基本的な【お座り・待て・伏せ】などを覚えてもらう際に飼い主様が発する合図を【コマンド】といいます。座れと言ったら座り、待てと言ったら待つ、無意識にワンちゃんに指示を出しているかと思いますが、なかなか言うことを聞かない時もあります。そういった場合はコマンドというものの認識が間違っている可能性があるので、今回は【正しいコマンドトレーニング】をご紹介します。
そもそもコマンドとは
ワンちゃんにしてほしい行動を取ってもらうための【合図】のことです。
多くの方が『コマンド』=『合図〜行動』と誤った認識を持っていることが多いですが、コマンドとはあくまで”合図”であって”行動”ではありません。
そのため、何かしてほしい行動があるのであればまずは動きから教え、ワンちゃんが動きをマスターしたタイミングでコマンドと動きを結び付けてあげる必要があります。
コマンドを教えると楽なこと
ワンちゃんとのコミュニケーションをとる際に必要となるコマンドですが、コマンドを教える過程で飼い主様の指示を読み取ろうとする意思が芽生えるため、生活の中で今ワンちゃんに何かしてほしい場合にその行動をとることができるようになります。
また、ワンちゃんに危険が及んだ場合にもコマンドに従うことができれば最悪の事態を防ぐことができるでしょう。
教える順番
日常的に使う【お座り・待て・伏せ】はトレーニングを意識しなくても、隙間時間でできるため教える順番としてはここからスタートすることがおすすめです。そして、飼い主様の指示を読み取ろうとする意思が芽生え始めれば、次のステップです。
上記以外に必ず教えておいたほうが良いものとして『来い(カム)』『放せ(ドロップ)』です。この2点のみ行うことができていれば、交通事故や誤飲事故につながる前に飼い主がコントロールすることで最悪の事態を防ぐことができます。
その他にトイレやハウスなどコマンドもありますが、これらを含めて下記で紹介したいと思います。
ハンドサイン
手の動きとワンちゃんの行動を結び付けて覚える事です。
手の動きをコマンドとし、手の動きが意味する行動をワンちゃんがとるように教えます。ただ、ワンちゃんが飼い主様へ意識が向かっていないと伝わらないので、少し上級者向けのサインと言えるでしょう。
コマンドの教え方
教え方やトレーニング方法はたくさんありますが、その中の一例をご紹介します。これから教えようとしている方や上手くいかなくて悩んでいる方は是非参考にして頂ければと思います。
トイレ
コマンドは「トイレ」「ワンツー」「チッチ」など。
ステップ1
ワンちゃんがトイレをしているタイミングでコマンドをかける
トレーナーポイント:
トイレをしている時にジーっと見ながら知らない言葉(コマンド)を言われたらワンちゃんも怒られているんじゃないかと思いやめてしまう可能性があります。穏やかな気持ちと表情でコマンドをかけてみましょう。
↓ワンちゃんががコマンドをかけてもトイレすることをやめなくなったら
ステップ2
ワンちゃんがトイレをしようとする動き(トイレに行く、しきりに匂いを嗅ぎ始めるなど)があったらコマンドをかける
トレーナーポイント:
この際も飼い主様が慌ててコマンドを出してしまうと驚かせてしまうので、トイレ時間を記録するなどして、慌てないよう準備しておきましょう。
↓ワンちゃんがコマンドをかけても躊躇することなくトイレすることができたら
ステップ3
ワンちゃんがトイレをしようとする動きがなくても、いつもトイレをするタイミングでコマンドをかける(寝起きやハウスから出した際、ごはん後など)
トレーナーポイント:
慣れてくると「大体このタイミングでトイレに行くな」と把握できるようになります。そのタイミングで、コマンドをかけてトイレを促してあげましょう。
コマンドを聞きトイレをしに行くことができればステップ4へ。
コマンドを聞いてもトイレをする素振りがなければステップ2に戻る
ステップ4
飼い主様のタイミング(車に乗る前や就寝前、お出かけ前など)でコマンドをかける
座れ
コマンド「座れ」「お座り」「シット」「ジッツ」など。
ステップ1
おやつを持った手を鼻の前に差し出しワンちゃんがおやつのにおいを嗅いでいるうちに手をゆっくりワンちゃんの顔が上を向くように持っていきます。
(飛ぶ付いたりすることなくおやつを追って上を向くことが出来たら、褒めおやつを上げる)
トレーナーポイント:
まずは【座る】という行動を覚えてもらうための誘導からスタートします。
ステップ2
飛びついたりすることなくおやつを追って上を向くことができるようになったらワンちゃんのお尻が地面に付くまでワンちゃんの後ろに向かっておやつを持った手で誘導する
(お尻がついたタイミングで褒め、おやつを上げる)
トレーナーポイント:
