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看板犬とは|向く犬種・しつけの順番・店の側の準備【2026】
公開日:2025年3月26日(水) 更新日:2026年10月6日(火) しつけトレーニング
この記事の要点
看板犬に資格や決まった犬種はありません。要るのは、知らない人が来ても吠えない・触られても平気・決めた場所で待てる・他の犬や子どもに落ち着いていられる、の4つの行動で、社会化と触られる練習と「待て」「マット」「ハウス」で作れます。犬は1日の半分を眠るので、看板犬にも休憩と逃げ場が要ります。店の側は、動物取扱業の登録が要るかを自治体に、飲食店なら保健所に先に確かめ、来客に「触る前に聞く」を伝えます。犬種では決まりません。
「お店で看板犬として迎えたい」「来客に吠えないで、誰にでも触らせてくれる子に育てたい」「看板犬って、そもそもどういう犬のこと?」。看板犬について調べる時期は、お店や事務所を開く前と、迎えたあとに「吠える」「怖がる」でつまずいたときの2回です。昔ながらのたばこ屋さんの店先で寝ている犬のイメージで調べて来られる方も多いのですが、実際に店で犬を迎えるには、犬の側にも店の側にも、決めておくことがあります。
先に結論を書きます。看板犬に資格や決まった犬種はありません。必要なのは「知らない人が来ても吠えない」「触られても平気」「決めた場所で待てる」「他の犬や子どもに落ち着いていられる」の4つの行動で、どれも社会化と、触られる練習と、「待て」「マット」「ハウス」で作れます。そして、犬は1日の半分を眠る動物なので、看板犬にも休憩と逃げ場が要ります。この記事では、看板犬に要る4つの行動、その土台の作り方、犬の側の負担と休ませ方、店の側で決めておく法律と衛生と来客への案内、向く犬・向かない犬、うまくいかないときの直し方を、獣医行動学と公的な資料にそって順に書きます。
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子犬を見る看板犬とは|店で人を迎える犬。決まりは無く、要るのは4つの行動です
看板犬とは、お店や事務所、施設で、お客さまや来客を迎える犬のことです。法律や団体が決めた言葉ではないので、資格も定義もありません。英語にも決まった訳語は無く、海外では職場にいる犬を「オフィスドッグ」のように呼ぶこともあります。「看板犬 柴犬」で調べて来られる方もいますが、犬種で決まるものでもありません(理由は後の章に書きます)。
決まりが無い代わりに、看板犬には「店にいて困らない行動」が要ります。看板犬として暮らしている犬に共通して要るのは、次の4つです。この4つは、アメリカの犬の団体(AKC)が「地域で歓迎されるためにすべての犬が持っているべき、実用的な行動」として作った「グッド・シチズン」の10項目のテストと、ほぼ重なります。同じテストは純血種にもミックスにも開かれていて、年齢の下限も上限もありません。
| 看板犬に要る行動 | 店で起きること | テストで対応する項目 |
|---|---|---|
| ① 知らない人が来ても吠えない | ドアが開くたびに知らない人が入ってくる。配達、子ども、大きな荷物 | 「友好的な知らない人を受け入れる」=知らない人が近づいて飼い主と話しても、嫌がったり怖がったりしない。「気を散らすものへの反応」=椅子が倒れる、人が走る、で驚いてもパニックにならず吠えない |
| ② 触られても平気 | お客さまが頭や背中をなでる。子どもが抱きつこうとする | 「なでられるあいだ座っている」=知らない人に頭と体を触られても嫌がらない。「見た目と手入れ」=耳や前足を触られる |
| ③ 決めた場所で待てる | レジやカウンターの後ろ、決めたマットの上で、お客さまが帰るまで動かない | 「おすわり・ふせ・その場で待つ」=飼い主が離れても決めた姿勢で待つ。「離れているあいだ」=飼い主が見えなくなっても3分間、吠え続けたりうろうろしたりしない |
