをし、とくに子犬は母犬に甘えるように人の手を舐めたり噛んだりするのが実際で、「大好きだから噛む」というわけではありません。犬の側から見れば、口を当てることは「関わりたい」「近くにいたい」の表現で、その相手が大好きな飼い主さまなら、それを愛情表現と呼んでも間違いではない、というのが正確なところです。ただし、愛情表現だから許してよい、にはなりません。子犬のときに「かわいくて無邪気」に見えることは、成犬になったときにはそうではなくなります。理由は次の章です。
成犬の甘噛み|3つの型に分かれます
「犬 甘噛み 成犬 意味」「成犬 甘噛み 理由」で調べて来られる方へ。成犬の甘噛みは、子犬の甘噛みとは分けて考えます。子犬の甘噛みは、親や兄弟と噛み合って遊ぶ中で「仲間を傷つける噛み方をしてはいけない」と学ぶ行動なので力は強くなく、成犬になるにつれて自然に減っていきます。ただし早くから親兄弟と離れて生活し、誤った甘噛みの対処をされた場合には、成犬になっても甘噛みが残り、習慣化して問題行動につながる可能性があります。そして成犬は永久歯に生え替わり、噛む力も強くなるため、噛まれると大けがにつながる危険があります。英国で子犬を追跡した研究(2025年・Animals誌)でも、「人を口に当てる」を困りごとに挙げた飼い主の割合は、生後6か月の1.6%から18か月の0.3%へと月齢とともに減っていて、大半は自然に減る行動です。だから、成犬で残っている甘噛みには、「減らなかった理由」があります。3つに分けます。
| 型 | どう見えるか | 背景にあること | 先にやること |
|---|---|---|---|
| ①遊び噛みがそのまま残った | 遊びの最中、興奮すると手や袖に口が出る。体はゆるんでいて、噛んでは離す | 子犬のころに「人の手で遊ぶ」「噛んでも遊びが続く」を覚えた。口を当てる・軽く噛むことは、犬が遊びの中で行う自然な行動で、犬同士でも行う | おもちゃを介した遊びに置き換え、歯が当たったら遊びを終える。手順は噛む理由と加減の記事へ |
| ②要求・注目 | 膝に乗ってきて手を噛む、なでる手を止めると噛む、ごはんの前に足を噛む | 「噛むと構ってもらえる」「噛むと望みが通る」という学習。「甘え」と「遊び」がまざった形 | 噛んでいる最中は応えない。静かにしている・座っているときに構う。手順は同じ記事へ |
| ③不快・痛みの合図 | 触っている途中で手を口で押す、抱き上げると口が出る、以前は平気だった場所を触ると噛む | 「やめて」の合図。成犬の甘噛みの背景には、どこかに痛みがある・よかれと思ってしていることが犬には嫌なことだった、もあり得ます | まず動物病院で痛みを除く。触り方と場所を見直す(後の章) |
①と②は、犬から見れば「うまくいっている行動」です。噛むことに対して大きなリアクションがあると、飼い主から注目されたと学習してさらに頻繁に噛むようになります。成犬の場合は習慣化した行動を変える必要があるため、子犬よりしつけに時間がかかりますが、それでも、やることは子犬と同じです(時間だけが違います)。③は別で、しつけの話ではありません。動物の行動の専門家たちが2020年にまとめた研究では、行動の専門家に紹介された犬の症例を見直すと、控えめに見積もっても3分の1ほど、多いと8割近くに、何らかの痛みが関わっていました。以前はしなかった甘噛みが成犬になって急に出てきた、特定の場所を触ると出る、というときは、意味を考える前に、体を診てもらってください。触られること全般が苦手な子はリラックスポジションの記事を参考にしてください。
手や指を甘噛みするのはなぜですか
「犬が手を甘噛みする理由」「犬 指 甘噛み」で調べて来られる方へ。犬が噛む相手として手を選ぶのには、手の側の理由があります。1つ目、手はいちばんよく動くからです。速く動く手や足は、動くものを追いかけてつかむ子犬の本能の引き金になります。なでようとして伸びてくる手、引っ込める手、ひらひらさせる手は、犬から見ればどれも「動く獲物」です。2つ目、手は「良いことを持ってくる」からです。おやつも、なでるのも、おもちゃも手から来るので、手に口を当てれば何かが起きる、と犬は学びます。3つ目、手が口の高さにあるからです。小型犬を膝に乗せれば、手は口の真横にあります。つまり手の甘噛みは、「手が嫌い」でも「手に何かを伝えたい」でもなく、手が「動いて、良いことをくれて、口の高さにある」からです。だから直し方は、手を叱ることではなく、手の代わりになるもの(おもちゃ)を口の高さに持ってくることになります。うちで紹介しているトイプードル、チワワ、ミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、マルチーズ、シーズーのような小型犬は抱かれる時間が長いぶん、手が口の高さにある時間も長いので、抱いているときこそ、手ではなくおもちゃを持たせてください。
