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犬が歯磨きを嫌がる|先に痛みを除く・慣らし直し7段階・噛むとき
公開日:2024年9月6日(金) 更新日:2026年10月6日(火) 犬の育て方
この記事の要点
犬が歯磨きを嫌がる理由は「口を触られること自体が苦手」「口の中が痛い」「道具が合っていない」「急ぎすぎ」の4つで、急に嫌がる・片側で噛む・触ると怒るなら、慣らす前に動物病院で口の中を診てもらいます。痛みが無ければ、口の周りを触る段階まで戻って、1回数秒・毎回おやつ・嫌がる前にやめる、で7段階を上がり直します。おやつを食べなくなったらその回は終わり。唸る・噛むなら続けず、痛みを疑って受診します。押さえつける・叱る・人用の歯磨き粉・長くやる・家で歯石を取る、は逆効果です。歯石は家では取れず、処置には全身麻酔が要ります。無麻酔の歯石取りは見た目だけで、歯周病の治療にはなりません。
歯ブラシを見せただけで顔をそむける。口に手を近づけると後ずさりする。押さえようとすると暴れて、ひどいときは唸る、噛む。「歯磨きを嫌がる」には、犬の側にちゃんと理由があって、大きく分けると「口を触られること自体がまだ苦手」「口の中が痛い」「道具が合っていない」「やり方が急ぎすぎ」の4つです。どれに当たるかで、やることが変わります。
先に結論を書きます。「急に嫌がるようになった」「片側でしか噛まない」「触ると怒る」なら、慣らす前に動物病院で口の中を診てもらってください。痛みが無いと分かったら、口の周りを触る段階まで戻って、1回数秒・毎回おやつ・嫌がる前にやめる、で7段階を上がり直します。押さえつける・叱る・長くやる、は全部逆効果です。この記事では、嫌がる理由の見分け、先に痛みを除く理由、慣らし直しの7段階と「戻るサイン」、噛む・暴れるときの対応、道具の変え方、歯ブラシが無理な間の補助、やってはいけないこと、動物病院での歯石除去、相談の目安を、獣医師の資料とVCA動物病院・アメリカンケネルクラブ(AKC)の解説にそって書きます。「歯磨きをしたことがない」から始める方の順番、42本の磨き方、頻度、道具の一覧は犬の歯磨きをしたことがない人の記事に、触られること全般の練習はリラックスポジションの記事に分けているので、ここは「嫌がる犬」に絞ります。
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子犬を見る犬が歯磨きを嫌がる理由|「触られる」「痛い」「道具」「急ぎすぎ」の4つ
「犬 歯磨き 嫌がる」で調べて来られる方へ。嫌がり方を見ると、理由の見当がつきます。アニコム損害保険の資料には、多くの犬は口元に触れられることを嫌がったり怖がったりするので、いきなり歯ブラシで磨くと「歯磨き=嫌なこと」と覚えてしまう恐れがある、とあります。歯を磨かれることは犬にとって不自然なことです。犬は、歯をきれいにしてもらっていることを理解できません。理解できないことを口の中でされれば、嫌がるのが普通です。そのうえで、4つに分けます。
| 理由 | 嫌がり方の特徴 | 先にやること |
|---|---|---|
| ①口を触られること自体がまだ苦手 | 歯ブラシを出す前から、口元に手を近づけただけで顔をそむける・後ずさる。マズルやあごを触られるのも好まない | 歯磨きの練習ではなく「触られる練習」から。口の周りに手が来ると良いことが起きる、を作り直す(後の章の段階1〜2) |
| ②口の中が痛い・違和感がある | 以前はできていたのに急に嫌がる。片側でしか噛まない。口を触ると怒る。口臭が強い。歯茎が赤い。おもちゃに血が付く | 慣らす前に動物病院で口の中を診てもらう(次の章)。痛みが残ったまま練習しても、歯ブラシ=痛いものになるだけ |
| ③道具が合っていない | 指やガーゼは受け入れるのに、歯ブラシになると嫌がる。歯磨きペーストを舐めない。歯ブラシを噛む | ヘッドの小さい歯ブラシか指サック型へ、ペーストの味を変える、ペースト無しで水だけ(道具の章) |
