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犬が怒る理由とサイン|段階の順番・鼻にしわ・急に怒るときの対処
公開日:2026年8月7日(金) 更新日:2026年10月6日(火) 犬の育て方
この記事の要点
- 犬が怒るのは「こわい」「守りたい」「痛い」「触られ方が嫌」「先が読めない」「高ぶりすぎ」の6つのどれかで、いちばん多い型の一つがこわさです。
- 怒りのサインは、目をそらす・固まる→硬く見つめる→唇を引いて歯を見せる(鼻にしわ)→唸る→空噛み→噛む、の順に強くなり、飼い主さまが気づく唸りはすでに後半です。
- その場でやることは、動きを止める・触っていた手を引く・横を向く・逃げ道を空ける・原因から離す、で、唸りを叱って消してはいけません。
- 急に怒るようになった、触ると怒るようになった犬は、しつけの前に痛みを疑って動物病院へ。
- 物や食器を守る犬は取り上げず、近づく=良いことが起きる形と交換で直し、子どもには絶対にやらせません。
- 一度でも歯が当たったら、家庭の手順だけで抱え込まず専門家へ相談します。
「なでていたら急に唸られた」「おもちゃを取ろうとしたら歯を見せた」「今まで平気だったのに、触ると怒るようになった」。犬が唸る、鼻にしわを寄せる、歯を見せる、吠える。飼い主さまはこれを「怒っている」と呼びますが、犬の側で起きているのは「今の状況を止めてほしい」という伝達です。そこを取り違えると、叱って唸りを消し、次は前ぶれ無く噛む犬を作ってしまいます。
先に結論を書きます。犬が怒るのは「こわい」「守りたい」「痛い」「触られ方が嫌」「先が読めない」「高ぶりすぎ」の6つのどれかで、いちばん多い型の一つがこわさです。怒りのサインは、目をそらす・固まる→硬く見つめる→唇を引いて歯を見せる→唸る→空噛み→噛む、の順に強くなり、飼い主さまが気づく「唸り」はすでに後半です。この記事では、犬が怒っているサインを段階の順に並べ、怒る理由を6つに切り分け、理由ごとの対応と、その場で何をするか、やってはいけないこと、動物病院や専門家に相談する目安までを、動物の行動を専門に診る獣医師が書いた資料と、獣医師の学会の見解にそって書きます。目・耳・しっぽなど部位ごとの細かい読み方は犬のボディランゲージの記事に、実際に噛んでしまう犬の話は犬が噛む理由の記事に分けています。
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子犬を見る犬が怒るとは|「怒り」ではなく「止めてほしい」の合図。多くはこわさから
動物の行動を専門に診る獣医師が書いた、アメリカの動物病院グループ(VCA)の解説は、犬の攻撃的なふるまいの目的を「自分と、相手(人・他の動物・車など)とのあいだに距離を作ること」だと書いています。吠える・唸る・歯を見せる、で相手が引けば犬はほっとし、その行動は次も使われます。つまり、犬の「怒り」は人の怒りとは違い、「これを止めてほしい」「近づかないでほしい」を体で言っている状態です。同じ解説は、こうした獣医師がいちばん多く見る型の一つは「こわさからくる攻撃」だとし、家族に対する攻撃も多くは恐怖・不安・「次に何が起きるか分からない」という迷い・罰されるのではという予想から起きる、と書いています。
だから、犬が怒っているときに「反抗している」「上に立とうとしている」と読むのは、対応を間違える入口です。家族への攻撃が順位に関わることは考えにくく、これはよくある思い違いです。飼い主が「上に立つ」ための対決型のやり方は、不安と攻撃をむしろ増やします。アメリカの獣医師の学会(米国獣医行動学会)の見解も、「犬より上に立つ」という考え方を行動を直す指針として使うべきではなく、恐怖と不安は攻撃や問題行動のよくある原因で、罰はそれを悪くすることがある、と書いています。犬の怒りは「上下」ではなく「こわい・守りたい・痛い」で読みます。
