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ドッグトレーナーに相談するために伝えるべき内容とは?具体例とポイント
公開日:2025年4月23日(水) 更新日:2026年10月6日(火) 犬の育て方
この記事の要点
ドッグトレーナーに伝えるのは6つです。①困っている行動(いつ・どこで・誰に・何回・どのくらい・直前に何があったか・そのあと何が起きたか)②これまでに試したことと、その結果③愛犬の基本情報と健康・服薬④1日の暮らし⑤目標⑥取り組める時間と家族の体制。そして相談より先に、動物病院で体を診てもらってください。行動の相談として専門医に紹介されてきた犬100件の症例を見直した2020年の総説では、控えめに見積もって約3分の1に何らかの痛みを伴う状態が関わっており、場合によっては80%近くに及ぶと報告されています。行動は「吠える」ではなく「インターホンが鳴ると、玄関の前で低い声で20秒ほど吠え、私が抱き上げる」と書くと、その日から練習が決まります。相談の前の3日だけ、日時・場所・直前・行動・そのあと・強さの6列で記録を取り、動画は起きてからではなく起きる前から回してください。
「ドッグトレーナーに相談したいけれど、何をどこまで話せばいいのか分からない」。そう思ってこのページに来られた飼い主さまへ。相談の質を決めるのは、話のうまさではなく、相談に行く前に手元にある情報の量です。トレーナーは、その場で見せてもらえない行動を、飼い主さまの言葉からしか知ることができません。この記事は、伝える内容を6つに分け、それぞれ「何を書くか」「よくある書き方と、そのままでは伝わらない理由」を、実際に書き写せる形で並べます。
先に結論を書きます。伝えるのは、①困っている行動(いつ・どこで・誰に・何回・どのくらい)②これまでに試したこと③愛犬の基本情報と健康④1日の暮らし⑤目標⑥取り組める時間と家族の体制、の6つ。そして相談の前に、まず動物病院で体を診てもらってください。行動の相談として専門医に紹介されてきた犬の症例を見直した2020年の総説では、控えめに見積もっても約3分の1に何らかの痛みを伴う状態が関わっており、場合によっては80%近くに及ぶと報告されています。痛みが原因の行動は、しつけの方法をいくら変えても直りません。この記事では、相談の前に確かめること、6つの内容の書き方、3日分の記録と動画の撮り方、当日の持ち物までを順に書きます。いつ相談するかの判断はドッグトレーナーに相談するタイミングの記事に、しつけ教室そのものの選び方はしつけ教室の選び方の記事に分けているので、ここは「何を伝えるか」だけに絞ります。
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順番を間違えると、相談そのものが無駄になります。行動の相談として専門医に紹介されてきた犬100件の症例を著者らが見直した2020年の総説(Mills ほか・Animals誌)は、控えめに見積もって約3分の1の症例に何らかの痛みを伴う状態が関わっており、場合によっては80%近くに及ぶと報告しています。関わっていたのは筋骨格系だけではなく、痛みを伴う消化器や皮膚の病気も問題行動に関わることがよくあります。同じ総説は、歩き方の異常や説明のつかない行動の兆候について、その犬種によく見られるものであっても軽く扱うべきではないと書いています。これは「行動の相談に来た犬」の話で、家庭の犬全体の割合ではありませんが、相談に行く前に動物病院を通しておく理由としては十分です。
次の当てはまる項目が1つでもあれば、トレーナーより先に、またはトレーナーと並行して、かかりつけの獣医師に診てもらってください。米国の獣医行動学の専門医が書いたVCAアニマルホスピタルの解説も、行動の強さが心配なとき、自分や犬や他の人・他の動物の安全が心配なとき、体の不調や痛みの兆候があるとき、行動が急に変わったときは、獣医行動学の専門医(DACVB)か認定応用動物行動学者(CAAB)から始めるのがよいとしています。日本にはこの資格がそのまま存在しないので、実際にはかかりつけの獣医師に相談し、必要なら行動診療科のある病院を紹介してもらう形になります。