| ④ 他の犬や子どもに落ち着いていられる | お客さまが犬を連れてくる。子どもが走る | 「他の犬への反応」=すれ違う犬に軽い関心を示す程度で、飛びついたり吠えたりしない。「人混みを歩く」=人に飛びつかず、リードを引っぱらない |
4つとも「性格が良い」ではなく「教えられる行動」です。だから「看板犬に向く子はどれですか」への答えは、「この4つを、これから一緒に作れる子」になります。生まれつき全部できている子はいません。ここから先は、その作り方です。
新しく載った子犬
土台①|社会化。人・音・物・場所を「ふつうにあるもの」にします
4つの行動の土台は、全部「社会化」です。生後3週から16週までが「社会化期」で、犬がいろいろなことを怖がらずに受け入れやすい時期です。生後3か月までは、この時期の中でもいちばん大事で、「怖がる気持ちより近づきたい気持ちのほうが勝っている」時期です。この時期に社会化が足りない・やり方が悪いと、あとで恐怖・回避・攻撃といった問題行動が出やすくなります。看板犬で困る「吠える」「怖がる」は、たいていここに戻ります。
店にいる犬が出会うものは、家庭犬より種類が多いです。だから看板犬の社会化は、ふつうの子犬より「人の種類」と「音」と「物」を意識して増やします。社会化の一覧を、店向けに絞ると次のようになります。
| 慣らすもの | 店で実際に出会うもの | 見せ方 |
|---|---|---|
| 人 | 大人の男性・女性、高齢の方、子ども、帽子・眼鏡・マスク・制服、大きな声の人、杖や車いす、配達の人 | 1人ずつ、座ってもらい、犬が自分から近づくのを待つ。近づいたらその人の手からおやつ。子どもは後ろ姿から |
| 音 | ドアの開閉、ドアチャイム、レジ、電話、掃除機、食器の音、外の車 | 小さな音から。鳴っている間だけおやつ。録音でもよい |
| 物 | 台車、段ボール、傘、キャリーケース、ベビーカー、大きな袋、床のワゴン | 床に置いて自分から嗅がせる。動かすのは慣れてから |
| 場所 | 開店前の店内、バックヤード、店先の通り、車 | お客さまのいない時間に。1回は5〜10分。ワクチン前は抱っこで |
| 触られること | 頭、背中、足先、耳、口、抱き上げ | 飼い主が先に。1か所を1秒触っておやつ、を毎日(次の章) |
見せ方の作法は、犬が自分から近づく・良いことと結びつける・怖がったら距離を戻す、の3つです。怖がっているものに「良いことが起きる」結びつきを作ることは、恐怖や不安をやわらげるうえで欠かせません。いきなり浴びせる方法は避け、犬がいつでも安全だと感じられ、練習から離れられるようにしておきます。お客さまが多い時間にいきなり店に出すのは、この「浴びせる」そのものです。開店前の静かな店で、1人ずつ、から始めてください。月齢ごとの進め方と、人・犬・物・音の一覧は犬の社会化トレーニングの記事に、社会化期を過ぎた成犬の慣らし方は社会化不足の記事に分けています。成犬から看板犬にする場合も、順番は同じで、時間が長くなるだけです。
土台②|触られる練習と、「待て」「マット」「ハウス」
社会化と並行して、店で毎日使う4つの行動を、家の中で作ります。どれも新しい練習ではなく、ふつうのしつけの組み合わせです。
触られる練習|「触られると良いことが起きる」を先に作る
お客さまは、犬が嫌がる触り方をします。頭の上から手を伸ばす、いきなり抱き上げる、子どもは耳やしっぽをつかむ。そうなる前に、飼い主が「思いがけない触り方」を少しずつ良いことの合図にしておきます。軽く触っておやつ、少しだけ耳を持っておやつ、軽くつまんでおやつ、と少しずつ強くしていきます。目的は犬を困らせることではなく、想定外の触られ方をしたときに唸ったり噛んだりせず、飼い主のほうを見てご褒美を待つようにしておくことです。なでる場所と嫌がる場所の見分け方は犬の撫で方の記事に書いています。
「待て」と「マット」|決めた場所で、お客さまが帰るまで