もう一つ、飼い主さまが噛まれる場面で見落とされやすいのが「守りの怒り」です。攻めの構えも守りの構えも、目的は同じで「こわいものを止めたい」です。こわいものが引かなければ、どちらの側からでも噛むところまで進むことがあり、「おとなしく従う犬は噛まない」はよくある誤解です。体を低くして目をそらしている犬は「大丈夫な犬」ではなく、「逃げ場を探している犬」です。追い詰められたり押さえられたりして逃げられない犬は、戦うほうを選びやすくなります。このことが、この記事のすべての対応の土台です。うちで紹介しているトイプードル、チワワ、ミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、マルチーズ、シーズーのような小型犬は、抱き上げられる・持ち上げられる場面が多いぶん、この「逃げられない状況」を人が作りやすい犬たちです。
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犬が怒っているサイン|段階の順に並べると、唸りは後半です
「犬が怒っているサイン」で調べて来られる方がいちばん多いので、サインを出る順番に並べます。犬のサインは段階を追って強くなり、ふつうは控えめなものが先、強いものが後に出ます。飼い主さまが「怒った」と気づく唸りや歯は、この表の後半です。前半のサインで止めれば、唸りも歯も出ずに済みます。ただし同じ解説は、その犬の経験しだいで控えめな段階を飛ばしたり、いっきに進んだりする、とも書いています(叱られて唸りを消された犬がそうなります。後の章で書きます)。表は、アメリカの動物病院グループと犬の団体の解説をもとにまとめました。
| 段階 | 見えるサイン | 犬が言っていること | 飼い主さまがすること |
|---|---|---|---|
| 1 なだめ・回避 | 目をそらす、顔をそむける。あくび、鼻や口をぺろりと舐める。耳・頭・首が下がる。体が低くなる。触られると固まる | 「やめてほしい」「この場を落ち着かせたい」(これを『なだめ』、あくびと舐めを『どっちつかず』のサインと呼ぶ) | 触っている手を止めて引く。近づくのをやめる。ここで止めれば、この先へ進まない |
| 2 硬い凝視 | 目を大きく開いたまま、長く硬く見つめる。体が硬くなる。しっぽが上がって細かく震える | 攻めの側の「いちばん控えめな脅し」。犬どうしではこれで済むことが多い | それ以上近づかない。目を合わせ続けない。原因(物・場所・相手)から離す |
| 3 唇を引く・歯を見せる | 唇の端が引き上がって C の形になり、前歯が見える(このとき鼻の上にしわが寄る)。頭・耳がいったん上がり、脅しが強まると下がる | 「歯がある」と見せている。こわいものが続いたときの次の段階 | 手を出さない。叱らない。静かに距離を取る |
| 4 唸る | 低い「ウー」。歯を見せながらのことも、見せずに喉だけのことも | 「まだ言葉で言っている」段階。噛む前に気持ちを伝えてくれる、大切な警告 | 唸りを止めさせようとしない。原因から離す(後の章) |
| 5 空噛み | 歯を当てずに噛む動き(噛む前の最後の警告) | 「この状況が続けば噛む」 | その場から離れる。取ろうとしていた物は取らない |
| 6 噛む | 歯が当たる、皮膚に跡が付く、出血 | 脅威を止める最後の手段 | 手当て。同じ状況を二度と作らない。専門家へ(最後の章) |
「怒り顔」の見分け|鼻にしわ・歯を見せる・笑顔との違い
「犬 鼻にしわを寄せる」「怒り顔」で調べて来られる方へ。アメリカの犬の団体(アメリカンケネルクラブ)の解説では、威嚇の表情は唇の端が C の形になって前歯が全部見え、低い唸りと一緒に出るもので、「私の武器を見ろ」と言っているようなものだ、と書かれています。唇を引き上げると鼻の上にしわが寄るので、「鼻にしわ」はこの段階3のことです。こわいものが続くと、犬は口元で示す段階に進み、唇の端を引いて歯をむき出します。
ただし、歯が見えれば全部が怒りではありません。前歯を見せて「笑う」犬もいます。こちらは体がゆるんでくねくね動いていて、「こんにちは、敵意はありません」の挨拶です。見分けるのは口ではなく、体が硬いか、ゆるんでいるかです。同じことが唸りにも言えます。遊びの中の唸り、なでられて気持ちいいときの唸り、よく知っている人への挨拶の唸りは、興奮や満足を表すふつうのものです。プレイバウ(遊びに誘うおじぎ)やゆるんだ体と一緒なら遊びの唸り、硬い姿勢・硬い凝視・こわばった表情と一緒なら本気の唸りです。迷ったら警告として扱ってください。とくに知らない犬にはそうしてください。