- 今までしなかったことを、急にするようになった(急な変化)
- 触ると怒る場所がある。抱き上げたとき、階段のとき、特定の姿勢のときだけ嫌がる
- 歩き方が変わった。段差を避けるようになった。座り方が崩れる
- 粗相が増えた。飲む量・食べる量・眠る時間が変わった
- 皮膚をなめ続ける・掻き続ける。下痢や嘔吐が続いている
- 唸る・歯を見せる・噛む。人や犬にけがをさせたことがある
- シニア期に入ってから、夜に落ち着かない・同じところを回る
動物病院にかかったときの記録(診断名・処方された薬・いつからいつまで飲んだか)は、そのままトレーナーへの資料になります。「病院では異常なしと言われた」も立派な情報なので、必ず伝えてください。噛みがある場合の当面の安全の作り方は犬が噛む理由と直し方の記事にまとめています。
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伝えることは6つ|一覧と、そのままでは伝わらない書き方
伝える内容は6つに分けられます。多く見えますが、ほとんどはすでに飼い主さまの頭の中にあるもので、書き出すだけです。表の右の列は、実際によくある書き方と、それだとトレーナーが次の一手を決められない理由です。
| 伝えること | なぜ必要か | よくある書き方 → 書き足すこと |
|---|---|---|
| ①困っている行動 | いつ・どこで・誰に・何回起きるかが分かって初めて、練習する場面を決められる | 「吠えて困っています」→ 何に向かって、家のどこで、1日に何回、どのくらい続くか |
| ②これまでに試したこと | 同じことを繰り返さないため。悪化した方法は、犬の学習として残っている | 「いろいろ試しました」→ 具体的に何を、いつ、どのくらいの期間、結果はどうだったか |
| ③愛犬の基本情報と健康 | 練習の強さと回数を決める材料。痛みや薬は行動に直接効く | 「3歳の男の子です」→ 避妊去勢の有無と時期、持病、飲んでいる薬、迎えた時期と経緯 |
| ④1日の暮らし | 問題が起きる時間帯と、犬が退屈・過剰な興奮のどちらに寄っているかが見える | 「散歩は行っています」→ 何時に何分、どこを、誰と。食事とおやつ、留守番の時間 |
| ⑤目標 | 「やめさせる」だけだと、犬に教えることが決まらない | 「吠えないでほしい」→ 来客のとき、代わりに何をしていてほしいか |
| ⑥時間と家族の体制 | 続けられない計画を立てても意味がない。家族で違う対応をすると犬が混乱する | 「頑張ります」→ 1日に何分、週に何日できるか。家族の誰が何をするか |
この6つを、A4の紙1枚か、スマートフォンのメモ1画面に収めておくと、相談の最初の5分でトレーナーが全体像をつかめます。紙は相談のあと、そのまま練習の記録用紙にもなります。
困っている行動の書き方|いつ・どこで・誰に・何回・どのくらい
いちばん大事なのがここです。行動の相談では、「その行動の直前に何があったか」と「その行動のあと何が起きたか」の2つが、原因を絞る手がかりになります。前が分かれば引き金が、あとが分かれば、その行動が何によって続いているかが見えるからです。たとえばインターホンで吠える犬について、AKCの解説は、吠える→飼い主が大声を出す→犬はさらに吠える、という連鎖を挙げ、犬は飼い主の言葉の意味ではなく「自分が吠えると相手も声を出す」という結果を学んでいると説明しています。「あと何が起きたか」を書いておくと、この種の取り違えがその場で見つかります。
| 書く項目 | そのままでは伝わらない例 | 伝わる例 |
|---|---|---|
| 何をするか | 吠える/噛む/飛びつく | 低い声で連続して吠える。手をくわえて引っ張る。前足を胸につけて跳ぶ |