甘噛みと本気噛みの見分け方|体の合図と、傷の深さ
「甘噛みと本気噛みの違い」で調べて来られる方へ。見分けるものは2つあり、噛む前後の体の合図と、噛んだあとの傷の深さです。先に体の合図から書きます。犬同士の遊びと本気の見分け方です。遊びでは、前足を伸ばしてお尻を上げるプレイバウ(遊びに誘うおじぎ)、弾むような大げさな動き、口を大きく開けた表情、追う・追われるの役割を交代する、離れてもまた戻ってくる、が見られます。本気では体が硬直する、背中の毛が逆立つ、口を閉じて低く唸る、唇をめくる、耳を後ろに倒す、動きが速く無駄がない、負けた側がその場を離れようとする、が見られます。人に対する噛みも、読むところは同じです。攻撃する側のいちばん控えめなサインは目を大きく開いた直視で、次に唇の端を引いて歯を見せ、体は前に重心をかけて硬くなり、しっぽは高く上げて細かく震わせる、そして「空噛み(歯を当てない噛みつき)」は最後の警告です。表は、アメリカの犬の団体と動物病院グループの解説をもとにまとめました。
| 見るところ | 甘噛み(遊び・要求・甘え) | 本気噛み(恐怖・防御・痛み) |
|---|---|---|
| 体 | ゆるんで弾む。プレイバウ。体重は前後に揺れる | 硬直する。重心を前にかけて動かない、または縮こまって低くなる |
| 口 | 大きく開けて、噛んでは離す。舌が見える | 口を閉じて唇の端だけ引き、歯を見せる。空噛みが出る |
| 唸り | 遊びの唸りは大げさで、体がゆるんでいる | 低く続く唸り。口を閉じたまま |
| 目・耳 | 目はやわらかく、視線が動く。耳は自然 | 硬い直視、または白目が見える。耳を後ろに倒す |
| しっぽ | 大きくゆったり振る、または動きに合わせて揺れる | 高く上げて細かく震わせる、または巻き込む。触られると振るのが止まる |
| 噛む前 | 誘うように近づく、おもちゃを持ってくる、飛びつく | 顔をそむける・口を舐める・固まる・唸る・空噛み、の順に警告が出る |
| 噛んだあと | すぐ離して、また誘う。離れてもまた戻ってくる | 離れようとする、または噛んだまま離さない。噛んだあとも硬いまま |
| 相手を離すと | 追いかけてくる(遊びの続き) | 落ち着く(距離ができたので目的を達した) |
表の中で、いちばん確かな手がかりは「噛む前」と「相手を離すと」の行です。まれな例外を除いて、犬の噛みつきは「何もないところから」は起きません。ほとんどの犬は噛む前に、吠える・唸る・空噛みで不快を伝えようとします。攻撃の目的は相手との距離を作ることで、相手が引くと犬は安心します。手を引いたら追いかけてくるなら遊び、手を引いたら落ち着くなら「やめてほしかった」です。しっぽを振っていたから遊びだ、とは言えません。しっぽを振っているのは、気持ちが高ぶっているということだけで、うれしいとは限りません。
傷の深さで見る|噛みつきの重さの物差し
もう一つの見分けは、噛んだあとの傷です。イアン・ダンバー博士が作り、アメリカのドッグトレーナーの団体が公開している「噛みつきの重さのものさし」は、傷の状態だけで段階を分けます。
| 段階 | 傷の状態 | 意味 |
|---|---|---|
| レベル1 | 攻撃的なふるまいはあるが、歯は皮膚に触れていない(空噛み・威嚇) | 警告の段階。噛む前に伝えている |
| レベル2 | 歯は皮膚に触れたが穴は開いていない。歯が横に動いてできた浅いかすり傷やわずかな出血はあり得る | 力を加減している。レベル1と2で犬の噛みつき事故の99%をゆうに超え、この段階の犬は「危険というより、こわがっている・はしゃぎすぎている・制御が効いていない」犬で、見通しはとてもよい |