取り違えやすいものを、もう2つ。「しっぽを振りながら吠える」は、しっぽを振っているから喜んでいる、ではありません。しっぽを振るのは、気持ちが高ぶっているということだけで、高く上げて速く小刻みに振るのは高ぶりであり、悪い意味のこともあります。「歯をカチカチ鳴らす」は、ここまで紹介した解説の威嚇のサインには入っていません。それだけで怒りと決めず、目・体の硬さ・しっぽを一緒に見てください。部位ごとの読み方は犬のボディランゲージの記事に、しっぽの高さと速さの意味は犬のしっぽの意味の記事に分けています。
犬が怒る理由6つ|こわい・守る・痛い・触られ方・先が読めない・高ぶり
「犬が怒る理由」は、「いつ、何をしたときに怒るか」で決まります。攻撃の型は、こわさ・迷い・物を守る・縄張り・痛み・遊び・八つ当たり・覚えた行動など、たくさんあります。型によって対応が違うので、診断と治療の計画は専門家と組むのがふつうです。家庭で切り分けるなら、次の6つです。当てはまる行を探してください。
| 理由 | 起きる場面 | 見分けるところ | 先にやること(対応は次の章) |
|---|---|---|---|
| ①こわい(いちばん多い型の一つ) | 知らない人に急に触られた。上からかがみ込まれた。動物病院。大きな音。飼い主さまの後ろや足の間に隠れながら唸る | 体が低い。しっぽが下がる・巻き込む。目をそらしながら白目。後ずさりできる構え。逃げ場が無いと固まる | こわがっている相手・物から距離を取る。抱いて差し出さない。慣らしは「怖くない距離」から |
| ②守る(物・場所・人) | 食べているとき、おもちゃ・拾った物を持っているとき、寝床にいるとき、飼い主さまの膝の上にいるときに、近づく・取ろうとすると怒る | 物の上で体が硬くなる。硬い凝視。白目。唇を上げる。低い唸り(大事な物を守るときのサイン) | 取り上げない。食事中・物を持っているときは近づかない。交換で渡す(後の章)。子どもには絶対にやらせない |
| ③痛い・体の不調 | 今まで平気だった場所を触ると怒る。抱き上げると怒る。急に怒りっぽくなった。シニアになってから | 怒るのが特定の場所(腰・耳・口・足)に決まっている。歩き方・立ち上がり方・食べ方が変わった | しつけの前に動物病院。「急に」「特定の場所」は痛みの合図と考える(次の項) |
| ④触られ方が嫌 | 頭の上から手を出す。抱き上げる。耳・足先・しっぽ・口を触る。寝ているところを起こす。しつこくなでる | なでている最中に固まる、あくび、鼻を舐める→唸る。触る前に目をそらしている | 固まった時点で手を引く。頭の上からではなく横から胸や背中を。寝ている・食べているときは触らない |
| ⑤先が読めない(一貫しない対応) | 同じことをしても、家族によって、日によって、反応が違う。叱られたり許されたりする | 飼い主さまの動きや声のあとに、目をそらす・低くなる・唸るが出る(罰を予期している) | 家族で対応を一つにそろえる。叱らない(その時々で反応が違うと犬はいら立ち、攻撃が強まる) |
| ⑥高ぶり・転嫁 | 遊びの途中で本気になる。他の犬や来客に吠えている最中に、引き離そうとした手に噛みつく | 直前まで別の相手に向かっていた。体が硬く、しっぽが高く細かく震える | 高ぶっている犬を手で引き離さない。遊びは上がりきる前に区切る(子犬の興奮の記事) |
6つは重なります。「食器に近づくと唸る」は②ですが、その奥に「取られた経験=こわさ(①)」があることが多く、「触ると怒る」は④に見えて③(痛み)のことがあります。迷ったら、③痛みを先に除き、次に①こわさを疑ってください。この順にすると、対応を間違えたときの害がいちばん小さくなります。
急に怒るようになった・触ると怒るようになった|まず痛みを疑います
「犬 急に怒るようになった」「触ると怒るようになった」で調べて来られる方へ。ここはしつけより先に、体です。2020年に『Animals』誌に発表された総説(Mills ら)は、行動の専門家に紹介された犬の症例を著者らが見直したところ、控えめに見積もっても3分の1ほどに痛みを伴う状態が関わっていて、8割近くに上る例もあったと報告しています。痛みの出どころで多いのは筋肉や骨・関節で、消化器や皮膚の痛みも問題行動に関わっており、歩き方の違和感や説明のつかない行動の変化は、その犬種でよくあることだからと片付けるべきではない、とあります。成犬になってから物や寝床を守るようになった犬は、練習の前に動物病院へ連れていってください。行動の変化や攻撃のサインは、体の病気のしるしのことがあります。