| いつから | 前から | 2月ごろから。引っ越しの翌週から。去勢のあとから |
| どこで | 家で | 玄関のドアの前でだけ。ソファの上にいるときだけ。散歩の決まった角で |
| 誰・何に | 人に | 初めて来た大人の男性に。小学生くらいの子どもに。自転車に。黒い大型犬に |
| 直前に何があったか | (書いていない) | インターホンが鳴った。私が立ち上がった。他の犬が正面から近づいた |
| そのあと何が起きたか | (書いていない) | 抱き上げた。おやつをあげて静かにさせた。相手が離れていった |
| 回数と長さ | よく | 1日3〜5回。1回につき10〜30秒。来客のあった日だけ |
| 強さ | 噛む | 歯が当たるだけで傷は無い/赤い跡が残る/出血した(何針縫ったか) |
| 起きない場面 | (書いていない) | 夫が在宅のときは吠えない。散歩の帰り道では起きない |
いちばん下の「起きない場面」を書ける飼い主さまは多くありません。しかし、起きない条件は、そのまま練習の出発点になります。吠えない距離、唸らない持ち方、落ち着いていられる時間帯。そこから少しずつ広げるのが練習の形なので、「できているとき」を1つでも書いておいてください。噛みがある場合は、強さの欄をあいまいにしないでください。攻撃の場面は1回起きるたびに犬がそれを学び、多くの場合は強まります。治療の最初の一歩は「次の場面を起こさせないこと」です。強さが正確に伝わるほど、当面避けるべき場面の線引きがはっきりします。
記録のつけ方|3日分の表と、動画の撮り方
思い出して書くと、印象の強い日だけが残ります。相談の前の3日でいいので、次の形で書き留めてください。3日で足りなければ1週間。書くのは、その行動が出た回だけで構いません。
| 日時 | 場所 | 直前にあったこと | 犬がしたこと | そのあと | 強さ |
|---|---|---|---|---|---|
| 9/1 7:20 | 玄関 | 宅配のインターホン | 20秒ほど吠え続けた | 私が「静かに」と言い、抱き上げた | 強い |
| 9/1 19:05 | リビング | 夫が帰宅 | 足に飛びついた | 夫がなでた | 中 |
| 9/2 15:40 | 散歩・公園前 | 正面から犬が来た | 立ち止まって動かなくなった | 抱き上げて通り過ぎた | 弱い |
動画があると、伝わる量がまったく違います。撮り方には3つだけ決まりがあります。1つ、起きてからではなく、起きる前から回す。吠え始めてから撮ると、いちばん知りたい「直前」が映りません。2つ、犬だけでなく部屋全体と、そこにいる人の位置が入るように撮る。誰がどこにいたかが行動の意味を変えます。3つ、わざと起こさせない。「トレーナーに見せるために、もう一度やらせてみる」は、犬にその行動をもう一度練習させることになり、噛みや唸りでは危険でもあります。
留守番中の行動や、人がそばにいると出ない行動は、手で撮ることができません。据え置きのカメラを使うと、飼い主さまが見ていない時間に何が起きているかが分かります。機種の選び方はおすすめペットカメラの記事にまとめています。留守番中の破壊・吠え・粗相が続いているなら、犬の分離不安の記事もあわせてお読みください。
愛犬の基本情報と暮らし|健康・服薬・1日の流れ・家族
行動は、犬の体と、その犬が過ごしている環境の上に出てきます。トレーナーが練習の強さ・時間・回数を決めるのに、次の情報が要ります。
| 区分 | 書いておくこと |
|---|---|
| 基本 | 犬種・年齢(生年月日)・性別・体重。避妊去勢の有無と、受けた時期 |
| 迎えた経緯 | いつ、どこから迎えたか。生後何か月だったか。前の飼い主がいたか |
| 健康 | 持病・過去のけがと手術・今飲んでいる薬とサプリ・直近の健康診断の結果 |
| 食事 | フードの種類と1日の回数・量。おやつの種類と、1日に何回、何のために渡しているか |