看板犬がいちばん長く使うのは、この2つです。職場に犬を連れていくときに勧められているのが「決めた寝床(マット)へ行って、そこでくつろぐ」を教えておくことで、合図が出るまでそこで休めるようにしておくと安心です。家の中で、マットの上に前足が乗ったらおやつ→マットの上で伏せたらおやつ→伏せている時間を延ばす→飼い主が離れる、の順に作り、店ではレジやカウンターの後ろの、お客さまの動線から外れた場所にそのマットを置きます。時間→気を散らすもの→距離の順に上げる「待て」の作り方は「待て」の教え方の記事に、マットへ行く芸(タッチの応用)は犬の芸一覧の記事に書いています。
「ハウス」|店の中の逃げ場。罰には使わない
クレート(ハウス)は、看板犬にとって「仕事を降りられる場所」です。監督できないときは、子どもの入らない安全な場所(クレートなど)に入れ、罰ではなく静かな時間にしてください。そして「クレートの中の犬を邪魔しない」を、子どもの決まりにしておきます。店では、バックヤードか店の奥の静かな場所に扉を開けたまま置き、犬が自分から入ったら追いかけない・お客さまに手を入れさせない、を店の決まりにしてください。クレートに慣らす順番はクレートトレーニングの記事に分けています。「ハウス」と「マット」と「待て」の3つが家で入っていれば、店に出しても困ることはほとんどありません。逆に、この3つが無いまま店に出すと、犬は「どこにいればいいか分からない」状態でお客さまを迎えることになります。
犬の側の負担|看板犬にも休憩と逃げ場が要ります
ここが、看板犬でいちばん見落とされるところです。お客さまが来るたびに起きて、なでられて、また寝る。それが1日中続くと、犬は休めません。犬は1日の半分ほどを眠り、3割は起きているがくつろいでいて、活動しているのは2割ほどです。営業時間が8時間なら、そのうち犬が「起きて人と関わる」に使えるのは、犬の側の都合で言えば2時間に満たない、ということです。
休めていない犬は、サインを出します。ペット保険会社のアニコム損害保険の調査では、犬のストレスサインとして、あくび、鼻や口の周りを舐める、身震い、体の硬直、うろうろ・きょろきょろと落ち着きがない、そして家具の奥や人目につきづらい場所で過ごすことが多くなる、が挙げられています。同じ調査は、ストレスの原因として、慣れない場所や大きな音といった不安や恐怖、音などの物理的なストレス、留守番が多く退屈といった欲求不満を並べています。店は、この全部が同時にある場所です。「なでられている最中にあくびをする」「お客さまが来ると棚の陰に入る」は、慣れていないのではなく、疲れているサインのことがあります。
| 決めておくこと | やり方 | 理由 |
|---|---|---|
| 店に出す時間を区切る | 1日中は出さない。「午前中だけ」「昼のピークは奥で休む」のように、犬が寝られる時間を営業時間の中に作る | 犬は1日の半分を眠る。忙しい日は店に連れてこない、も一つの工夫 |
| 逃げ場を作る | 扉を開けたクレートか、ゲートで区切った一角を、お客さまの入れない場所に。犬がそこへ行ったら誰も触らない | クレートの中の犬は邪魔しない。人目につきづらい場所で過ごしたがるのもストレスのサイン=逃げ場が無いと、隠れる場所を自分で探す |
| 触られる回数を管理する | 「今は休んでいます」と伝える札やゲート。混んでいる時間は触らせない | 触られること自体は練習で平気になるが、回数は犬が決められない |
| 排泄と散歩の時間を先に決める | 開店前・昼・閉店後。店の中で排泄させない | 成犬でも、排泄を我慢できるのは6〜8時間が上限 |
| 温度 | 店先の直射日光、自動ドアの風、冬の床。夏はエアコンの効いた場所に居場所を | 犬は汗で体温を下げられず、口を開けた速い呼吸で熱を逃がしている |
| 相性の悪いお客さまが来たら | ゲートの内側かクレートへ。「今日はお休みです」で済ませる | うまくいかなければ、家に帰すという判断も大切 |
看板犬として長く続いている犬は、「人が好きな犬」ではなく、「休み方を店の人が決めている犬」です。人が好きな子ほど、疲れていても人のところへ行ってしまいます。休ませるのは犬ではなく、店の側の仕事です。
店の側で決めておくこと|法律・衛生・来客への案内
