ワンちゃんのトレーニングを行う上で、叱り方はとても重要なポイントになります。ダメなものはダメ、褒めるときは褒める、とメリハリのある教え方でないとワンちゃんも混乱してしまうためです。今回はトレーニングを行う基礎部分である【叱る】をテーマにご説明します。
しつけは感情でコントロールはできない
トレーニングをする前に飼い主様の感情でワンちゃんをコントロールすることはできないことを予め理解する必要があります。ワンちゃんを”恐怖心”で支配するのはトレーニングではありません。ワンちゃんと飼い主様との間に絆を築くことがトレーニングの本質だと理解して頂けると嬉しいです。
「怒る」と「叱る」を理解すること
【怒る】は感情的に自分のイライラや感情をぶつけること
【叱る】は正しい行動へ導くために何がよくないのか気づかせてあげることです。
感情的に怒ってしまうと言いすぎてしまったり、適切な注意にならず恐怖心を与えてしまい関係性の悪化を招く場合があります。飼い主様はイライラしてしまっても冷静にダメなことはいけないことなのだと注意し正しい行動を教えてあげましょう。
また、成犬や子犬の場合であっても、基本的には同じで何がダメだったかを理解させることが重要になります。
「なんでできないの!ダメって言ったでしょ!」と大声で伝えても響かず、良いときは褒めてダメな時は「無視orNO」です。
正しい叱り方
続いては、「怒る」と「叱る」の違いを理解して頂けたと思うので正しい叱り方をお伝えします。
低い声で短く叱る
高い声で叱るとかえって興奮しやすかったり、叱られていることが分かりづらくなってしまいます。また、話しかけるように長い単語(文章)で注意してしまうとワンちゃんが理解しづらくなってしまうため「ダメ!」「NO!」など、ワンちゃんが理解しやすい短い単語で統一することがポイントです。
無視する
ワンちゃんがしてほしくない行動をした際、無視(報酬を与えない)ことでダメな行動をとっても良いことはないと学ばせます。
その後、してほしい行動をとれた時に褒めてあげることでワンちゃんにこの行動は良いことと紐づけさせてあげましょう。
行動の直後に叱る
ダメなことをしてから時間が経過した後、叱るのはワンちゃんも何に対し叱られているのか理解ができず困惑してしまいます。
やってほしくない行動をしてしまった場合、その行動をしている時に注意することがベストです。
叱る強さに強弱をつける
ワンちゃんの性格やボディーランゲージをみて適切な強さで注意をしてあげると効果的です。
具体的にお伝えすると、臆病な子にはそこまで強く叱る必要はなく、逆にメンタルが強く叱ってもあっけらかんとしている子には少し強めに叱る必要があります。
個体差に合わせて叱ることを意識しましょう。
叱った後になにが正しいのか教えてあげる
「ダメ!」「いけない!」だけ教えていても何が正解なのか理解することはできず、ワンちゃん自身も何をやっても怒られてしまう…と自信がなくなってしまいます。
注意をしたら、必ず正解も教えてあげましょう!
3パターンの叱り方
上記でご説明した正しい叱り方を、より具体的に3つのパターンを用いてご紹介します。
噛む
要求や興奮して甘噛みをしてしまう場合は、噛んだら楽しいことが無くなってしまう、と教えていきたいため噛んだらハウスに戻す(無視する)、しばらくしワンちゃんが落ち着いたら再度遊んであげましょう。
唸る
唸る理由は独占欲と恐怖心の2パターンあります。一つずつ詳しく解説します。
・独占欲
独占欲から唸っている場合は独占している物を共有することができるようになるように、まずは独占している物を飼い主様が持った状態で遊んだり食べたりさせ「放せ】の指示でワンちゃんが自ら放す(退く)ようにします。
次に飼い主様が手を離した状態でも唸ることなく指示に従い放すことができたらしっかりと褒め、再度ワンちゃんに渡してあげます。
そして、注意しなければいけないのがしつこくワンちゃんから物を奪うことをしてしまうと、逆効果になり独占欲が強くなる場合があるため、不安でしたらトレーナーに直接指導してもらうことをおすすめします。
・恐怖心
恐怖心から唸ってしまうのであれば、恐怖対象に対し恐怖心を抱かなくてもいいと理解してもらうことができるように、少しずつ恐怖対象の音や匂いから馴らしていきます。
音や匂いに恐怖心を抱かなくなったら次に少し離れた場所で恐怖対象を観察してもらいます。自ら恐怖対象に近づいて行くようであれば見守ってあげ、自ら近づくのが難しい場合はおやつなどワンちゃんの好きな物を使用して近づき怖くないこと認識させましょう。
注意するポイントは無理に近づけてしまうとさらに恐怖心が強くなってしまうことがあるのでワンちゃんの状態をよく観察し少しづつ慣らしてあげることです。
吠える
「吠え」についても要求か警戒かで異なります。そのため、飼い主様がこの吠えはどちらに当てはまるのかを判別する必要があります。
分からない場合はこちらの記事を参考にしてください↓
犬の「吠え」には種類がある!しつけの前に吠えの種類を見極めよう!