| 運動 | 散歩は何時に何分、どこを、誰と。においを嗅がせる時間があるか。遊びの種類と長さ |
| 休息 | 1日に何時間くらい寝ているか。寝る場所はどこか。誰にも邪魔されない場所があるか |
| 留守番 | 1日に何時間。どこで(フリー・サークル・クレート)。出かける前と帰宅後にすること |
| 家族 | 同居の人数と年齢層。誰が世話をしているか。同居の他のペットと、その関係 |
| 先住・同居犬 | いつから一緒か。食事や寝場所を分けているか。けんかになったことがあるか |
ここでひとつだけお願いがあります。「よい飼い主」に見えるように書かないでください。散歩を30分と書いて実際は10分だと、その30分を前提にした計画が立ち、うまくいかない理由が誰にも分からなくなります。おやつの回数も同じです。忙しくて散歩に行けない日が続いている、おやつを1日に何度も渡してしまう、家族の1人だけがテーブルから食べ物を渡している——そういうことこそ、行動の理由そのものであることがよくあります。同じ団体も、飼い主が意図せずその行動を強めていることがあるとし、家族の中で対応が割れていること(ある人はソファに乗せ、別の人は下ろす/ある人は飛びつきを許し、別の人は止める)は犬を混乱させて練習の効果を打ち消す、と書いています。正直に書くほど、早く終わります。
これまでに試したこと|うまくいかなかったことこそ伝える
「試したけれど効かなかった」は、失敗の報告ではなく、その方法をもう一度勧めなくて済むという情報です。書くのは4つ。何を(方法・道具)、いつから、どのくらいの期間、結果はどうだったか(変わらない・よくなった・悪化した)。出どころも書いてください。動画で見た、知り合いに教わった、前に飼っていた犬で同じようにした、しつけ教室で教わった。出どころが分かると、同じ考え方に基づく別の方法をまとめて外せます。
とくに正直に伝えていただきたいのが、叱った・押さえつけた・音や衝撃で止めた類の方法です。米国獣医行動学会(AVSAB)は2021年の見解で、力・痛み・精神的または身体的な不快に頼る方法は、しつけにも問題行動の治療にも使うべきではないとし、罰を使った方法は人や他の犬への攻撃的な行動、回避や興奮しやすさといった不安に関わる行動と関連が見られると書いています。効果の面でも、ご褒美だけで育てた犬がいちばん指示に従い、罰だけがいちばん低かったという研究を挙げています。つまり、そうした方法を試したことがある場合、その経験が今の行動に残っている可能性があるということです。隠されると、トレーナーは「なぜこの犬は手が近づくと固まるのか」が分からないまま練習を組むことになります。責める話ではありません。多くの飼い主さまが、よかれと思って一度は試しています。
あわせて、使ったことのある道具も書いてください。首輪・ハーネス・ヘッドハルター・口輪・ロングリード・サークル・クレート、そして電気やスプレーの出る首輪。トレーナーを選ぶときは、痛みを与える・力で抑える必要があると言う人(プロングカラーや電気首輪を勧める人)、犬を「支配する」「服従させる」必要があると言う人は避けてください。古い考え方です。見学や体験の受け入れがあるかどうかも、選ぶときの目安になります。
目標の書き方|「やめさせたい」を「代わりにこうしてほしい」に
「吠えないでほしい」「噛まないでほしい」だけだと、犬に教える中身が決まりません。犬は「しない」を練習できないからです。代わりに何をしていてほしいかまで書くと、その日から練習が始められます。
| やめさせたい | 代わりにこうしてほしい(目標) |
|---|---|
| インターホンで吠える | インターホンが鳴ったら、玄関から離れたベッドへ行って座っていてほしい |
| 来客に飛びつく | お客さまが入ってくるあいだ、4本足を床につけたまま待っていてほしい |
| 散歩で引っ張る | リードがたるんだ状態で、私の横を歩いてほしい |
| おもちゃを取ると唸る | おもちゃを持っているときに近づいても、体をこわばらせずにいてほしい |