看板犬は、犬のしつけだけでは成り立ちません。店には、犬が苦手なお客さまも、犬アレルギーのお客さまも来ます。犬を店に置く前に確かめておきたいのは、同僚やお客さまにアレルギーや犬への恐怖がある人がいるかもしれないこと、複数の犬がいれば犬どうしが合わないこともあること、そして1回の咬傷事故が大きな責任につながり得るので、受け入れる方針を作るなら弁護士にも相談しておくと安心、ということです。日本の店に当てはめると、次の4つを先に決めておくことになります。
法律|「ふれあいを売る」なら動物取扱業。判断は自治体に
環境省の説明では、業として動物の「展示」を営利目的で行う場合は、営業を始める前に第一種動物取扱業の登録が要り、この「展示」には「動物とのふれあいの提供」が含まれます(例として、動物ふれあいパークや、ふれあいを目的とするアニマルセラピー業者が挙げられています)。犬と触れ合うこと自体を商品にする店(犬カフェのような形)はここに当たります。飼い主が店で飼っている犬が「ふれあいの提供」に当たるかどうかは、店の形と自治体の判断で変わるので、迎える前に管轄の都道府県か政令市の動物愛護管理の窓口に確認してください。環境省の説明も、申請の手続きは管轄の自治体に問い合わせるよう書いています。
もう一つは、事故が起きたときの責任です。民法718条は、動物の占有者はその動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う、と定めています。相当の注意をもって管理していたときは除く、という但し書きはありますが、店で知らない人が次々に触る状況では「相当の注意」の中身が家庭より重くなると考えてください。店の火災保険や賠償責任保険が、犬が他人に与えた損害を対象にしているかを、開店前に確かめておくことをおすすめします。
衛生|飲食店なら、営業許可を取る保健所に先に聞く
「飲食店に犬を置いていいか」は、国の食品衛生法施行規則を読むと、「ねずみ及び昆虫等の侵入を防止」する設備を持つことは書かれていますが、犬や猫について書いた条文はありません。つまり犬を客席に入れられるかどうかは、営業許可を出す保健所の運用で決まります。調理場に動物を入れないのは共通ですが、客席・テラス・物販の店で何が認められるかは自治体で違うので、営業許可を取る保健所に、看板犬を置く計画を先に伝えて確かめてください。あとから「知らなかった」で犬を手放すことになるのが、いちばん避けたい形です。
来客への案内|触る前に聞く・子ども・他の犬
お客さまの側にも、決まりを伝えます。咬傷を防ぐために大切な最初の一歩は「触っていいですか」と必ず聞くことで、寝ている犬・食べている犬をかまわない、犬に乗らない・座らない、耳やしっぽを引っぱらない、そして「すべての犬は噛む可能性がある(歯があるから)」「犬が安全で決して噛まないと思い込まない」と続きます。看板犬は「触っていい犬」と見られやすいぶん、この案内が要ります。
| 伝えること | 店での形 | 理由 |
|---|---|---|
| 触る前に一声かけてもらう | 「なでる前に声をかけてください」の札。店の人が「今は大丈夫です」「休んでいます」と答える | 触っていいかは犬ではなく店の人が決める。休憩中に触られないため |
| 触り方 | 頭の上からではなく、横から胸や背中を。抱き上げない | 頭上からの手と抱き上げは、犬が嫌がりやすい触り方 |
| 子ども | 大人と一緒に。走らない・叫ばない・寝ている犬と食べている犬に触らない | 走る・叫ぶは犬が追いたくなる動き。子どもの顔は犬の口の高さにある。詳しくは犬と子どもの記事へ |
| お客さまの犬 | 店の犬はゲートの内側かクレートへ。同じ床で自由にさせない | 犬どうしが合わないことがあり、店内の衝突は危険で、お客さまとの関係も損なう |
| 食べ物 | お客さまからおやつをもらわない | アレルギーと、体重と、「お客さまに近づけばもらえる」の学習を防ぐ |
向く犬・向かない犬|犬種より「その子」で決めます