| ④やり方が急ぎすぎ・長すぎ | 最初の数秒はできるのに、途中から身をよじる、頭を振る、おやつを食べなくなる。終わったあと逃げる | 1回の時間を数秒に戻し、できたところで終える。嫌がる「前」にやめる(段階の章の「戻るサイン」) |
このうち②だけは、家庭の練習では解決しません。だから順番として、②を先に除きます。①③④は、どれも「怖くない」「楽しい」を作り直すことで直ります。無理に歯磨きを行って関係性をこじらせては元も子もありません。どうしても嫌がるときはプロに任せることも考えてください。嫌がる犬に対して、飼い主さまが頑張れば頑張るほど嫌いになる、という構造をまず知っておいてください。
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先に痛みを除きます|急に嫌がる・片側で噛む・触ると怒るなら受診が先
「犬 歯磨き 嫌がる 急に」で調べて来られる方へ。はっきり書きます。今までできていた歯磨きを急に嫌がるようになったら、しつけの問題ではなく、口の中に痛みや違和感が出た可能性を先に疑ってください。歯ブラシを嫌がるのは歯肉炎や歯周炎でブラシが当たると痛み・違和感があるからかもしれません。成犬の場合は歯ブラシの練習を始める前に動物病院で口の中のチェックをするとよいでしょう。3歳を超えた犬の80%以上に歯の病気があり、はっきりした症状を見せる犬は少なく、隠れていて痛いことが多いこの状態を見つけるのは家族と獣医師の役目です。
痛みの元になるものを、年齢の順に並べます。
| 痛みの元 | 多い時期 | 飼い主さまが気づけるサイン | どうするか |
|---|---|---|---|
| 乳歯から永久歯への生え変わり | 生後3〜6か月ごろ | 何でも噛みたがる。歯茎が赤い。抜けた乳歯が落ちている。この時期の生え変わりは「痛みを伴う」とされています | この時期は磨くより「口を触られる練習」を優先し、磨くなら生えそろった歯だけを短く。噛みたい子には曲がる硬さのおもちゃを |
| 乳歯が抜けずに残る(乳歯遺残) | 生後6〜7か月を過ぎても | 犬歯が2本並んでいる。残りやすいのは上顎の犬歯で、小型犬種と短頭種に多いとされています | 放っておくと歯並びがずれ、隙間に歯垢がたまります。残った乳歯は早めに抜くのがよいとされています。次の健診で見てもらいましょう |
| 歯肉炎・歯周病 | 1歳から起こり、年齢とともに増える | 口臭が強い、歯茎が赤い・腫れている、おもちゃに血が付く、よだれが増えた、硬いものを避ける、片側でしか噛まない、食べるときに声を出す | 犬は数日で歯垢が歯石になり、歯石になると家の歯磨きでは取れません。診てもらい、歯石があれば処置の相談を(後の章) |
| 歯が欠けた・折れた | 年齢を問わない | 急に片側で噛む。口を触られるのを嫌がる。歯の骨折の多くは氷・骨・硬いナイロンのおもちゃ・鹿角・ひづめのような硬いものを噛んで起きます | 歯の中の神経が出ていると、抜歯か歯の神経の治療が要る。放置すると感染が入る。硬いものを与えるのをやめて受診 |
| 口の中のできもの・その他の病気 | 中高齢で増える | 口臭が急に強くなった、片側から出血、顔が腫れる、前足で口を気にする、頭を床にこすりつける | 口臭は歯周病以外に腎臓・肝臓の病気や口の中の腫瘍でも強くなります。早めに診察しましょう |
うちで紹介しているトイプードル、チワワ、ミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、マルチーズ、シーズーのような小型犬は、この表の上から2行目と3行目に当たりやすい犬種です。小型犬種と短頭種は顎が小さく歯が混み合っているため歯周病になりやすい、とされています。「嫌がるから磨けない」と「磨けないから痛くなる」が、小型犬ではつながりやすいということです。受診で「口の中は問題ない」と分かれば、安心して次の章の慣らし直しに進めます。問題があれば、治療が終わってから慣らし直しです。順番を逆にしないでください。