| 留守番で吠える | 私が出かけたあと、自分の場所で横になって過ごしてほしい |
目標は、生活の場面とセットで書くのがこつです。「落ち着いた犬になってほしい」ではなく「来客のあいだ落ち着いていてほしい」。場面が決まれば、練習する場所と回数が決まります。あわせて、いつまでにどうなっていたいか(引っ越しの日まで、赤ちゃんが生まれる月まで、帰省の前まで)も書いてください。期限があるなら、その期限に間に合う計画に組み替えられます。
最後に、期待の置きどころについて。どんなにしつけや行動の治療をしても、犬を「犬でないもの」にすることはできません。掘る・かじる・吠えるは、ある程度は正常な行動です。そして結果は、飼い主が正しい知識を持ち、時間と根気を注ぐかどうかで決まります。目標は「ゼロにする」ではなく、「暮らせる形にする」で立ててください。
相談の当日|持ち物と、その場で決めておくこと
準備した紙を持って行くだけでほぼ足ります。当日に持って行くものと、帰る前に決めておくことを並べます。
- 6つをまとめた紙1枚……相談の最初に渡します。口頭だけだと、話が困りごとの1つ目で止まります
- 3日分の記録……日時・場所・直前・行動・そのあと・強さ
- 動画……起きる前から回したもの。数本でよく、長さは各1分程度
- 病院の記録……診断名・処方された薬・検査の結果。「異常なし」も含めて
- いま使っている道具……首輪・ハーネス・リード・口輪。実物を見てもらうのが早いです
- いつものおやつ……犬が何にどのくらい反応するかを、その場で見てもらえます
- 家族の予定……誰が何時に家にいるか。練習を割り振るのに使います
帰る前に、次の3つをその場で決めてください。①今日から始める練習は何と何か(多くて2つまで)②いつ・1日に何回・何分やるか③次に連絡するのはいつか、何が起きたときか。この3つが決まらないまま帰ると、聞いた内容を思い出せるうちに実行できず、翌週には元に戻ります。あわせて、当面避ける場面(噛みや唸りがあるなら、その引き金になる場面)も、その日のうちに決めておいてください。
相談のあとは、同じ記録用紙を続けてください。1日に何回だったものが何回になったか、強さが変わったか。数えていないと、よくなっていても気づけません。行動は一直線には減らず、一度増えてから減ることもあります。記録があれば、それが「悪化」ではなく途中経過だと分かります。
フローエンスはブリーダー直販で、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。この記事の6つを書いた紙をお手元に用意していただければ、専門トレーナーのトレーナーダイヤルで、その場で次にやることまでお伝えできます。「何を伝えればいいか分からない」という状態のままでも構いません。困っている行動を1つ挙げていただければ、こちらから順に伺います。
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犬の飼い方|初心者が迎える前に知ること・手続き・最初の1週間
よくある質問
ドッグトレーナーに相談するとき、何を伝えればいいですか?
6つです。①困っている行動(何をするか、いつから、どこで、誰や何に向かって、直前に何があったか、そのあと何が起きたか、1日に何回でどのくらい続くか、強さ、そして起きない場面)②これまでに試したこと(方法・道具・いつから・どのくらいの期間・結果)③愛犬の基本情報と健康(犬種・年齢・性別・体重・避妊去勢の有無と時期・持病・今飲んでいる薬・迎えた時期と経緯)④1日の暮らし(散歩・食事とおやつ・遊び・睡眠・留守番・家族構成と誰が世話をしているか)⑤目標(やめさせたいことではなく、代わりに何をしていてほしいか)⑥取り組める時間と家族の体制。この6つをA4の紙1枚かスマートフォンのメモ1画面にまとめて、相談の最初に渡してください。口頭だけだと、話が困りごとの1つ目で止まります。
相談の前に、動物病院に行ったほうがいいですか?