小型犬で気をつけたいのは、膝のお皿の骨が外れる病気(パテラ)と腰の椎間板の病気、そして歯と耳です。抱き上げたとき、腰やお腹を触ったとき、口の周りを触ったときにだけ怒るなら、その場所が痛いと考えてください。シニアでは目や耳が弱って驚きやすくなることもあります。「急に」「特定の場所だけ」「特定の動きのあとだけ」の3つのどれかが当てはまるなら、しつけの手順に進む前に、動物病院で診てもらってください。痛みが取れると、怒らなくなる犬がいます。膝と腰のサインはおすわりの記事の「座り方」の章に書いています。
特定の人にだけ怒る|「近づき方」が原因のことがあります
「特定の人に急に怒るようになった」で調べて来られる方もいます。人の側の近づき方が、犬には脅しに見えていることがあります。犬の行動研究で「脅かす近づき方」として使われる手順(Cimarelli ら・2016年)は、見知らぬ人が5メートル離れた位置から、約4秒に1歩というとても遅い足取りで、上体を少し前に倒し、犬の目をじっと見続けながら近づく、というものです。家庭犬(ボーダー・コリー220頭)にこれをしたところ、なだめる反応が47%、後ずさりが24.7%、唸る・歯をむく・噛みつこうとするが14.6%で、友好的に近づいてきたのは6.5%だけでした。「犬が苦手だから、そっと、ゆっくり、目を見ながら近づく」人ほど、犬にはこわい相手に見えます。犬が特定の人に怒るとき、その人が背の高い男性だったり、帽子や杖を持っていたり、犬を見つめながらかがみ込む癖があったりしないかを見てください。対応は「その人が横を向いてしゃがみ、犬が自分から近づくのを待つ」で、詳しくは男性を怖がる犬の記事に書いています。
理由別の対応|距離・交換・受診・触り方・一貫・区切る
対応の考え方は、「治療の最初の一歩は、次の攻撃を起こさせないこと」に尽きます(アメリカの動物病院グループの解説)。理由は2つで、まず安全のため、そしてもう一つは、怒る場面が一度あるたびに、犬はそれを学び、たいていは攻撃が強くなるからです。だから対応は「怒ったあとにどう直すか」ではなく、「怒る状況をどう作らないか」から始まります。同じ解説は「犬の我慢の限界を試さないこと。1回の攻撃でそれまでの進み具合が後戻りする」とも書いています。
| 理由 | 今日からやること | 慣らし方(時間をかけて) |
|---|---|---|
| ①こわい | こわがっている相手・物から、犬が落ち着ける距離まで離す。来客中はゲートの内側かクレートに。散歩で苦手な犬に会ったら道を渡る | 怖がらない距離で、相手が見えている間だけおやつ(「良いことが起きる」と結びつける)。近づくのは犬の役目。社会化不足の記事の順番で |
| ②守る | 食事中・物を持っているときは近づかない。守りやすい物(骨・ガム・拾った物)は当面与えない。守る物は犬だけの場所(クレート)でだけ渡す。食事は家族の動線から離れた場所で | 子犬のうちから「人が近づくと良いことが起きる」を作る=食べている犬に近づかず、通りすがりにもっと良いおやつを器に落とす。取り上げたい物は、もっと良いおやつと「交換」で。詳しくはおもちゃを離さず唸る犬の記事へ |
| ③痛い | 怒る場所を触らない。抱き上げない。動物病院へ | 痛みの治療が先。治ったあとも、触られると痛かった記憶が残るので、④の触り方で慣らし直す |
| ④触られ方 | 頭の上からではなく、横から胸や背中を。固まったら手を引く。寝ている・食べているときは触らない。耳・足先・口は「触られると良いことが起きる」を作ってから | 触る場所を1か所・1秒からおやつと結びつける。手入れ(爪切り・ブラッシング・歯磨き)が嫌な子はリラックスポジションの記事と犬の撫で方の記事へ |
| ⑤先が読めない | 家族全員で「唸ったら手を引く・叱らない・取り上げない」を同じにする。犬が怒った場面を書き出して、当面はその状況を避ける | ごはん・散歩・遊びの合図を決め、「こうすれば良いことが起きる」を毎日同じ形で積む。叱り方そのものは犬の叱り方の記事へ |