慣らし直しの7段階|1回数秒・毎回おやつ・嫌がる前にやめる
「犬 歯磨き 嫌がる 対策」「犬 歯磨き できない」で調べて来られる方へ。やることは、「脱感作と拮抗条件づけ」そのものです。反応が最小になるほど弱い刺激から始めて段階的に強め、その刺激をおいしいおやつのような良いものと対にする。歯磨きに当てはめると、「口の周りを触る」がいちばん弱い刺激で、「歯ブラシで奥歯を磨く」がいちばん強い刺激です。すでに嫌がっている犬は、歯ブラシから始めてはいけません。いちばん弱い段階まで戻ります。練習は短く楽しく、1回の回数を限り、犬が喜んで、しかし落ち着いておやつを食べていることを確かめながら進めます。歯磨きは犬にとって不自然なことなので、段階ごとにほめておやつを与えてよく、最初の目標は技術を教えることで、食べ物を外すのはあとでよいとされています。
| 段階 | やること | 次へ進む目安 |
|---|---|---|
| 1 口の周りを触る | なでるついでに、マズルの横・口の端・あごの下に手を当てて1秒、離しておやつ。1日に数回、1回は数秒 | 手が口元に来ると、犬のほうからおやつを探す |
| 2 唇をめくる | 上唇の端を指で1〜2秒持ち上げて歯を見る。引っぱらない。めくったらおやつ。片側ずつ | めくっても顔をそむけない・おやつを食べ続ける |
| 3 指で歯に触る | 犬歯の表面に指先を当てて1秒。次に指にガーゼか歯磨きシートを巻き、前歯から奥歯へ歯と歯茎の表面を軽くなでる。最初の数回は数本の歯だけにします。外側だけ | 奥歯まで無理なくなでさせてくれる |
| 4 ペーストの味を覚える | 犬用の歯磨きペーストを指から舐めさせる。舐めなければ別の味へ(鶏・牛・モルトなど)。味が良い製品を使うと犬は歯磨き全体を楽しめます | ペーストを見せると寄ってくる |
| 5 歯ブラシを当てるだけ | ペーストを付けた歯ブラシを犬歯の外側に当てて、すぐ離しておやつ。磨かない。「歯ブラシが安全であるものだと覚えてもらう」段階 | 歯ブラシを見ても逃げない。当てている間おやつを食べ続ける |
| 6 1本だけ磨く | 唇をめくり、上顎の一番大きい奥歯の外側だけを、毛先を小刻みに数回動かして終わり。鉛筆持ちで、力は「桃の皮を傷つけない程度」 | 数回動かしても身をよじらない |
| 7 片側→全部 | 今日は右の奥歯と前歯、明日は左、と分けて回す。全部の歯の外側ができたら、最後に内側。目安は片側30秒ほどです | 毎日の流れの中に置けている。歯ブラシを出すと犬が来る |
段階を上げるのは日単位です。2〜3回続けてうまくいったら次回ほんの少しだけ強めます。1日で2段階上げないでください。逆に、段階を下げるのはその場でです。かかる期間は犬によって違い、数時間から数か月まで幅があります。嫌がった経験が長いほど、戻る段階は下になり、期間は長くなります。「何日で歯ブラシまで行くか」ではなく、「今日はどの段階を、嫌がらずに終えられたか」で見てください。
「戻るサイン」を見逃さない|おやつを食べなくなったら、その回は終わり
嫌がる犬の慣らし直しで、いちばん大事なのは「上げ方」ではなく「止め方」です。進めすぎのサインには、おやつをすぐ食べなくなる・合図で落ち着けなくなる、があり、怖がっている最中に続けると次回の反応がかえって大きくなります(感作)。犬が居心地の悪さを見せているサインには、次のようなものがあります。
- 身をよじる、もがく
- 体を縮める、白目が見える
- クンクン鳴く
- 手を口に入れる、甘噛みする、噛もうとする
- 体を離す、顔をそむける、その場を離れる
- おやつを乱暴に、または興奮して取る
- おやつを食べなくなる
- 歯ブラシやガーゼを見て、離れる・隠れる