「看板犬に向いている犬種は」「柴犬は看板犬に向くか」で調べて来られる方へ。犬の行動を大規模に調べた2022年の研究(サイエンス誌)では、犬種で説明できるのは個体ごとの行動の違いのうち約9%で、犬種による差より同じ犬種の中の差のほうが大きい、と報告されています。「この犬種なら看板犬になる」も「この犬種は無理」も、同じ犬種の中の差のほうが大きい、というのが研究の答えです。うちで紹介しているトイプードル、チワワ、ミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、マルチーズ、シーズーなどの小型犬にも、人を見ると寄っていく子と、後ろから様子を見る子がいます。
犬種で決められるのは、体の大きさと手入れのほうです。小型犬はカウンターの後ろやゲートの内側に居場所を作りやすく、抱いて移動できる一方、体が小さいぶん、子どもに抱き上げられて落とされる事故と、足元で踏まれる事故に気をつけます。犬種ではなく、次の3つで「その子」を見てください。
| 見るところ | 向いている | 今は向いていない(先にやることがある) |
|---|---|---|
| 知らない人への反応 | 自分から近づいて、においを嗅いで、離れる。または気にしない | 体を低くする、しっぽを巻き込む、後ずさる、吠えながら近づく=こわさが先。距離から慣らす |
| 触られたとき | 力が抜けている。触られても飼い主のほうを見る | 固まる、あくび、鼻を舐める、口を当てる=触られる練習が先 |
| 音と物 | 驚いても、数秒で元に戻る | 驚いたあと隠れて出てこない、震える=音への慣らしが先 |
| 休み方 | 人がいても、自分からマットやクレートに入って寝る | 人がいる間ずっと起きている、寝ても物音で起きる=店に出す時間を短く |
| 年齢と体 | 成犬。健康で、暑さと寒さに対策ができている | 社会化の途中の子犬(お客さまに浴びせない)、シニアで通院中、短頭種の夏、膝や腰に持病 |
右の列に当たる子を、無理に店に出さないでください。看板犬は「人が好きな犬」の仕事に見えますが、実際には「人がいても休める犬」の仕事です。こわがりの子は、店に出すほど嫌な経験を積みます。家庭犬として、来客のときだけ静かにしていられれば、それで十分です。
うまくいかないとき|吠える・怖がる・落ち着かない、と、やってはいけないこと
看板犬を目指して、つまずくのは決まって3つです。原因で分けると、やることが変わります。
| 困っていること | 犬の様子で分ける | やること |
|---|---|---|
| お客さまに吠える | 体が前に出て、しっぽが上がり、近づきたがる=興奮・要求/体が引けて、しっぽが下がり、吠えては引く=こわさ | 興奮なら、ドアが開く音で「マットへ行くと良いことが起きる」を作る(インターホンに吠える犬の記事)。こわさなら、開店前に1人ずつ、距離から。吠えの種類の見分けは吠え方の種類の記事へ |
| お客さまを怖がる。特定の人(男性・子ども・帽子)だけ怖がる | その人が来ると隠れる、固まる、後ずさる | その種類の人を「怖くない距離」から見せて、見えている間おやつ。近づくのは犬の役目。詳しくは男性を怖がる犬の記事と社会化不足の記事へ |
| 落ち着かない。うろうろする、お客さまに飛びつく | 寝ていない。散歩や遊びの前に店に出している | 店に出す前に散歩と遊びで発散。店に出す時間を短く。マットで休む時間を決める。飛びつきは「四つ足が床についているときだけ良いことが起きる」で |
| 前はできていたのに、急にできなくなった | 思春期に入った/来客が増えた/店が忙しくなった | 思春期なら家の中の簡単な段階に戻す。環境が変わったなら、店に出す時間と触られる回数を減らして、休ませる |
そして、やってはいけないことです。アメリカの獣医師の学会(米国獣医行動学会)の2021年の見解では、力や痛みや不快に頼る方法はしつけにも問題行動の対応にも使うべきではなく、罰を使った方法は攻撃的な行動や不安に関わる行動と関連することが分かっています。お客さまの前で叱られた犬は、お客さまを「叱られる合図」として覚えます。