| ⑥高ぶり・転嫁 | 高ぶっている犬を手でつかまない。犬どうしの高ぶりはリードとゲートで距離を作る。遊びは上がりきる前に区切る | 「おすわり」「マット」を落ち着いているときに教え、興奮する前の段階で出す。子犬の興奮の記事へ |
②の「守る」について、子犬のうちにできる予防を書いておきます。子犬が食べているときに落ち着いて近づき、静かに話しかけながら、器にとびきりのおやつを落とす。これを繰り返して「人が近づく=良いことが起きる」を先に作り、それに慣れたら、器を取り上げて→ほめて→すぐ返す、まで進めます。おもちゃでも同じです。目的は「持っている物より、もっと良いものが人からもらえる」を教えることで、取り上げる練習ではありません。すでに守る行動が出ている成犬では、盗んだ物を取り返す「交換」は、その犬をいちばんよく扱える大人だけが行い、子どもには絶対にさせないこと、そして唸る・歯を見せる・空噛みが出たらその場を離れ、取ろうとしないこと、と同じ解説は書いています。
犬が怒ったその場で何をするか|止まる・手を引く・横を向く・離す
「犬が怒ってる時 対処法」で調べて来られる方へ。その場でやることは、どの理由でも同じで、犬が「止めてほしい」と言っていることを、止めることです。手順は次の6つで、上から順に行います。表は、アメリカの動物病院グループと犬の団体の解説をもとにまとめました。
| 順 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 動きを止める。声を出さない | 大きな声・急な動きは、犬には脅威が強まったように見える |
| 2 | 触っていた手をゆっくり引く。取ろうとしていた物は取らない | 犬が止めてほしかったのはこれ。手を引いた時点で、犬の目的は達している |
| 3 | 目を合わせ続けず、体を横に向ける | 硬い直視は攻めの側のサインでもある。横を向くのは「脅威ではない」の合図 |
| 4 | 犬が離れられるように、逃げ道を空ける。追い詰めない、押さえない、抱き上げない | 追い詰められたり押さえられたりして逃げられない犬は、戦うほうを選びやすい |
| 5 | 原因(物・場所・相手)から犬を離すか、自分が離れる。来客や他の犬なら、距離を取る・その場を出る | 距離ができれば、犬の側の理由が消える |
| 6 | 落ち着いたあとで、「何をしたときに怒ったか」を書き出す。同じ状況を当面作らない | 次の攻撃を起こさせないことが治療の最初の一歩 |
手順2について、よくある疑問があります。「唸ったら手を引く、では犬の思いどおりになって、唸れば済むと覚えるのでは」。唸りは、「まだ噛んでいない」段階で気持ちを伝えてくれている大切な警告です。多くの犬は噛みたいわけではなく、唸りで距離を作れれば、それ以上に進む必要がありません。警告なしに噛む犬のほうが、はっきり伝えてくれる犬よりずっと危ないのです。唸られたら手を引いてよい、というより、手を引くべきです。そのうえで、なぜ唸ったかを理由の章に当てはめ、次の章の対応で「唸らなくても済む状況」を作っていきます。
やってはいけないこと|叱る・押さえる・唸りを消す・試す
ここが、この記事でいちばん大事なところです。犬が怒ったときに人がやりがちなことは、どれも「怒りを増やす」方向に働きます。アメリカの獣医師の学会の2021年の見解では、力や痛みや不快に頼る方法はしつけにも問題行動の対応にも使うべきではなく、罰を使った方法は、人や他の犬への攻撃的な行動や、不安に関わる行動と関連が見られ、効果の面でも劣るとされています。対決型・罰に頼る方法は、短い間は効いたように見えても、攻撃が増えることと関連があります。飼い主が犬の攻撃を罰したり、攻撃的に応じたりすると、犬はさらにこわがるようになります。
- 唸ったから叱る……唸りを罰してはいけません。罰で唸りは消せても、唸らせている気持ちは消えません。他の犬に唸って叱られた犬は、唸らずに嫌がり続け、飼い主は「大丈夫になった」と思い込み、警告なしに噛む形に進みます。しかも、叱られた不快が「他の犬がいるとき」と結びつき、他の犬への嫌な気持ちが強まります