| レベル3 | 1回の噛みつきで1〜4か所の穴。深さは犬歯の長さの半分まで。手を引いた・犬を引いた・小型犬が飛びついて噛んで落ちた、で一方向に裂けることがある | 加減が不十分。飼い主の協力があれば見通しはまずまずからよい、ただし対処には時間と危険が伴う |
| レベル4 | 1回の噛みつきで穴が犬歯の半分より深い。噛んだまま力を込めた深いあざ、首を振って両方向に裂けた傷 | 噛む力の加減が無く、とても危険。家庭の手順で扱う段階ではなく、専門家の領分 |
| レベル5・6 | 複数回の噛みつきで少なくとも2回がレベル4、または命に関わる | 極めて危険 |
この物差しで見ると、「血がにじんだ」はレベル2で、甘噛みの範囲です。子犬の乳歯は鋭いので、加減していても皮膚は切れます。多くの犬は噛む強さをよく加減していて、跡を残さない噛みから、皮膚を破らずにあざになる噛み、穴が開く噛み、骨を砕く噛みまで幅があります。見るべきなのは「血が出たか」ではなく「穴が開いたか、深さはどれくらいか」で、犬歯の長さの半分より深い穴が開いたら、それは甘噛みでも遊びでもありません。傷の手当ては、労災病院のコラムにあるとおり、犬の口の中は細菌が多く噛み傷は化膿しやすいので、まずよく洗い、深い傷は家では十分に洗えないので早めに受診してください。
本気噛みの理由は「順位」ではありません
本気噛みの側の理由も書いておきます。犬が噛む理由は、恐怖(攻撃的な行動のほとんどはどこかで恐怖に根ざしていて、こわいものとの距離を作ろうとする)、驚き(寝ているところを起こされた。高齢で目や耳が衰えた犬にとくに多い)、守る(食べ物・おもちゃ・かじるものを取られる不安)、いら立ち(逃げられない状況、リードで止められて届かない→持っている人に向く「八つ当たり」)、痛み(いちばん寛容な犬でもけがをしているときは噛み得る)、遊び(口を当てる・軽く噛むは犬同士の遊びの自然な一部)です。この中に「飼い主を下に見ている」はありません。アメリカの獣医師の学会(米国獣医行動学会)は、支配やリーダーという考え方を、行動の説明や直し方の指針として使うべきではない、との見解を出しています。家族への攻撃を順位で説明するのはよくある思い違いで、多くは恐怖・不安・「次に何が起きるか分からない」迷いが理由です。噛む理由の一つ一つと、こわさ・痛み・物を守る噛みの見分けは噛む理由5つの記事に、怒りの段階は犬が怒る理由とサインの記事に書いています。
甘噛みは放っておいてよいか|答えと、最低限やること3つ
意味が分かると、次に出てくるのが「遊びなら、放っておいてよいのでは」という問いです。答えは、子犬でも成犬でも「放っておかない」です。ただし「叱る」でもありません。子犬のうちに人に歯を当てて遊ぶことを学習してしまうと、甘噛みという行動が強化されて問題行動につながる可能性があります。「子犬のうちに手に歯が当たるだけでもよくないことだとしつけることが大切」です。すべての犬はいつか噛むことがあり得るので、噛む力の加減を学ぶことは人の安全にとって欠かせません。子犬のときにかわいく無邪気に見えることも、成犬ではそうではなくなります。いつまで続くのか、許すと何が起きるのかは甘噛みはいつまでの記事に、教える手順の全体は噛む力の加減を教える記事に書いてあるので、ここでは「意味」から導かれる最低限の3つだけ書きます。
- 歯が当たったら、遊びと注目を止める……甘噛みの意味は「遊ぼう」「構って」なので、歯が皮膚に触れた瞬間に遊びが終わることが、いちばん伝わる答えです。歯が皮膚に当たったらすぐに遊びと注目を止めること、家族全員が同じやり方にそろえること、抱き上げて部屋から出すと「遊びの続き」と受け取って運ばれる途中も噛み続けることがあるので、人のほうが離れること、が大切です。目安は、手足を隠して部屋から出て10〜30秒
- 手で遊ばず、口の高さにおもちゃを置く……手の甘噛みの意味は「手が動いて、良いことをくれて、口の高さにある」なので、手の代わりをそこに置きます。人の手や足を使って遊ぶことをやめ、ロープなど人の手と犬の口の距離が離れるおもちゃで遊ぶのがおすすめです。各部屋におもちゃを用意し、口が出やすい場面の前に渡しておきます
- 噛む欲求と体力を、先に満たす……ストレスや退屈の甘噛みは、止めるより満たすほうが早く減ります。毎日十分に遊ぶ時間を作らないうちは、遊び噛みが止まるとは期待できません。引っぱりっこのおもちゃで遊ぶ、散歩でエネルギーを発散する、一人で過ごすときはかじるおもちゃやガムを与える、を続けてください。眠そうなときは遊ばせずに寝かせます
