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犬が言うことを聞かない理由と直し方|怒っても聞かない・子犬も
公開日:2024年9月6日(金) 更新日:2026年10月6日(火) 犬の育て方
この記事の要点
犬が言うことを聞かないのは、合図が届いていない・聞いても得がない・今それどころではない、の3つのどれかです。なめているのでも反抗でもありません。家族で合図をそろえ、聞いたら必ず良いことが起きる形にしてください。
「おすわり」と言っても座らない。呼んでも来ない。怒っても、なぜか知らん顔。毎日のことなので、飼い主さまのほうが先に参ってしまうご相談です。
先に結論を書きます。犬が言うことを聞かないとき、起きていることは3つのどれかです。合図が届いていない、聞いても得がない、今それどころではない。「なめている」「反抗している」ではありません。この記事では、その3つの見分け方と、怒っても聞かない理由、家族の中で聞く人と聞かない人が分かれる理由、子犬の場合、名前を呼んでも無視するときの直し方を、順番に書きます。
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子犬を見る犬が言うことを聞かない理由は、3つに分かれます
同じ「聞かない」に見えても、中身が違えば直し方も違います。まず、どれに当たるかを見てください。
| 起きていること | そう思う手がかり | やること |
|---|---|---|
| 1. 合図が届いていない | 家では座るのに外では座らない/お父さんが言うと座るのに自分が言うと座らない/離れたところから言うと聞かない | 合図の出し方を1つに決め、覚えた場所から少しずつ広げる |
| 2. 聞いても得がない | 聞いたり聞かなかったり/呼ぶと来ないのに、おやつの袋の音では来る | 聞いたときに「良いこと」が必ず起きる形にする。聞かなくても済む状況を作らない |
| 3. 今それどころではない | 好きな人や犬を見た瞬間、何を言っても通じない/吠えている最中、噛んでいる最中 | そのときに指示を出すのをやめ、距離を取って落ち着いてから。刺激の少ない場所で練習し直す |
1つめについて、はっきりした研究があります。「おすわり」と「おいで」に安定して従うように訓練した犬で、合図の出し方だけを変えた実験(フクザワら、2005年)では、同じ言葉でも、録音した声で出すと成績が下がり、出す人が約2.5メートル離れて衝立で半分隠れると下がり、背中を向けて「おすわり」と言うと下がりました。言葉は同じなのに、です。
つまり犬は、「おすわり」という言葉の意味を覚えているのではなく、その声・その姿勢・その距離・その場所の組み合わせを1つのかたまりとして覚えています。組み合わせのどれかが変わると、犬にとっては別の合図です。「家では座るのに外では座らない」は、聞かないのではなく、外の「おすわり」をまだ知らないだけです。
2つめは、こちら側の帳尻の話です。聞いたときに何も起きず、聞かなくても困らないなら、聞く理由がありません。犬は損得で動きます。それは賢さの表れであって、悪いことではありません。
3つめは、聞こえていても体が動かない状態です。興奮しているとき、こわがっているとき、目の前のものに釘づけのとき。ここで指示を重ねても入りません。この記事の後半で、その扱いを書きます。
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怒っても聞かないのは、怒り方の問題ではありません
「怒っても聞かない」「叱っても聞かない」で調べてここへ来られた方は多いと思います。先に申し上げると、怒り方を強くしても、聞くようにはなりません。むしろ逆に進みます。
米国獣医行動学会(AVSAB)は2021年の見解で、力や痛み、精神的または身体的な不快に頼る方法は、犬のしつけにも問題行動の対応にも使うべきではないとしています。そうした方法は、人や他の犬への攻撃的な行動や、回避・興奮しやすさなどの不安に関わる行動と関連が見られ、効果の面でも劣るとされています。同じ見解の中で、ご褒美だけで育てた犬がいちばん指示に従い、罰だけがいちばん低かったという調査(2004年)も引かれています。