- 吠えた・逃げたから叱る、押さえる……不安や攻撃の側に、犬の気持ちが寄っていきます。吠える前の距離に戻すのが対応です
- 怖がっている犬を抱いて、お客さまに触らせる……逃げ場を奪ったうえで浴びせる方法です。犬が自分で近づくまで待ちます。抱かれて固まっているのは「慣れた」ではなく「動けない」です
- 混んでいる日にいきなりデビューさせる……いきなり浴びせる方法は避けてください。開店前の静かな店で、1人ずつ
- 1日中、店に出しっぱなしにする……犬は1日の半分を眠ります。休憩と逃げ場が無い看板犬は、疲れから吠える・隠れる・噛むに進みます
- 「うちの子は噛まないから」でお客さまに任せる……すべての犬は噛む可能性があります。触っていいかは店の人が決めます
- お客さまからのおやつを許す……近づけばもらえる、を覚えて飛びつきと催促に変わります。体重と食べ物のアレルギーの管理もできなくなります
- 子どもと2人きりにする……子どもの顔は犬の口の高さにあります。必ず大人と一緒に
看板犬は、犬と店の両方の準備がそろって初めて成り立ちます。「4つの行動が家で入っているか」「休憩と逃げ場が店にあるか」「法律と衛生を確かめたか」「来客への案内があるか」。この4つがそろえば、犬種を問わず、その子はお店で人を迎えられます。迎える前の準備と手続きは犬の飼い方の記事にまとめています。
店に出してみて、吠えが止まらない、怖がって隠れる、どこまで出してよいか分からない。そういうときは、ひとりで抱え込まずにドッグトレーナーへご相談ください。フローエンスはブリーダー直販で、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。「店のどこに居場所があって、1日何時間出していて、どんな人に吠えるか」が分かっていると、相談がその場で具体的になります。
よくある質問
看板犬とはどんな犬のことですか?
お店や事務所、施設で、お客さまや来客を迎える犬のことです。法律や団体が決めた言葉ではないので、資格も定義もありません。英語にも決まった訳語は無く、海外では職場にいる犬を「オフィスドッグ」のように呼ぶこともあります。決まりが無い代わりに、知らない人が来ても吠えない・触られても平気・決めた場所で待てる・他の犬や子どもに落ち着いていられる、の4つの行動が要ります。この4つは、「地域で歓迎されるためにすべての犬が持っているべき行動」として作られた10項目のテスト(グッド・シチズン)の中身とほぼ重なります。
看板犬に向いている犬種はありますか?柴犬はどうですか?
犬種では決まりません。犬の行動を大規模に調べた2022年の研究では、犬種で説明できるのは個体ごとの行動の違いのうち約9%で、犬種による差より同じ犬種の中の差のほうが大きいと報告されています。柴犬でもトイプードルでも、人を見ると寄っていく子と、後ろから様子を見る子がいます。犬種で決められるのは体の大きさと手入れのほうで、小型犬はカウンターの後ろやゲートの内側に居場所を作りやすい一方、子どもに抱き上げられて落とされる事故と足元で踏まれる事故に気をつけます。見るのは犬種ではなく「その子」で、知らない人への反応、触られたときの様子、音への戻り、人がいても休めるか、で決めてください。
看板犬にするための、しつけの順番を教えてください。
土台は社会化です。環境省の資料で社会化期とされる生後3〜16週のあいだに、人(性別・年齢・帽子・制服)、音(ドアチャイム・レジ・掃除機)、物(台車・段ボール・傘)、場所(開店前の店内)を、犬が自分から近づく形で良いことと結びつけます。並行して、飼い主が先に「触られると良いことが起きる」を作り(軽く触っておやつ、耳を持っておやつ)、家の中で「待て」「マットで休む」「ハウス」を入れます。店に出すのは、この3つが家でできてからで、最初は開店前の静かな店で1人ずつ。お客さまが多い時間にいきなり出すのは、獣医行動学で避けるべきとされる「浴びせる」方法です。
看板犬は犬にとってストレスになりませんか?