逆に、意味を取り違えると出てくる対応が、マズルをつかむ・叩く・仰向けに押さえる・「きゃー」と叫んで逃げる、です。噛まれたときにマズルを強く握ったり叩いたりすると、恐怖心や痛みで攻撃性が増し、遊びから始まった甘噛みが本気噛みに発展してしまう危険があるため絶対にやらないでください。甲高い声で騒いだり走って逃げたりすると、構ってもらえたと勘違いしたり獲物を連想して興奮したりしてさらに噛むようになります。体を使った方法は勧められません。痛みは攻撃を引き起こし、子犬を不安やこわさで身を守ろうとする状態にします。アメリカの獣医師の学会の2021年の見解では、力や不快に頼る方法はしつけに使うべきでなく、罰を使った方法は攻撃的な行動や不安に関わる行動と関連が見られます。叱り方の考え方は犬の叱り方の記事に、子犬の項目別の見直しは子犬のしつけがうまくいかないときの記事に分けています。
本気噛みに変わりかけているサインと、相談の目安
「犬 噛むようになった」「本気噛みする犬」で調べて来られる方へ。甘噛みが本気噛みに変わるのは、犬の性格が変わるからではなく、「噛んだら嫌なことが止まった」という経験が積まれたときです。犬が一度噛んだら、少なくともその場面では、噛むことを行動の選択肢として使ったことになり、次も噛みやすくなります。攻撃の場面が1回あるたびに犬はそれを覚え、多くの場合は攻撃が強まります。甘噛みの段階で気をつけたいサインを並べます。
- 噛む前に、顔をそむける・口を舐める・固まる・唸る、が出るようになった……なだめの合図から警告へ進んでいます。サインは控えめなものから強いものへ段階を追って出ますが、その犬の経験しだいで、控えめな段階を飛ばしたり、とても速く進んだりします
- 唸ったときに叱った……唸りを罰してはいけません。罰で音は止められても原因の気持ちは消えず、警告なしに噛む犬になります。警告なしに噛む犬は、はっきり不快を伝える犬よりはるかに危険です。唸られたら手を引く、が正しい対応です
- 噛んだら人が引いた、が繰り返されている……攻撃の目的は距離を作ることで、相手が引くと安心するので繰り返されます。「なでるのをやめてほしい」の噛みに毎回応じていると、その噛みは残ります。応じるなら、噛む前のサイン(顔をそむける・固まる)の段階で手を引きます
- 押さえつけられた・追い詰められたときに噛んだ……追い詰められた・押さえられて逃げられない犬は、戦うほうを選びやすくなります。抱き上げ・爪切り・ケージに入れるときに口が出るなら、その場面の押さえ方を見直します
- 急に始まった・特定の場所を触ると出る……痛みを先に疑います。行動の専門家に紹介された犬の症例では、控えめに見積もって3分の1ほどに痛みが関わっていました(2020年の総説)
- 子どもにだけ噛む……子どもは噛みを止める対応のタイミングが合わず、子どもの反応が子犬には「もっと追いかけて遊ぼう」の誘いに見えるので、いちばん噛まれやすいです。幼い子どもと犬を目の届かないところに置かないこと、犬が決して噛まないと思い込まないことが大切です。犬が子どもを追いかけるときの記事へ
相談の目安です。アメリカの犬の団体の獣医師も、生後6か月までに噛む力の加減がつかなければ、経験のあるドッグトレーナーか行動の専門家に相談するよう勧めています。攻撃には型が多いので、診断と見通しと治療の計画は、動物の行動を専門に診る獣医師の助けを借りるのがいちばんです。上のレベル3以上の傷が1回でもあった、唸る・空噛みが出るようになった、噛んだあとも体が硬いまま、噛む場面が増えている、というときは、家庭の手順で扱う段階ではありません。フローエンスはブリーダー直販で、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。甘噛みの範囲で「意味は分かったが減らない」「手で遊ばないようにしたのに続く」というときは、専門トレーナーのトレーナーダイヤルにご相談ください。「いつ・どの場面で・噛む前に何をしていたか・傷はどうだったか」が分かっていると、相談はその場で具体的になります。相談のタイミングに迷ったら、ドッグトレーナーに相談するタイミングの記事も参考にしてください。
よくある質問
犬の甘噛みとは何ですか?本気噛みとどう違いますか?