行ってください。行動の相談として専門医に紹介されてきた犬100件の症例を著者らが見直した2020年の総説(Mills ほか・Animals誌)は、控えめに見積もって約3分の1の症例に何らかの痛みを伴う状態が関わっており、場合によっては80%近くに及ぶと報告しています。関わっていたのは筋骨格系だけではなく、痛みを伴う消化器や皮膚の病気もよくあります。これは「行動の相談に来た犬」の話で家庭の犬全体の割合ではありませんが、痛みが原因の行動は、しつけの方法をいくら変えても直りません。とくに、急に始まった、触ると怒る場所がある、歩き方や座り方が変わった、粗相や飲水量が変わった、皮膚をなめ続ける、というときは先に受診してください。米国の獣医行動学の専門医による解説も、行動の強さが心配なとき・安全が心配なとき・体の不調の兆候があるとき・行動が急に変わったときは、獣医行動学の専門医から始めるのがよいとしています。
「吠えて困っています」だけでは、なぜ足りないのですか?
練習する場面を決められないからです。同じ「吠える」でも、インターホンに吠えるのか、散歩で他の犬に吠えるのか、留守番中に吠えるのかで、やることがまったく違います。書き足すのは、何に向かって(初めて来た大人の男性に、自転車に)、どこで(玄関のドアの前でだけ、ソファの上にいるときだけ)、1日に何回で1回につきどのくらい続くか、そして直前に何があったかとそのあと何が起きたかの2つです。あとの2つがとくに大事で、たとえばインターホンで吠える犬は、吠える→飼い主が大声を出す→犬がさらに吠える、という連鎖になりやすく、犬は飼い主の言葉の意味ではなく「自分が吠えると相手も声を出す」という結果を学んでいます。「そのあと」を書いておくと、この取り違えがその場で見つかります。
相談の前に、どんな記録を取ればいいですか?
3日分で足ります。日時・場所・直前にあったこと・犬がしたこと・そのあと・強さ、の6列で、その行動が出た回だけ書いてください。たとえば「9/1 7:20/玄関/宅配のインターホン/20秒ほど吠え続けた/私が『静かに』と言い抱き上げた/強い」。思い出して書くと印象の強い日だけが残るので、その場でメモするのがこつです。あわせて、起きない場面も1つ書いてください。吠えない距離、唸らない持ち方、落ち着いていられる時間帯。起きない条件は、そのまま練習の出発点になります。相談のあとも同じ用紙を続けると、1日に何回だったものが何回になったかが分かります。行動は一直線には減らず一度増えてから減ることもあるので、数えていないと、よくなっていても気づけません。
動画はどう撮ればいいですか?
決まりは3つです。1つ、起きてからではなく、起きる前から回してください。吠え始めてから撮ると、いちばん知りたい「直前」が映りません。2つ、犬だけでなく部屋全体と、そこにいる人の位置が入るように撮ってください。誰がどこにいたかが行動の意味を変えます。3つ、わざと起こさせないでください。「トレーナーに見せるために、もう一度やらせてみる」は、犬にその行動をもう一度練習させることになります。攻撃の場面は1回起きるたびに犬がそれを学び、多くの場合は強まります。治療の最初の一歩は「次の場面を起こさせないこと」です。長さは1本1分程度で十分です。留守番中の行動や、人がそばにいると出ない行動は、据え置きのカメラで撮ってください。
試したけれど効かなかった方法も、伝えたほうがいいですか?