- 押さえつける・仰向けにひっくり返す・マズルをつかむ……仰向けに押さえるなどの対決型の方法は、犬が脅かされたと感じれば、身を守るための攻撃を引き出すことがあります。逃げられない犬は戦います
- 「上に立てば直る」と考える……家族への攻撃が順位に関わることは考えにくく、上下を教え込むやり方は不安と攻撃を増やします。犬の怒りは上下の問題ではありません
- 「大丈夫か」試す……食べている犬の器に手を入れてみる、唸る場所をわざと触ってみる。犬の我慢の限界を試さないでください。1回の攻撃で、それまでの進み具合が後戻りします
- 家族で対応がばらばら……骨を守る犬に、無視する人・取り上げる人・引き下がる人がいると、犬は「なぜ昨日は通じて今日は通じないのか」が分からず苛立ち、攻撃が強まる
- こわがっている犬を抱いて相手に差し出す……逃げ場を奪ったうえで、こわいものを近づけています。犬が自分の足で近づける形にしてください
- 子どもに「交換」や「取り上げ」をさせる……守っている物を取り返す作業は、その犬をいちばんよく扱える大人だけが行い、子どもには絶対にさせないでください。子どもの顔は犬の口の高さにあります(犬と子どもの記事)
「叱らないなら、どうやって教えるのか」への答えは、この記事の理由別の対応そのものです。怒る状況を作らない、怒らなくても済む結びつき(近づく=良いことが起きる)を作る、犬が自分で距離を選べるようにする。しつけは「罰する」より「何をしてほしいかを教える」ほうが効きます。
動物病院・専門家に相談する目安
ほとんどの「怒る」は、痛みを除き、こわい相手から距離を取り、守る物と触り方を管理すれば、唸る場面が減ります。ただし、攻撃の型は多いので、診断と見通しと治療の計画は、動物の行動を専門に診る獣医師か、動物の行動の専門家の助けを借りるのがふつうです。同じ解説には「一度噛んだ犬は、その状況で噛むという手段を使う意思を示したので、次も噛みやすい」「攻撃が改善しても、噛むリスクが無くなることはない」ともあります。次のどれかに当てはまるなら、家庭の手順だけで抱え込まず、相談してください。
- 急に怒るようになった、特定の場所を触ると怒る、歩き方・食べ方・立ち上がり方が変わった(まず動物病院)
- 歯が皮膚に当たった、跡が付いた、出血した(一度でも)
- 唸りや歯を見せる場面が、週に何度も、決まった状況で繰り返される
- 前ぶれ(目をそらす・固まる・唸る)が無く、いきなり噛む
- 家に小さな子どもがいて、犬が物・場所・人を守る
- 犬どうしの怒りが、けがになりかけた
- 怒る場面を避けようとして、家族の暮らし(食事・来客・散歩)が回らなくなっている
相談するときは、「いつ・どこで・誰が・何をしたときに・犬がどの段階のサインを出したか」を、できれば動画で残しておいてください。それがあると、その場で具体的な話になります。フローエンスはブリーダー直販で、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。「唸られたけれど、これは怒りなのか遊びなのか」といった段階の見分けから、ドッグトレーナーへご相談ください。相談のタイミングに迷ったら、ドッグトレーナーに相談するタイミングの記事も参考にしてください。
よくある質問
犬が怒っているときのサインは何ですか?
出る順に、目をそらす・顔をそむける・あくび・鼻を舐める・体が低くなる・触られると固まる(なだめ)→目を大きく開いて硬く見つめる・体が硬い→唇の端を引き上げて歯を見せる(鼻の上にしわが寄る)→低く唸る→歯を当てない空噛み→噛む、です。サインは段階を追って強くなり、控えめなものが先に出ます。飼い主さまが「怒った」と気づく唸りは後半なので、目をそらす・固まる段階で手を引くのが、いちばん安全な対応です。
犬が怒る理由は何ですか?
「こわい」「物や場所や人を守りたい」「痛い・体の不調」「触られ方が嫌」「対応が一貫せず先が読めない」「遊びや吠えで高ぶりすぎた(転嫁)」の6つのどれかです。動物の行動を専門に診る獣医師がいちばん多く見る型の一つは、こわさからくる攻撃です。家族への攻撃も、多くは恐怖・不安・次に何が起きるか分からない迷い・罰されるのではという予想から起きます。順位や反抗ではありません。迷ったら、痛みを先に除き、次にこわさを疑ってください。
犬が鼻にしわを寄せるのは怒っていますか?