甘噛みは「人や物をじゃれるようにして軽く噛む行為」で、子犬でよく見られ、本当の攻撃とは違うものです(ペット保険会社の定義)。本気で噛む攻撃行動は、食べ物や休む場所を取り上げられる・恐怖や不安を感じる状況に連れて行かれる・苦痛を与えられる、といったことを避けるために出るもので、甘噛みは力を加減して軽く噛む行為です。子犬の噛みつきや口を当てる行動は、「歯の生え替わりの行動と思われがちだが、たいていは社会的な遊びの形」です(アメリカの動物病院グループの解説)。違いは、力を加減しているか、そして何かを避けようとしているか、の2つで、見分けは噛む前後の体の合図(ゆるんで弾むか・硬直しているか)と傷の深さで行います。
犬が甘噛みをするのは、どんな意味がありますか?
場面で意味が分かれます。理由として挙げられるのは、噛みつき欲求(動くものを追う・何でも口に入れて確かめる習性)、遊び、甘え、歯の生え替わり(生後4〜6か月ごろ)、ストレスの5つです。ほかに、注目は子犬にとってご褒美になる、疲れすぎた子犬は口が出やすい、速く動く手足は追いかけてつかむ本能の引き金になる、も理由になります。遊びの最中に手や袖を噛むなら「遊ぼう」、大きな声を出したあとに余計に噛むなら「構ってもらえた」、膝の上で軽くはむはむと噛むなら「甘えたい」、夕方に噛みが荒くなるなら「眠い」、生後4〜6か月で物をかじるなら「歯がむずむずする」です。一つだけ種類が違うのが、触っている手を口で押しのける噛みで、直前に顔をそむける・口を舐める・固まる、が出ていたなら「やめて」の合図です。
犬の甘噛みは愛情表現ですか?
「甘え」までが、言える範囲です。飼い主に甘えて構ってもらおうとして甘噛みをし、とくに子犬は母犬に甘えるように人の手を舐めたり噛んだりするのが実際で、「大好きだから噛む」というわけではありません。口を当てることは「関わりたい」「近くにいたい」の表現なので、その相手が飼い主さまなら愛情表現と呼んでも間違いではありません。ただし、愛情表現だから許してよい、にはなりません。子犬のときにかわいく無邪気に見えることは、成犬ではそうではなくなります。子犬のうちに人に歯を当てて遊ぶことを学習すると、甘噛みが強化されて問題行動につながる可能性があります。
成犬になっても甘噛みをするのはなぜですか?
子犬の甘噛みは成犬になるにつれて自然に減っていきますが、早くから親兄弟と離れて生活し、誤った甘噛みの対処をされた場合には成犬になっても残り、習慣化して問題行動につながる可能性があります。成犬の甘噛みは3つの型に分かれます。①遊び噛みがそのまま残った(体はゆるんでいて噛んでは離す)、②要求・注目(膝に乗って手を噛む・なでる手を止めると噛む=噛むと望みが通るという学習)、③不快・痛みの合図(触っている手を口で押す・抱き上げると口が出る・以前は平気だった場所を触ると噛む)です。①②は子犬と同じ手順で直せますが時間がかかり、③はしつけの話ではなく、まず動物病院で痛みを除きます。動物の行動の専門家たちが2020年にまとめた研究では、行動の専門家に紹介された犬の症例の3分の1ほど、多いと8割近くに痛みが関わっていました。
犬が手や指ばかり甘噛みするのはなぜですか?
手の側に理由があります。1つ目、手はいちばんよく動くからです。速く動く手や足は、動くものを追いかけてつかむ子犬の本能の引き金になります。2つ目、手は良いことを持ってくるからで、おやつもなでるのもおもちゃも手から来るので、手に口を当てれば何かが起きると学びます。3つ目、手が口の高さにあるからで、小型犬を膝に乗せれば手は口の真横です。だから直し方は、手を叱ることではなく、手の代わりになるおもちゃを口の高さに持ってくることです。人の手や足を使って遊ぶことをやめ、ロープなど人の手と犬の口の距離が離れるおもちゃで遊ぶのがおすすめです。
甘噛みと本気噛みは、どこで見分ければいいですか?
