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犬が噛む理由5つと見分け方|子犬に噛む力の加減を教える手順
公開日:2024年9月5日(木) 更新日:2026年10月6日(火) 犬の育て方
この記事の要点
犬が噛む理由は、歯の生え変わり・遊びと興奮・こわさ・痛み・物を守る、の5つに分かれ、噛む前後の様子で見分けられます。子犬の遊び噛みで血が出るのは乳歯が細く鋭いからで、本気噛みではありませんが、手当ては流水でよく洗って早めに受診です。子犬には「歯が当たったら遊びが終わる」を毎回同じにして、噛む力の加減を教えます。叱る・押さえる・マズルをつかむは逆効果で、成犬の本気噛みは獣医師と行動の専門家に相談します。
「子犬に噛まれて血が出た」「本気で噛んでいるのか、遊びなのか分からない」「9か月になって急に噛むようになった」。噛むことについてのご相談は、お迎えの直後と、生後半年を過ぎたころの2回、まとまって増えます。
先に結論を書きます。犬が噛む理由は1つではなく、歯の生え変わり・遊びと興奮・こわさ・痛み・物を守る、の5つに分かれます。どれで噛んでいるかは、噛む前後の体の様子で見分けられます。そして、子犬が噛むこと自体は止められませんが、「噛む力の加減」と「口を離すこと」は子犬のうちに教えられます。この記事では、理由の見分け方、子犬に噛まれて血が出たときの手当て、本気噛みと遊びの違い、子犬に加減を教える手順、生後半年を過ぎてからの噛み、やってはいけないこと、成犬の本気噛みへの向き合い方を、順に書きます。興奮して噛む子、触ろうとすると唸って噛む子については、それぞれ別の記事に分けています。
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子犬を見る犬が噛む理由は5つ|噛む前後の様子で見分けます
「なぜ噛むのか」を「本能だから」で片づけると、直し方が決まりません。犬が人の手や足に口を当てる理由を、暮らしの中で見分けられる形に分けると、次の5つです。同じ「噛む」でも、前後の様子がまったく違います。
| 理由 | こんな噛み方 | 噛む前後の様子 | やること |
|---|---|---|---|
| ① 歯の生え変わり(子犬) | 手・家具・スリッパを、かじる・くわえて引く。相手を選ばない | 生後6〜7か月ごろまで。よだれが増える、口をしきりに気にする。歯が抜けて落ちていることも | かじってよい物を渡す。手は「かじる物」から外す(後半の手順) |
| ② 遊び・興奮 | 動く手や足、服の裾に飛びついて噛む。噛んでは離し、また噛む。唸りも大げさ | 体が弾む、しっぽが高く振れる、口が大きく開いている。遊びの最中や夕方に多い | 噛んだ瞬間に遊びを終える。おもちゃに置き換える(後半の手順) |
| ③ こわさ・防御 | 追い詰められた・抱えられた・手が伸びてきた瞬間に、噛んですぐ離す | その前に、体を低くする、しっぽを巻き込む、目をそらす、白目が見える、唸る | 追い詰めない。こわがっているものから距離を取り、少しずつ慣らす |
| ④ 痛み | 特定の場所を触ったとき、抱き上げたときにだけ噛む。それまで噛まなかった子が急に | 触られる前から体をよじる。足を引きずる、歩き方が変わった、など体の変化が先にある | しつけの前に動物病院で体を診てもらう |
| ⑤ 物を守る(資源) | 食べている最中、おもちゃやベッドの上で近づいた人に、固まってから噛む | 体が硬直する、食べる速さが変わる、低く唸る、口を閉じて唇がめくれる | 取り上げない。近づくと良いことが起きる形に変える。強いなら専門家へ |
①と②は、子犬の「ふつう」です。子犬の口には約28本の小さな鋭い乳歯が並んでいて、指や足に向かって噛んでくる「遊び噛み」はまったく正常で、成長に必要なものです(アメリカンケネルクラブ・AKCの解説)。この2つは、後半の手順で「力の加減」と「口を離すこと」を教えれば、成長とともに落ち着きます。
③④⑤は、噛む前に必ず合図が出ています。体を低くして縮こまる・しっぽを巻き込む・白目が見える・鼻や口をなめる・あくびをするが恐怖やストレスのサイン、長く続く硬い凝視・体重が前にかかる・体の硬直・口を閉じたままの低い唸りが攻撃に近づいているサインです。いちばん多い攻撃性は「こわさからくる攻撃」で、逃げられない犬(追い詰められた・押さえられた)は、逃げるより戦うほうを選びやすいです(VCA動物病院・アメリカの動物病院グループの解説)。噛むところだけを見ると「急に噛んだ」に見えますが、その2秒前には目をそらし、1秒前には体が硬くなっています。
「噛む犬と噛まない犬の違い」は、性格ではありません
「噛まない犬はなぜ噛まないのか」で調べて来られる方がいます。噛まない犬は、噛む理由が無い犬ではありません。「噛む前の合図が、人に通じている犬」と「噛む力の加減を子犬のうちに学んだ犬」です。目をそらせば手が引っ込む、唸れば人が離れる、という経験を積んだ犬は、噛むところまで進む必要がありません。逆に、合図を無視されて押さえられ続けた犬は、合図を飛ばして噛むようになります。犬種や生まれつきよりも、この2つのほうが大きいです。