このうち1つでも出たら、その段階はまだ強すぎます。小さな身じろぎなら手を動かさずに3〜5秒待ち、止まったらゆるめます。3〜5秒で落ち着かずに動きが強まるなら、その回を終えて、次回はもっと弱い扱いからやり直します。「嫌がったから終わる」ではなく「嫌がる前に終わる」が理想で、そのために1回を数秒にしています。犬が「まだやりたい」という顔をしているうちに終えると、次回は自分から来ます。表情や体の読み方は犬のボディランゲージの記事に一覧があります。
噛む・唸る・暴れるとき|押さえて続けない。その日はやめて、痛みを疑う
「犬 歯磨き 嫌がる 噛む」「犬 歯磨き 怒る」「犬 歯磨き 暴れる」で調べて来られる方へ。触ったときに犬が食べるのをやめる、または唸る・歯をむくなら続けず専門家に相談してください。隠れる・キャンと鳴く・唸る・噛みつくは強い苦痛のサインで、強い苦痛の中で練習を続けると触られることへの恐怖が一生残る危険があります。唸っている最中に「ここまでやってしまおう」と続けるのが、いちばん悪い一手です。その回はそこで終わり、次回は段階1に戻ります。そして唸る・噛む犬は、②の「痛い」の可能性を必ず疑って、慣らし直しの前に受診してください。
歯ブラシを噛んでしまう子は、少し違います。歯ブラシをおもちゃだと思って噛む場合は、段階5に戻って「当てて、すぐ離す」を繰り返し、ブラシを口の中で長く動かさないようにします。最初は歯の外側だけにとどめると、噛まれる事故も減ります。歯ブラシを噛み砕くほど強く噛む子は、指サック型は使わないでください(指を噛まれます)。柄の長い小さなヘッドの歯ブラシで、外側だけを短く磨きます。噛む理由そのものの見分け方は犬が噛む理由の記事に、怒るときの段階は犬が怒る理由とサインの記事に分けています。
道具を変えると嫌がらなくなることがあります|歯ブラシの大きさ・ペーストの味
「犬 歯ブラシ 噛む」「犬歯ブラシ嫌がる」で調べて来られる方へ。指やガーゼは受け入れるのに歯ブラシになると嫌がる子は、③の「道具が合っていない」ことが多く、変えるだけで通ることがあります。歯ブラシは犬の大きさと飼い主の手の器用さで選びます。始めたばかりのときは指に付ける指サック型のほうが楽だという飼い主が多く、どの歯ブラシでも歯ブラシの先が歯茎に当たって刺激を起こしやすいので優しくゆっくり行います。道具の一覧そのものは歯磨きをしたことがない人の記事の表にまとめてあるので、ここは「嫌がり方に対して何を変えるか」だけ書きます。
| 嫌がり方 | 変えるもの | 理由 |
|---|---|---|
| 歯ブラシを見ると逃げる | 指サック型か、指に巻いたガーゼ・歯磨きシートへ戻す | 歯磨きシートは歯ブラシの前段階として使いやすく、家族の手で直接触るので歯ブラシより安心感が高いことがあります |
| 歯ブラシが口に入ると頭を振る | ヘッドの小さい犬用か小児用の歯ブラシ、または綿棒へ | 綿棒は歯ブラシより小さいので受け入れやすいです。小型犬の口に大人用のヘッドは大きすぎます |
| ペーストを嫌がる・舐めない | 味を変える。無ければペースト無しで水だけ | 犬用ペーストには鶏・牛・モルト・ミントなどの味があり、味が良い製品ほど犬は歯磨きを楽しめます。人用は使わない(次の章) |
| 指サックを噛む | 柄の付いた歯ブラシへ。外側だけ | 指を噛まれる事故を避けます。噛まれないよう歯の外側にとどめるのもよいでしょう |
| 抱かれるのを嫌がって暴れる | 抱かずに、犬が座った横にしゃがんで横から。小型犬なら膝の上で頭を自分と反対に向ける | 上からのぞき込まず、犬の視界に顔が入りにくい姿勢です |
| 歯ブラシを出すと逃げる | 歯ブラシを部屋に出しっぱなしにして、そばでおやつ。歯ブラシ=おやつの合図にする | 道具そのものへの慣らし。段階5の前に置く |
歯ブラシは3か月ごとに交換し、多頭なら1頭ずつ別の歯ブラシにするとよいとされています。道具を変えても嫌がるときは、歯ブラシそのものが古くなっていないかも見てください。
歯ブラシが無理な間の代わり|ガム・おもちゃ・シート・液体は「補助」です