いちばん伝えてほしいところです。「効かなかった」は失敗の報告ではなく、その方法をもう一度勧めなくて済むという情報です。何を、いつから、どのくらいの期間、結果はどうだったか(変わらない・よくなった・悪化した)、そして出どころ(動画で見た、知り合いに教わった、前の犬で同じようにした)を書いてください。とくに、叱った・押さえつけた・音や衝撃で止めた類の方法は正直に伝えてください。同じ学会は2021年の見解で、力・痛み・不快に頼る方法は使うべきでないとし、罰を使った方法は人や他の犬への攻撃的な行動、回避や興奮しやすさといった不安に関わる行動と関連が見られると書いています。その経験が今の行動に残っている可能性があるので、隠されると「なぜこの犬は手が近づくと固まるのか」が分からないまま練習が組まれます。責める話ではなく、多くの飼い主さまが一度は試しています。
目標はどう書けばいいですか?
「やめさせたい」を「代わりにこうしてほしい」に書き換えてください。犬は「しない」を練習できないからです。インターホンで吠える→鳴ったら玄関から離れたベッドへ行って座っていてほしい。来客に飛びつく→お客さまが入ってくるあいだ4本足を床につけて待っていてほしい。散歩で引っ張る→リードがたるんだ状態で横を歩いてほしい。留守番で吠える→出かけたあと自分の場所で横になっていてほしい。場面とセットで書くと、練習する場所と回数が決まります。いつまでにどうなっていたいか(引っ越しの日まで、赤ちゃんが生まれる月まで)も書いてください。ただし、どんなにしつけや行動の治療をしても犬を「犬でないもの」にすることはできず、掘る・かじる・吠えるはある程度は正常な行動です。目標は「ゼロにする」ではなく「暮らせる形にする」で立ててください。
相談の当日は何を持って行き、帰る前に何を決めればいいですか?
持って行くのは、6つをまとめた紙1枚、3日分の記録、動画(起きる前から回したもの・各1分程度)、動物病院の記録(診断名・処方された薬・検査の結果。「異常なし」も含めて)、いま使っている道具(首輪・ハーネス・リード・口輪の実物)、いつものおやつ、家族の予定です。帰る前に決めるのは3つ。①今日から始める練習は何と何か(多くて2つまで)②いつ・1日に何回・何分やるか③次に連絡するのはいつか、何が起きたときか。この3つが決まらないまま帰ると、聞いた内容を思い出せるうちに実行できず、翌週には元に戻ります。噛みや唸りがあるなら、当面避ける場面もその日のうちに決めてください。
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まとめ
ドッグトレーナーに伝えるのは6つ。①困っている行動②これまでに試したこと③愛犬の基本情報と健康④1日の暮らし⑤目標⑥取り組める時間と家族の体制です。そして相談より先に、動物病院で体を診てもらってください。行動の相談として紹介されてきた犬100件の症例を見直した2020年の総説では、控えめに見積もって約3分の1に何らかの痛みを伴う状態が関わっており、場合によっては80%近くに及ぶと報告されています。行動は「吠える」ではなく、いつから・どこで・誰に向かって・1日に何回・どのくらい続くか・強さ、そして直前に何があったかとそのあと何が起きたかまで書きます。「そのあと」を書くと、叱ることでかえって吠えが続いている、といった取り違えが見つかります。起きない場面を1つ書けると、そこが練習の出発点になります。記録は相談の前の3日で十分で、日時・場所・直前・行動・そのあと・強さの6列。動画は、起きる前から回す・部屋全体と人の位置を入れる・わざと起こさせない、の3つを守ってください。暮らしの情報は、よい飼い主に見えるように書かないこと。散歩を30分と書いて実際が10分なら、その30分を前提にした計画が立ちます。試して効かなかった方法、とくに叱った・押さえつけた類の方法こそ正直に。罰を使った方法は攻撃や不安に関わる行動と関連が見られると報告されていて、その経験が今の行動に残っていることがあります。目標は「やめさせたい」を「代わりにこうしてほしい」へ。帰る前に、今日から始める練習(多くて2つ)・いつ何分やるか・次に連絡するのはいつか、の3つを必ず決めてください。




