唇の端を引き上げて前歯を見せる威嚇の表情で、そのときに鼻の上にしわが寄ります。この表情は唇の端が C の形になって前歯が全部見え、低い唸りと一緒に出るものです。ただし、前歯を見せて「笑う」犬もいて、こちらは体がゆるんでくねくね動いている挨拶です。見分けるのは口ではなく体で、体が硬く、硬い凝視や唸りが一緒なら威嚇、体がゆるんでいれば挨拶です。威嚇なら、手を出さず、叱らず、静かに距離を取ってください。
今まで平気だったのに、急に怒るようになりました。なぜですか?
しつけより先に、痛みを疑ってください。2020年の総説では、行動の専門家に紹介された犬の症例を見直したところ、控えめに見積もっても3分の1ほどに痛みを伴う状態が関わり、8割近くに上る例もあったと報告されています。小型犬では膝のお皿の骨が外れる病気、腰の椎間板の病気、歯と耳が多く、抱き上げたとき・腰やお腹を触ったとき・口の周りを触ったときにだけ怒るなら、その場所が痛い可能性があります。「急に」「特定の場所だけ」「特定の動きのあとだけ」のどれかに当てはまれば、動物病院で診てもらってください。
触ると怒るようになりました。どうすればいいですか?
まず、怒る場所を触らず、抱き上げず、動物病院で痛みを除いてください。痛みが無ければ触られ方の問題です。頭の上から手を出す・抱き上げる・耳や足先や口を触る・寝ているところを起こす、は犬が嫌がりやすい触り方で、なでている最中に固まる・あくび・鼻を舐めるが出たら、その時点で手を引きます。慣らすときは、触る場所を1か所・1秒からおやつと結びつけて、犬が自分から寄ってくるのを待ちます。頭ではなく横から胸や背中を、寝ている・食べているときは触らない、が基本です。
唸ったら叱ったほうがいいですか?
叱りません。唸りを罰してはいけません。唸りは噛む前に気持ちを伝えてくれる価値の高い警告で、罰で唸りは消せても唸らせている気持ちは消えず、警告なしに噛む犬に進みます。アメリカの獣医師の学会の2021年の見解でも、罰を使った方法は攻撃的な行動や不安に関わる行動と関連が見られ、効果の面でも劣るとされています。唸られたら、触っていた手を引き、原因から距離を取り、あとで「何をしたときに唸ったか」を書き出して、その状況を作らないようにします。
犬の威嚇の鳴き声には、どんな意味がありますか?
低い「ウー」という唸りは「これ以上近づかないで」「それを取らないで」の警告で、他の犬を遠ざけたい・追い詰められた・物を守っている・痛い、のどれかで出ます。ただし遊びの中の唸り、なでられて気持ちいいときの唸り、挨拶の唸りもあり、プレイバウやゆるんだ体と一緒なら遊び、硬い姿勢・硬い凝視・こわばった表情と一緒なら本気です。迷ったら警告として扱ってください。吠えは警戒・興奮・要求のどれでも出るので、しっぽを振りながら吠えていても喜んでいるとは限りません。
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まとめ
犬が怒るのは人の怒りとは違い、「この状況を止めてほしい」「近づかないでほしい」を体で伝えている状態で、理由は「こわい」「守りたい」「痛い」「触られ方が嫌」「先が読めない」「高ぶりすぎ」の6つに分かれ、いちばん多い型の一つがこわさです。順位や反抗ではないので、上に立とうとする対応は不安と攻撃を増やします。サインは、目をそらす・固まる→硬く見つめる→唇を引いて歯を見せる(鼻にしわ)→唸る→空噛み→噛む、の順に強くなり、唸りはすでに後半で、目をそらす・固まる段階で手を引けば先へ進みません。その場では、動きを止め、触っていた手を引き、横を向き、逃げ道を空け、原因から離します。急に怒るようになった、触ると怒るようになった犬は、しつけの前に痛みを疑って動物病院へ。物や食器を守る犬は取り上げず、近づく=良いことが起きる形と交換で直し、子どもには絶対にやらせません。叱る・押さえる・仰向けにする・唸りを消す・限界を試す・家族で対応がばらばら、は怒りを増やします。一度でも歯が当たった、前ぶれなく噛む、小さな子どもがいる家で物や場所を守る、なら家庭の手順だけで抱え込まず専門家へ相談してください。
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