慣らし直しには時間がかかります。その間、何もしないより補助を使うほうがよい、というのが獣医師の資料の立場です。ただし、役割ははっきりしています。歯磨きシートや歯磨きガムは歯の表面の汚れは取れても歯の間や歯と歯茎の間の食べかすは取れず、細かい汚れを取れるのは歯ブラシだけです。シートやガムは歯ブラシの補助で、少しずつ歯ブラシに移行していきます。犬用のかじるおもちゃやおやつは歯垢と歯石の蓄積を減らしたり遅らせたりするのに役立つことがあり、歯石を減らすよう作られた食事や飲み水に入れるものもありますが、歯石を防ぐいちばん良い方法は犬用ペーストでの毎日の歯磨きです。
- 歯磨きシート・ガーゼ……歯ブラシが無理な間の本命。指に巻いて外側の歯をなでる。これ自体が慣らし直しの段階3なので、続けているだけで前に進む
- 犬用の歯磨きガム……おやつとして与えられ、歯垢が付くのを抑えるものもあります。丸飲みしない大きさを選び、かじっている間は見ている。片側でしか噛まない子は、反対側は磨けていない
- 歯磨きおもちゃ……噛んで遊びながら表面の歯垢を落とす。おもちゃが触れない部分の歯垢は残るので、細菌が増えないようこまめに洗う
- 飲み水に入れるもの・スプレー……歯垢を減らす製品の一つに挙がります。口を触られるのが苦手な子でも使えますが、歯ブラシの代わりにはなりません
- 選ぶ目安……米国獣医口腔保健協議会(VOHC)が、歯垢・歯石の蓄積を減らすと示された製品にだけ認定の印を付けています。商品名ではなくこの印で選びましょう
- 与えないもの……ひづめ・骨・硬いナイロンのおもちゃ・鹿角・氷。歯の骨折の多くはこれらを噛んで起きます。かじるものは押すと曲がる硬さのものを
「補助を使っているから歯ブラシは要らない」にはしないでください。人が歯磨きをせずガムやリンスだけでケアを終わらせることは少ないのと同様に、犬も歯磨きが重要です。補助は、歯ブラシに戻るまでの「つなぎ」と、歯ブラシができるようになってからの「足し」です。
やってはいけないこと|押さえつける・叱る・人用の歯磨き粉・長くやる
嫌がる犬に対して、良かれと思ってやりがちなことを並べます。どれも「早く磨きたい」から出るもので、結果は逆になります。
| やりがちなこと | 犬に何が起きるか | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 押さえつけて磨く・仰向けに固定する | 怖がっている最中に続けると次回の反応がかえって大きくなります。強い苦痛の中で続けると触られることへの恐怖が一生残る危険があります | 段階を下げる。押さえずに、犬が座った横から、数秒で終える |
| 嫌がったから叱る・「ダメ」と言う | 米国獣医行動学会(AVSAB)の2021年の見解では、罰を使った方法は不安に関わる行動と関連し、覚える力も落とすとされています。決して罰したり叱ったりしてはいけません | 嫌がったのは段階が高すぎたサイン。犬ではなく手順を直す。叱り方の考え方は犬の叱り方の記事へ |
| 人用の歯磨き粉・重曹を使う | 人用は飲み込む前提で作られておらず、ナトリウムが多いものや犬に有毒なキシリトールを含むものがあります。重曹はアルカリ性が強く胃腸の酸のバランスを崩し、味も悪いので犬が協力しなくなります。キシリトールは少量でも低血糖・けいれん・肝不全・死に至ることがあります | 犬用ペーストか、水だけ。犬はすすいで吐き出せない |
| 一度に全部磨こうとする・長くやる | 最初の数回は口全体ではなく数本の歯だけにします。嫌がる場合は無理に磨かず、前歯・左・右など場所と回数を分けましょう | 1回数秒〜1分。今日は右、明日は左 |
| 唸っている・暴れている最中に続ける | 強い苦痛の中で続けると触られることへの恐怖が一生残る危険があります。唸る・歯をむくなら続けず専門家へ | その回は終わり。次回は段階1から。痛みを疑って受診 |
| 家で歯石を取ろうとする | 自宅で無理に歯石取りを行って嫌な思いをすると、その後口を触らせなくなり、日々のケアができなくなります | 歯石は動物病院で(次の章) |