噛む前後の体の合図と、傷の深さです。遊び・要求の噛みは、体がゆるんで弾む、口を大きく開けて噛んでは離す、唸っても大げさで体がゆるんでいる、噛んだあとすぐ離してまた誘う、手を引くと追いかけてくる、が特徴です。本気噛みは、体が硬直する、口を閉じて唇の端だけ引いて歯を見せる、低く続く唸り、硬い直視か白目、しっぽを高く上げて細かく震わせるか巻き込む、噛む前に顔をそむける・口を舐める・固まる・唸る・空噛みの順に警告が出る、噛んだあとも硬いまま、手を引くと落ち着く、が特徴です。傷は、ダンバー博士のものさしで、歯が皮膚に触れても穴が開いていないレベル2までが噛みつき事故の99%をゆうに超え、この段階の犬は危険というよりこわがっている・はしゃぎすぎている犬です。犬歯の長さの半分より深い穴が開いたら、甘噛みでも遊びでもありません。
甘噛みは放っておいても自然に直りますか?
大半は成長とともに減りますが、放っておかないでください。英国の追跡研究では「人を口に当てる」を困りごとに挙げた飼い主の割合は生後6か月の1.6%から18か月の0.3%へ減っていますが、子犬のうちに人に歯を当てて遊ぶことを学習してしまうと甘噛みが強化されて問題行動につながる可能性があります。「子犬のうちに手に歯が当たるだけでもよくないことだとしつけることが大切」です。最低限やることは3つで、歯が当たったら遊びと注目を止めて人が離れる(10〜30秒)、手で遊ばず口の高さにおもちゃを置く、引っぱりっこや散歩で噛む欲求と体力を先に満たす、です。マズルを握る・叩く・「きゃー」と叫んで逃げる、は逆効果です。恐怖心や痛みで攻撃性が増し、遊びから始まった甘噛みが本気噛みに発展する危険があるため絶対にやらないでください。教える手順の全体は、噛む力の加減を教える記事に分けています。
あわせて読みたい記事
まとめ
甘噛みは、力を加減して軽く噛む行為で、真の攻撃行動とは別のものです。甘噛みとは「人や物をじゃれるようにして軽く噛む行為」で、子犬の噛みつきや口を当てる行動は「歯の生え替わりの行動と思われがちだが、たいていは社会的な遊びの形」です。意味は場面で分かれ、遊びの最中なら「遊ぼう」、騒いだあとに増えるなら「構ってもらえた」、膝の上で軽く噛むなら「甘えたい」、夕方に荒くなるなら「眠い」、生後4〜6か月で物をかじるなら「歯がむずむずする」、留守番が長い日に増えるなら「発散したい」で、触っている手を口で押しのける噛みだけは「やめて」の合図です。「愛情表現」は「甘え」が土台で、関わりたい気持ちの表れと読むのが正確です。成犬の甘噛みは、遊び噛みが残った・要求と注目・不快や痛みの合図、の3型に分かれ、急に始まった・特定の場所を触ると出るなら先に体を診てもらいます。手を噛むのは、手が動いて・良いことをくれて・口の高さにあるからで、直すのは手ではなく、口の高さにおもちゃを置くことです。本気噛みとの見分けは、体の合図(ゆるんで弾む・噛んでは離す・手を引くと追ってくる/硬直・口を閉じた低い唸り・直視・空噛み・手を引くと落ち着く)と傷の深さ(穴が開いたか、犬歯の半分より深いか)で行い、血がにじんだだけならレベル2=甘噛みの範囲、犬歯の半分より深い穴は甘噛みでも遊びでもありません。本気噛みの理由は恐怖・驚き・守る・いら立ち・痛み・遊びで、順位ではありません。放っておかず、叱らず、歯が当たったら遊びと注目を止める・手で遊ばずおもちゃを口の高さに置く・噛む欲求と体力を先に満たす、の3つを。マズルをつかむ・叩く・叫んで逃げるは、甘噛みを本気噛みに変えます。噛む前に顔をそむける・固まる・唸るが出るようになった、唸りを叱った、噛んだら人が引くを繰り返している、押さえつけたときに噛んだ、急に始まった、子どもにだけ噛む、犬歯の半分より深い穴が開いた、なら家庭の手順で扱う段階ではなく、動物病院とドッグトレーナーへ相談してください。
「吠えにくい子」に育つかは、社会化期がカギ!
ブリーダーの元で親兄弟と一緒に過ごし、心の土台(社会性)がしっかり育っている子犬は、無駄吠えしにくい穏やかな性格に育ちやすいと言われています。
穏やかで社会性の身についた子犬を探す



