休ませ方を店の側が決めていれば、なります・なりませんの両方があり得ます。犬は1日の半分ほどを眠り、3割はくつろぎ、活動しているのは2割ほどです。お客さまが来るたびに起こされる1日は、犬には休めない1日です。ストレスサイン(あくび、鼻を舐める、身震い、体の硬直、人目につかない場所にこもる)が出ていたら、店に出す時間を区切り、扉を開けたクレートかゲートで区切った一角を「誰も触らない逃げ場」として用意してください。看板犬は「人が好きな犬」の仕事に見えますが、実際には「人がいても休める犬」の仕事です。
お店に看板犬を置くのに、届け出や許可は要りますか?
店の形によります。環境省の説明では、業として動物の「展示」を営利目的で行う場合は第一種動物取扱業の登録が要り、展示には「動物とのふれあいの提供」が含まれます。犬と触れ合うこと自体を商品にする店はここに当たり、飼っている犬を店に置く形が当たるかどうかは自治体の判断で変わるので、迎える前に管轄の都道府県か政令市の動物愛護管理の窓口に確かめてください。飲食店の場合、国の食品衛生法施行規則に犬についての条文は無く、客席に入れられるかは営業許可を出す保健所の運用で決まるので、こちらも先に確認が要ります。事故の責任は民法718条で占有者にあるので、賠償責任保険の対象も確かめておいてください。
お客さまに、看板犬とどう接してもらえばいいですか?
「触る前に一声かけてください」を店の決まりにします。咬傷を防ぐ最初の一歩は「触っていいですか」と必ず聞くことで、寝ている犬・食べている犬をかまわない、耳やしっぽを引っぱらない、すべての犬は噛む可能性がある、と続きます。触っていいかは犬ではなく店の人が決め、休んでいるときは「今は休んでいます」で断ります。頭の上からではなく横から胸や背中を、抱き上げない、子どもは大人と一緒に走らず叫ばず、お客さまの犬とは同じ床で自由にさせない、おやつはもらわない。この5つを札や口頭で伝えておくと、犬もお客さまも守れます。
看板犬にしたいのに、お客さまに吠えてしまいます。
吠え方で分けます。体が前に出てしっぽが上がり近づきたがるなら興奮で、ドアが開く音を「マットへ行くと良いことが起きる」合図に作り替えます。体が引けてしっぽが下がり、吠えては引くならこわさで、開店前の静かな店で1人ずつ、怖がらない距離から良いことと結びつけて縮めます。どちらも叱らないでください。罰を使った方法は、不安や攻撃に関わる行動と結びつくことが分かっています。お客さまの前で叱られた犬は、お客さまを叱られる合図として覚えます。混んでいる日にいきなり出さない、1日中出しっぱなしにしない、も同じくらい効きます。
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まとめ
看板犬に資格や決まった犬種はなく、要るのは「知らない人が来ても吠えない」「触られても平気」「決めた場所で待てる」「他の犬や子どもに落ち着いていられる」の4つの行動です。土台は社会化期(生後3〜16週)からの社会化と、飼い主が先に作る「触られると良いことが起きる」、家の中で入れる「待て」「マット」「ハウス」で、店に出すのは開店前の静かな時間に1人ずつからです。犬は1日の半分を眠るので、店に出す時間を区切り、誰も触らない逃げ場を作り、ストレスサインが出たら休ませます。店の側は、動物取扱業の登録が要るかを自治体に、飲食店なら保健所に先に確かめ、賠償責任保険を確認し、来客には「触る前に聞く」「子どもは大人と一緒に」「おやつはあげない」を伝えます。犬種では決まらず、こわがりの子に無理をさせないこと、叱らないことが、看板犬を長く続けるいちばんの近道です。
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