| 「歯のため」に硬いものを与える | ひづめ・骨・鹿角・氷・硬いナイロンは歯を折ります。折れた歯は痛みの元になり、さらに嫌がります | 曲がる硬さのおもちゃ、認定の印のあるガム |
| 嫌がるからやめてしまう | 歯垢は数日で歯石になり、家では取れなくなる。歯周病が進んで痛みが出ると、もっと嫌がる | 歯ブラシをやめるのではなく、段階を下げる。シートやガーゼでつなぐ |
動物病院での歯石除去|全身麻酔が要る理由と、無麻酔の歯石取りの注意
嫌がる犬の口を診てもらうと、歯石が付いていることがよくあります。歯垢のうちは毎日の歯磨きで改善しますが、歯石になると歯磨きでは取り除けなくなるため歯石取りが必要になります。歯周炎に移行させないよう歯肉炎の段階で行うのがよいとされています。ここで、多くの飼い主さまが「麻酔はかけたくない」とおっしゃいます。その気持ちは分かるので、資料に書かれていることをそのまま書きます。
歯科処置には全身麻酔が必要です。協力的で起きている動物でも歯石の一部は取れますが、それは見た目だけのもので、存在する歯の病気を診断も治療もしません。理由は、歯周病を起こしているのは歯茎の下の歯石で、起きている犬では歯の内側や歯茎の下を安全に処置できず、器具で歯の表面に付いた細かい傷を研磨で消す必要があり、犬が急に動けば鋭い器具で歯茎を切るからです。無麻酔で目に見える部分の歯石だけを取り除くことがあるようですが、歯周病の治療が目的ならそれでは十分でなく、歯肉に隠れた歯石を取ることが最も重要なので、犬では原則麻酔下で処置します。無麻酔の歯石除去だけでは見た目はきれいになっても口臭が残り歯周ポケットの細菌感染が続くため、気づかないうちに歯周病が進行して多くの歯を抜くことになる可能性が高いとされています。
麻酔の前には、腎臓と肝臓の機能が麻酔に耐えられるか血液検査で確かめ、必要なら心臓も調べます。歯のレントゲンで歯茎の下の状態を見るのも、麻酔下でしかできないことが多いです。不安があれば、かかりつけの獣医師に相談するか、麻酔の専門医がいる病院を受診すると減らせます。処置のあと、歯垢は6時間ほどでまた付き始めるので、歯石を取ったあとこそ、この記事の慣らし直しが要ります。歯石除去の費用は病院・処置の内容・犬の大きさで変わるので、見積もりを取ってください。
動物病院・専門家に相談する目安
嫌がる理由が①③④なら家庭の慣らし直しで進みますが、次に当てはまるときは家庭だけで抱えないでください。
- 今までできていた歯磨きを急に嫌がるようになった(痛みを先に除く)
- 口臭が強い、歯茎が赤い・腫れている、おもちゃに血が付く、片側でしか噛まない、食べるときに声を出す、顔が腫れる、前足で口を気にする
- 生後6〜7か月を過ぎて犬歯が2本並んでいる(乳歯遺残)
- 口を触ると唸る・歯をむく・噛む。この状態では練習を続けず専門家に相談してください
- 段階1(口の周りを触る)に戻しても、おやつを食べない・逃げる・隠れるが続く
- 高齢で、口臭・よだれ・食べにくさが出てきた(加齢による唾液の減少も歯周病に関わります)
「犬 歯磨き 嫌がる 老犬」で調べて来られる方へ。高齢の犬では慣らすのに少し長くかかることがありますが、それでもやる価値はあります。高齢の子ほど、先に口の中を診てもらってから段階1に戻る、という順番を守ってください。フローエンスはブリーダー直販で、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。「段階3で止まって進まない」「歯ブラシを噛んでしまう」といった手順の途中のことは、専門トレーナーのトレーナーダイヤルにご相談ください。相談するときは、嫌がる瞬間を短い動画で撮っておくと、①〜④のどれかがその場で分かります。相談のタイミングに迷ったら、ドッグトレーナーに相談するタイミングの記事も参考にしてください。
よくある質問
犬が歯磨きを嫌がるのはなぜですか?