なぜそうなるのかは、上の1つめと2つめで説明がつきます。怒られている犬が学んでいるのは「おすわりをしなかったから怒られた」ではなく、「この人が大きな声を出すと嫌なことが起きる」です。すると次に起きるのは、聞くようになることではなく、その人から距離を取ること、目を合わせないこと、固まることです。それが飼い主さまからは「知らん顔」「無視」に見えます。
もうひとつ、怒っているときの声は、いつもの合図とは別の音です。1つめの理由のとおり、犬にとっては「おすわり」ではなくなっています。怒鳴った時点で、合図そのものが変わっているのです。
ですから直し方は、怒るのをやめることから始まります。「叱る」と「怒る」の違いは、叱り方の記事に分けて書いています。
言うことを聞く人と聞かない人が分かれる理由
「お父さんの言うことは聞くのに、私の言うことは聞かない」というご相談も、とても多いです。ここで「順位が下に見られている」「なめられている」と考えるのは、いちばん遠回りになります。犬が家族の中で順位を付けて従う相手を決めている、という説明は、いまの行動学では支持されていません。この点は家族の順位の記事に書いています。
実際に起きているのは、次の2つです。
- 合図の出し方が人によって違う……声の高さ、言い方、立つ位置、手の動き。上の研究のとおり、犬はこれを丸ごと覚えているので、お父さんの「おすわり」と自分の「おすわり」は、犬にとって別の合図になっていることがあります
- 聞いたあとに起きることが人によって違う……お父さんのときは必ずおやつが出る。自分のときは出たり出なかったり。あるいは、自分が呼ぶときは爪切りや歯みがきが続く。犬は「誰が言ったか」ではなく「そのあと何が起きたか」で決めています
直すには、家族で合図の言葉と手の動きを1つに決め、聞いたときに起きることをそろえるのがいちばん早いです。「聞かない人」のほうが多くおやつを持ち、聞いたら必ず渡す。数週間でひっくり返ります。
犬種のせいでもありません。犬の行動を大規模に調べた研究(サイエンス誌、2022年)では、犬種で説明できるのは個体ごとの行動の違いのうち約9%でした。「頑固な犬種だから」で片づけられる差ではありません。
子犬が言うことを聞かないのは、普通のことです
お迎えしたばかりの子犬が言うことを聞かない、というご相談は、月齢で分けると答えが変わります。
生後2〜4か月:まだ「合図」を知りません
この時期は、聞かないのではなく、まだ覚えていません。環境省の資料では、犬の社会化期は生後3週から16週までとされ、さまざまなことを受け入れやすい時期です。この時期にやるのは指示を守らせることではなく、人・音・場所・触られることに慣れることと、「人のほうを見ると良いことがある」を覚えることです。
集中が続く時間も短いので、練習は1回1〜2分で切り上げてください。この時期に長く付き合わせて飽きさせるより、短く終えて「もっとやりたい」で止めたほうが、あとで伸びます。
生後8か月ごろ:飼い主にだけ従いにくくなる時期があります
「できていたのに、急に聞かなくなった」が生後7〜9か月ごろなら、ここです。犬にも思春期があります。
93頭を生後5か月と8か月で調べた研究(アッシャーら、2020年)では、飼い主の「おすわり」に従う割合が、8か月では5か月より下がりました。一方で、知らない人に対しては8か月のほうがむしろ良くなっていました。飼い主にだけ従いにくくなる、という形です。しかも、飼い主から離れることへの不安が強い犬ほど、この傾向が強く出ていました。
ここから言えることは2つです。うちの子だけが反抗しているのではない。そして、厳しくするほど悪くなる方向の話だということです。不安が強いほど出るので、この時期に怒ると逆に長引きます。この研究が調べているのは5か月と8か月の2時点だけなので、「いつまで続くか」はこの出典では言えません。反抗期の記事に詳しく書いています。
名前を呼んでも無視するとき
名前を呼んでもこちらを見ない、来ない。これは名前が「良いことの合図」ではなくなっているサインです。よくあるのは次の3つで、どれも飼い主さまに悪気はありません。