ここで【座る】という行動を覚えてもらいます。焦らずゆっくりとおこないましょう。
ステップ3
「お座り」の指示を出してからステップ2の動作を繰り返し行います。
トレーナーポイント:
ステップ3からいよいよ行動とコマンドを紐づけさせていきます。
ステップ4
お座りの指示を出してすぐに座らない場合、焦って誘導を開始せず、ワンちゃんが自発的にお座りをしたタイミングでたくさん褒めてあげましょう。
トレーナーポイント:
ここまできたら、ワンちゃん自身で考えてもらい自発的に座るまでできれば完成です。
伏せ
コマンド「伏せ」「ダウン」「プラッツ」など。
ステップ1
おやつで誘導し飼い主様の体育座りした足の下を潜るように促します。抵抗なく足の下を潜れるようになったら次のステップに移ります。
トレーナーポイント:
ここでいう体育座りはワンちゃんが低い姿勢になれるように障害物を作ってあげることを意味します。そのため、体育座りでなくても片膝立ちでもいいので、くぐれる工夫をしてください。
ステップ2
徐々に体育座りの足をなだらかにすることでワンちゃんが潜るために前足の肘を地面に付けたら褒めます。
ステップ3
更に体育座りの足をなだらかに肘としお尻がしっかり地面に付いたタイミングで褒めてあげましょう。
トレーナーポイント:
この段階では完全に【伏せ】の行動をとれるようにしましょう。肘とお尻が地面にちゃんとついている形は、大会に出る場合には重要な伏せの形になる他に、股関節の歪みなどを防ぐ意味もあるため姿勢を大切にすることをおすすめします。
ステップ4
ステップ3を行う際に「伏せ」などのコマンドをかけます。
トレーナーポイント:
ここでようやく、行動とコマンドの紐づけになります。
ステップ5
「伏せ」の指示のみ(体育座りのあしがなくても)で伏せることができるようにしましょう。
ハウス
コマンド「ハウス」「おうち」など。
ステップ1
抱っこした状態で上半身のみハウスにいれた状態からハウスのコマンドをかけハウスの中におやつを落としてあげます。
トレーナーポイント:
この段階ですっぽり入れてしまうと「閉じ込められる」と思い、トラウマになってしまわぬように気を付けましょう。
ステップ2
抱っこした状態で入口の正面に立たせハウスのコマンドをかけたらハウスの中におやつを落としてあげる
トレーナーポイント:
この際にも自分からおやつを食べにハウスの中に入るまで待ちましょう。無理矢理入れようとすることは避けてください。
ステップ3
少しハウスから離した状態でハウスのコマンドをかけハウスの中におやつを落としてあげる
ステップ4
徐々にハウスから遠ざけハウスのコマンドをかけおやつをハウスの中に落としてあげる
コマンドの言葉一覧
最後に一般的に使用されている【コマンド】をご紹介します。また、何語が覚えやすいなどのことはないので、ご家族が言いやすい言語でのコマンドを選ぶようにしましょう。
主流は日本語・英語と訓練色が強いドイツ語
ドイツ語の補足ですが、警察犬や護衛などの訓練を受けているワンちゃんのコマンドはドイツ語を使用していることが多いです。その理由は服従訓練などのルーツがドイツと言われているためです。下記に言葉を記載していますが、短い単語のうえ発音が強く聞こえるため向いているそうです。
日本語 | 英語 | ドイツ語 |
お座り | シット | ジッツ |
伏せ | ダウン | ブラッツ |
来い | カム | ヒーア |
待て | ステイ | ブライブ |
離せ | ドロップ | アウス |
立て | スタンド | シュター |
つけ | ヒール | フス |
家族内では必ず統一する
コマンドを決める際はご家族が言いやすい言葉を選びましょう。ワンちゃんにとっては【言語】という概念はないので、何語を使用しても覚えてくれます。しかし、使用するコマンドがバラバラだとワンちゃんも混乱してしまい覚えることができません。
必ず、家族内でのコマンドは統一しましょう。
コマンドは【行動ではなく合図】を忘れずに
コマンドトレーニングは特別難しいものではありません。一つの行動に一つの言葉(コマンド)を紐づけさせるトレーニングなので、ワンちゃんの意識を向けることと、出来た時に褒めることで短い時間でも覚えてくれることでしょう。上手くいかない時は【行動ではなく合図】を思い出してください。まずは、行動を覚えさせることを心掛けましょう!
撮影協力
チワワの【サフ】が撮影協力してくれました!
出番まで少し時間がかかったこともあり、眠そうにしている表情がとても可愛かったです!
サフはほとんどが一発OKだったので、出番後はスヤスヤ眠っていて撮影隊が癒されていました!
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