理由は4つに分かれます。口を触られること自体がまだ苦手、口の中が痛い・違和感がある、歯ブラシやペーストなど道具が合っていない、やり方が急ぎすぎ・長すぎ、です。多くの犬は口元に触れられることを嫌がったり怖がったりするので、いきなり歯ブラシで磨くと「歯磨き=嫌なこと」と覚えてしまう恐れがあります。歯を磨かれることは犬にとって不自然なことです。嫌がり方で見分けられます。口元に手を近づけただけでそむけるなら「触られる」、急に嫌がる・片側で噛む・触ると怒るなら「痛い」、指やガーゼは受け入れるのに歯ブラシだけ嫌がるなら「道具」、最初の数秒はできるのに途中から身をよじるなら「急ぎすぎ」です。「痛い」だけは家庭では直せないので、先に動物病院で診てもらってください。
今までできていた歯磨きを急に嫌がるようになりました。どうすればいいですか?
しつけの問題ではなく、口の中に痛みや違和感が出た可能性を先に疑ってください。歯ブラシを嫌がるのは歯肉炎や歯周炎でブラシが当たると痛み・違和感があるからかもしれません。成犬は歯ブラシの練習を始める前に動物病院で口の中のチェックをするとよいでしょう。痛みの元は、子犬なら乳歯から永久歯への生え変わり(痛みを伴うとされています)や生後6〜7か月を過ぎても残る乳歯、成犬なら歯肉炎・歯周病、硬いものを噛んで欠けた歯、中高齢なら口の中のできものです。口臭が強い、歯茎が赤い、おもちゃに血が付く、片側でしか噛まない、食べるとき声を出す、があれば受診が先です。診てもらって問題が無ければ、口の周りを触る段階まで戻って慣らし直します。
歯磨きをしようとすると噛む・怒る犬はどうすればいいですか?
押さえて続けないでください。触ったときに犬が食べるのをやめる、または唸る・歯をむくなら続けず専門家に相談してください。隠れる・キャンと鳴く・唸る・噛みつくは強い苦痛のサインで、その中で続けると触られることへの恐怖が一生残る危険があります。唸っている最中に「ここまでやってしまおう」と続けるのが、いちばん悪い一手です。その回はそこで終わり、次回は口の周りを触る段階からやり直します。そして唸る・噛む犬は口の中が痛い可能性を必ず疑って、慣らし直しの前に受診してください。歯ブラシをおもちゃだと思って噛む子は、「当てて、すぐ離しておやつ」を繰り返し、ブラシを口の中で長く動かさないようにします。指サック型は指を噛まれるので使いません。
歯磨きを嫌がる犬は、押さえつけて磨いてもいいですか?
押さえつけないでください。怖がっている最中に続けると次回の反応がかえって大きくなります。罰を使った方法は不安に関わる行動と関連し、覚える力も落とすとされていて(2021年の見解)、決して罰したり叱ったりしてはいけません。押さえて磨いた1回で、歯ブラシは「嫌なことの合図」になり、次の10回が難しくなります。代わりに、段階を下げて1回数秒にし、犬が座った横から、おやつを食べ続けている間だけ触り、おやつを食べなくなったらその回は終わりにします。1回を短く、毎日の流れの中に置くほうが、押さえて長くやるより早く進みます。
歯ブラシを嫌がるので、歯磨きガムやシートだけでもいいですか?