- 叱るときに名前を使っている……「〇〇ちゃん!ダメ!」。名前のあとに嫌なことが続く回数が多いと、名前を聞いた時点で身構えます
- 呼んでから嫌なことをしている……呼んで来たら爪切り、歯みがき、ケージへ、お風呂。来ると損をする、と学びます
- 呼んで遊びを終わらせている……ドッグランで呼び戻して、そのまま帰る。呼ばれる=楽しいことの終わり、になります
直し方は、名前を「良いことしか起きない言葉」に戻すことです。
- 名前を呼んだら、何もさせずにおやつ……1日20回、こちらを見た瞬間に渡す。座らせなくていい。来させなくていい
- 叱るときに名前を言わない……止めたいときは名前なしで「ダメ」だけにする
- 呼んで嫌なことをしない……爪切りや歯みがきのときは、呼ばずにこちらから迎えに行く
- 呼んで、また離す……ドッグランで呼び戻したら、おやつを渡してまた遊びに戻す。10回のうち9回は「呼ばれても終わらない」にする
名前に反応するようになると、その先の「おいで」「おすわり」が入りやすくなります。順番としては、名前が先です。
今日から直す順番
上から順にやってください。途中を飛ばすと戻ります。
1. 合図を1つに決めて、家族でそろえる
「おすわり」「すわって」「シット」を混ぜない。言葉と手の動きを1つずつ決め、紙に書いて冷蔵庫に貼るくらいでちょうどいいです。言うのは1回。2回3回と重ねると、「3回目で座ればいい」を覚えます。
2. 聞いたら必ず良いことが起きる形にする
おやつは先に手に持っておき、できた瞬間に渡します。数秒ずれると、何を褒められたのか伝わりません。「褒めているつもり」が犬に伝わっているかどうかは、褒め方の記事に見分け方を書いています。
3. 覚えた場所から、少しずつ広げる
家の静かな部屋でできたら、次は玄関、次は家の前、次は散歩道の静かなところ。1段階ずつ、できたら次へ。いきなりドッグランでは、犬にとって別の合図です。できない場所に行ったら、1段階戻します。
4. 興奮しているときは、指示を出さない
好きな人を見つけた瞬間、吠えている最中、噛んでいる最中。ここで「おすわり」を連発しても入りませんし、入らない経験を積むと合図が薄まります。距離を取る、視界から外す、落ち着いてから出す。これが順番です。吠えるのをやめない、噛むのをやめない、飛びつく、は原因も直し方も別なので、それぞれの記事に分けています。
5. 聞かなくても済む状況を作らない
「おいで」と言って来なかったら、こちらから迎えに行く。これを続けると「来なくても迎えに来てくれる」を覚えます。来ないなら、その合図はまだ使えない段階です。無理に出さず、リードを付けた短い距離で成功を積み直します。
イライラしてしまうとき
「言うことを聞かない」で調べている方の多くが、同時に「イライラ」とも調べています。正直に書きます。毎日できないのを見ていれば、イライラします。それは飼い主さまが悪いのではありません。
ただ、イライラしたまま続けると、声が高くなり、動きが速くなり、犬にとっては「いつもと違う合図」と「怖い人」が同時に来ます。ここまで書いたとおり、それは1つめと2つめの両方を壊します。
- その日はやめる……できない日に粘らない。翌日、できるところから
- 1回1〜2分……短く、できたところで終える
- できたことを数える……できなかった回数ではなく、今週できた回数で見る
それでもうまくいかない週が続いたら、ひとりで抱え込まずにドッグトレーナーへご相談ください。フローエンスでは、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。「何をやっているのか」を聞いてもらうだけでも、順番が整理できます。
よくある質問
犬が言うことを聞かないのはなぜですか?
起きていることは3つのどれかです。合図が届いていない(家では座るのに外では座らない、離れると聞かない)、聞いても得がない(聞いたり聞かなかったり)、今それどころではない(興奮・警戒・目の前のものに釘づけ)。犬は「おすわり」という言葉の意味ではなく、声・姿勢・距離・場所の組み合わせを1つのかたまりとして覚えているので、どれかが変わると別の合図になります。なめているのでも、反抗しているのでもありません。
怒っても言うことを聞きません。どうすればいいですか?