・要求
要求吠えの場合は無視を徹底し落ち着いたら褒めてあげます。
別の行動(吠える以外のもの)を与える方法もおすすめです。
例:お散歩に行きたいならリードを持ってくる、ご飯が欲しかったらお皿の前で座るなど
・警戒
恐怖心から吠えてしまうのであれば恐怖対象に対し恐怖心を抱かなくてもいいと理解してもらうことができるよう、恐怖対象の音や匂いから馴らしていきます。
音や匂いに恐怖心を抱かなくなったら次に少し離れた場所で恐怖対象を観察してもらいます。自ら恐怖対象に近づいて行くようであれば見守ってあげ、自ら近づくのが難しい場合はおやつなどワンちゃんの好きな物を使用して近づき怖くないと認識させましょう。
注意するポイントは無理に近づけてしまうとさらに恐怖心が強くなってしまうことがあるのでワンちゃんの状態をよく観察し少しづつ慣らしてあげることです。
トレーナーポイント:
3パターンすべてに共通することですが、子犬の時期から継続し社会化トレーニングを行うことで、恐怖心からくる「噛み」「唸る」「吠える」が発現することを防ぐことができます。恐怖心の克服はワンちゃん次第であるため、早めの行動が大切になります。
間違った叱り方
最後に復習を兼ねて間違った叱り方についてご紹介します。下記の叱り方をしない意識を持つことでしっかりとワンちゃんに伝えることができると思うので心掛けてトレーニングを行いましょう。
マズルコントロール(鼻・口を掴む)
マズルコントロール自体が間違っているわけではなく、トレーニングスキル(力加減や、ワンちゃんの状態把握、ワンちゃんとの関係性)が必要になる方法のため安易にマズルコントロールを行うとワンちゃんとの関係性の悪化や問題行動の悪化を招く可能性があるためおすすめしません。
トレーナーポイント:
その反面、しっかりと マズルコントロールの方法や意味を理解し、正しく継続し行うことができれば有効な方法です。そのため、まずは飼い主様の判断で行わず、トレーナーから指導を受けましょう。
長い言葉で叱る
長い言葉だとワンちゃんが理解しづらいため短い単語【ダメ!・NO!など】で注意してあげましょう。
トレーナーポイント:
興奮させないように、なるべく低い声で叱りましょう。
感情的に叱る
感情的に叱ってしまうと恐怖心を与えてしまう場合があるため、逆効果になってしまう可能性があります。
トレーナーポイント:
叱るときは「冷静に」を心掛けてください。
ダメ!ばかリ教えている
「ダメ!」「いけない!」だけ教えていても何が正解なのか理解することはできず、ワンちゃん自身も何をやっても怒られてしまう…と自信がなくなってしまいます。
注意をしたら、必ず正解も教えてあげましょう。
トレーナーポイント:
アメとムチの使い分けが重要です。ワンちゃんは褒められて伸びる生き物です。
家族間でルール(叱り方)を統一していない
叱り方やルールが統一されていないと混乱してしまい関係性の悪化や本当にやめてほしい時にワンちゃんに伝わりづらくなってしまう可能性があります。
トレーナーポイント:
一番長く接している方がルールを決めてもいいと思います。継続と統一を意識しましょう。
ドッグトレーナーに相談
正しい叱り方についてご説明しましたが、初めから完璧にできる人は少ないと思います。共に生活をしていれば感情的になってしまう瞬間もあるかと思います。しかし、飼い主様自身が「さっきは怒り過ぎたな」と気付ければ問題ありません。
それでも、何回も感情的に怒ってしまう、ワンちゃんに何度言っても失敗をくり返す、などの場合はドッグトレーナーに相談しましょう。
撮影協力
オーストラリアン・シェパードの【ルディ】
大会入賞するほどとってもお利口さんなワンちゃん。
犬の幼稚園の看板犬を務めているので、ご来園の際は声をかけてあげてくださいね!