慣らし直しの間の「つなぎ」としてはよいのですが、代わりにはなりません。歯磨きシートや歯磨きガムは歯の表面の汚れは取れても歯の間や歯と歯茎の間の食べかすは取れず、細かい汚れを取れるのは歯ブラシだけです。シートやガムは歯ブラシの補助で、少しずつ歯ブラシに移行していきます。かじるおもちゃやおやつ、歯石を減らす食事や飲み水に入れるものも役立つことがありますが、歯石を防ぐいちばん良い方法は犬用ペーストでの毎日の歯磨きです。歯ブラシが無理な間は、指に巻いたガーゼやシートで外側の歯をなでることを続けてください。それ自体が慣らし直しの段階なので、続けているだけで歯ブラシに近づきます。ガムやおもちゃは、米国獣医口腔保健協議会(VOHC)の認定の印があるものを、丸飲みしない大きさで、見ている前で与えます。ひづめ・骨・鹿角・氷は歯が折れるので与えません。
歯磨きができない犬は、動物病院で歯石を取ってもらえばいいですか?無麻酔でもできますか?
歯石が付いていれば動物病院での処置が要りますが、原則として全身麻酔下です。歯科処置には全身麻酔が必要で、協力的で起きている動物でも歯石の一部は取れますが、それは見た目だけのもので、存在する歯の病気を診断も治療もしません。歯周病の原因は歯肉に隠れた歯石で、無麻酔では目に見える部分しか取れず、口臭が残って歯周ポケットの細菌感染が続くため、気づかないうちに歯周病が進行して多くの歯を抜くことになる可能性が高いとされています。麻酔の前には血液検査で腎臓と肝臓の機能を確かめます。不安があれば麻酔の専門医がいる病院に相談してください。そして、処置後は6時間ほどで歯垢が付き始めるので、歯石を取ったあとこそ、口の周りを触る段階からの慣らし直しが要ります。歯石を取るまでの間も、家で無理に歯石を取ろうとしないでください。口を触らせなくなります。
老犬が歯磨きを嫌がります。今から慣らせますか?
慣らせます。高齢の犬では慣らすのに少し長くかかることがありますが、それでもやる価値はあります。ただし順番があって、高齢の子ほど先に動物病院で口の中を診てもらってください。歯周病は年齢とともに増え、加齢による唾液の減少も関わり、歯ブラシを嫌がるのは歯肉炎や歯周炎の痛みかもしれません。痛みや歯石があれば、その治療が先です。口の中に問題が無ければ、若い犬と同じく、口の周りを触る段階から、1回数秒・毎回おやつ・嫌がる前にやめる、で上がります。歯ブラシが無理な間は、指に巻いたガーゼやシートで外側の歯をなでることを続けてください。口臭が急に強くなった、よだれが増えた、食べにくそう、なら歯だけでなく腎臓や肝臓の病気でも口臭が強くなるので、早めに受診してください。
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まとめ
犬が歯磨きを嫌がる理由は、口を触られること自体が苦手・口の中が痛い・道具が合っていない・急ぎすぎ、の4つです。急に嫌がるようになった、片側でしか噛まない、触ると怒る、口臭が強い、歯茎が赤いなら、しつけの前に動物病院で口の中を診てもらいます。子犬の生え変わりや残った乳歯、歯肉炎・歯周病、硬いもので欠けた歯、口の中のできものが痛みの元で、小型犬は顎が小さく歯が混み合うぶん歯周病になりやすい犬種です。痛みが無ければ、口の周りを触る→唇をめくる→指で歯に触る→ペーストの味→歯ブラシを当てるだけ→1本だけ→片側から全部、の7段階を、1回数秒・毎回おやつ・嫌がる前にやめる、で日単位に上がります。おやつを食べなくなる・身をよじる・顔をそむける、が出たらその回は終わり。唸る・噛むなら続けず、次回は段階1から、そして痛みを疑って受診します。歯ブラシだけ嫌がる子は、ヘッドの小さい歯ブラシや指サック・ガーゼ・綿棒、ペーストの味の変更で通ることがあります。歯ブラシが無理な間は、シート・ガーゼでつなぎ、ガムやおもちゃは認定の印のあるものを補助として使います。押さえつける・叱る・人用の歯磨き粉・一度に全部・唸っている最中に続ける・家で歯石を取る・硬いものを与える、は逆効果です。歯石は家では取れず、処置には全身麻酔が要ります。無麻酔の歯石取りは見た目だけで歯周病の治療にはならず、処置後は6時間ほどで歯垢が付き始めるので、取ったあとこそ慣らし直しを続けてください。
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