怒り方を強くしても聞くようにはなりません。米国獣医行動学会は2021年の見解で、力や不快に頼る方法はしつけにも問題行動の対応にも使うべきではなく、不安に関わる行動と関連が見られ、効果の面でも劣るとしています。怒られた犬が学ぶのは「この人が大きな声を出すと嫌なことが起きる」で、次に起きるのは距離を取る・目を合わせない・固まるです。それが「無視」に見えます。怒るのをやめ、合図を1つに決めて、聞いたら必ず良いことが起きる形に戻してください。
家族の中で、言うことを聞く人と聞かない人がいます。なめられていますか?
なめられているのではありません。犬が家族の中で順位を付けて従う相手を決めている、という説明はいまの行動学では支持されていません。起きているのは、合図の出し方(声の高さ・言い方・立つ位置・手の動き)が人によって違うことと、聞いたあとに起きること(おやつが出る/出ない、嫌なことが続く)が人によって違うことです。家族で合図を1つに決め、聞かない人のほうが多くおやつを持って、聞いたら必ず渡すと、数週間でひっくり返ります。
子犬が言うことを聞きません。何か月から覚えますか?
生後2〜4か月は、聞かないのではなくまだ覚えていません。環境省の資料では社会化期は生後3週から16週までとされ、この時期にやるのは指示を守らせることより、人・音・場所・触られることに慣れることと、人のほうを見ると良いことがあると覚えることです。練習は1回1〜2分で切り上げてください。生後8か月ごろに急に聞かなくなったなら、それは犬の思春期で、飼い主にだけ従いにくくなる時期です。
生後8か月で急に言うことを聞かなくなりました。反抗期ですか?
その可能性が高いです。93頭を生後5か月と8か月で調べた研究では、飼い主の「おすわり」に従う割合が8か月では下がり、一方で知らない人に対してはむしろ良くなっていました。飼い主にだけ従いにくくなる形で、飼い主から離れることへの不安が強い犬ほど強く出ていました。うちの子だけが反抗しているのではなく、厳しくするほど悪くなる方向の話です。いつまで続くかは、この研究では分かっていません。
名前を呼んでも無視します。どう直しますか?
名前が「良いことの合図」ではなくなっているサインです。叱るときに名前を使っている、呼んでから爪切りや歯みがきなど嫌なことをしている、呼んで遊びを終わらせている、のどれかが多いです。直し方は、名前を呼んだら何もさせずにおやつを渡すのを1日20回くり返す、叱るときに名前を言わない、嫌なことのときは呼ばずに迎えに行く、呼び戻したらおやつを渡してまた遊びに戻す、の4つです。
言うことを聞かなくてイライラしてしまいます。
毎日できないのを見ていればイライラします。飼い主さまが悪いのではありません。ただ、イライラしたまま続けると声が高くなり動きが速くなって、犬にとっては「いつもと違う合図」と「怖い人」が同時に来ます。その日はやめて翌日できるところから、1回1〜2分で切り上げる、できなかった回数ではなく今週できた回数で見る、の3つで乗り切ってください。うまくいかない週が続いたら、ひとりで抱え込まずにドッグトレーナーへご相談ください。
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まとめ
犬が言うことを聞かないとき、起きているのは3つのどれかです。合図が届いていない、聞いても得がない、今それどころではない。犬は言葉の意味ではなく、声・姿勢・距離・場所の組み合わせで合図を覚えているので、家族で出し方を1つにそろえ、覚えた場所から少しずつ広げてください。怒り方を強くしても聞くようにはならず、むしろ距離を取られます。生後2〜4か月はまだ覚えていない時期、生後8か月ごろは飼い主にだけ従いにくくなる時期で、どちらも厳しくするほど悪くなります。名前を呼んでも無視するなら、名前を良いことしか起きない言葉に戻すところから。聞いたら必ず良いことが起きる、を続けるだけで、順番に戻ります。



