もう一つ、飼い主さまが見落としやすい理由があります。「噛んだら手が引っ込んだ」「噛んだら人が大きな声を出して構ってくれた」。犬から見ると、どちらも噛んだことへのご褒美です。環境省の咬傷事故の統計(令和4年度)では、噛まれた人の状況として「犬に手を出した」が751件、「遊戯中」が210件あり、通行中・配達の次に多い状況です。家の中の噛みの多くは、人の手のほうから犬の口に近づいています。
新しく載った子犬
子犬に噛まれて血が出た|手当てと、それが「本気噛み」ではない理由
この記事に来られる方がいちばん多く調べているのが「本気噛み 血が出る」「子犬に噛まれて血が出た」です。先に安心していただきたいのは、子犬の遊び噛みで血が出るのは、力が強いからではなく、乳歯が細く鋭いからです。乳歯は先が針のように細く、軽く当たっただけでも皮膚に刺さります(同じ解説は「約28本の小さなかみそり」と表現しています)。血が出た=本気で噛んだ、ではありません。遊び噛みは、その子犬が凶暴だという意味ではありません。
ただし、手当ては本気噛みと同じにしてください。犬の口の中には細菌が多く、噛み傷は化膿しやすいからです。犬の咬み傷は、まず傷をよく洗浄して細菌の数を減らすことが大切です。傷は深く、家庭では十分に洗えません。治療では感染予防の抗生物質と、必要に応じて破傷風の予防注射が要り、悪化すると治療に時間がかかり命に関わる場合もあるので早めに受診してください(労災病院形成外科の解説)。日本国内では狂犬病の発生はありませんが、細菌の感染は別の話です。
- 流水でよく洗う……石けんを使って、傷の中まで流水で数分。血を止めるより先に洗います
- 清潔なガーゼで押さえて止血……こすらない。出血が止まらない、傷が深い、手や顔なら、そのまま受診
- 受診の目安……傷が深い・腫れてきた・赤みが広がる・熱が出た・手の関節や顔を噛まれた・持病がある。子どもと高齢の方は迷わず受診
- 子犬の口の中も見る……抜けかけの乳歯や、口の中の傷が無いか。噛み方が急に変わったなら動物病院へ
そして、血が出たあとに叱らないでください。噛んだ瞬間に大きな声を出すと、犬によっては「反応が返ってきた」というご褒美になり、触られることをこわがる犬にもなります。血が出た日は、その遊びを終えて、次の章の手順に戻るだけです。
本気噛みと遊び噛みの見分け方|出血の量ではなく、前後で決まります
「本気噛み」と「甘噛み」は、傷の深さでは分かれません。分かれるのは、噛む前の合図と、噛んだあとの様子です。「遊びか喧嘩か」の見分け方を、人に対する噛みに当てはめると次のようになります。
| 見るところ | 遊び噛み・甘噛み | 本気噛み(こわさ・痛み・物を守る) |
|---|---|---|
| 噛む前 | 飛びつく、じゃれる、体が弾んでいる。人の手が動いたときに来る | 固まる、目をそらす、体を低くする、口を閉じて低く唸る。人が近づいたとき、触ったときに来る |
| 口の使い方 | 噛んでは離し、また噛む。くわえて引っぱる。舐めながら噛む | 一度噛んで離す(すぐ離れる)か、噛んで離さない。歯を当てる位置が正確 |
| 唸り | 大げさで、高い。遊びの声 | 低く、短い。口を閉じたまま。唇がめくれる |
| 噛んだあと | また遊びに戻ってくる。しっぽが高い | 距離を取る、隠れる、または固まったまま。しっぽが下がる |
| 起きる場面 | 遊びの最中、夕方、来客で興奮したとき | 触ろうとした、抱き上げた、寝ているところに近づいた、食べ物やおもちゃのそばに行った |
右の列に当てはまるなら、その子は「噛み癖」ではなく、噛まなければならない状況に置かれています。直すのは犬ではなく、状況のほうです。触ろうとしたときだけ唸って噛むなら、まず痛みを疑ってください。詳しくは唸りながら噛む犬の記事に分けています。左の列なら、次の章の手順です。興奮が強くて止まらない子の対応は、興奮して噛む犬の記事に書いています。
「舐めながら噛む」で調べて来られる方もいます。舐めて、軽く歯を当てて、また舐める。これは子犬どうしの遊びで使う口の使い方で、遊びの側です。ただし、歯が当たった瞬間に遊びを終える、は同じです。舐めているから許す、歯が当たったから叱る、と分けると、犬には区別がつきません。
歯の生え変わりで噛む時期|生後6〜7か月ごろまで続きます
子犬が何でもかじる時期には、体の理由があります。犬の歯は一般的に生後6〜7か月までに乳歯から永久歯に生え変わります(アニコム損害保険・ペット保険会社の獣医師監修の解説)。乳歯は28本で生後3週ごろから生え始め、成犬の永久歯は42本です。生え変わる時期の歯ぐきのむずがゆさは、かじることでやわらぎます。この時期の「かじる」を止めることはできないので、かじってよい物を決めて、手と家具をその対象から外すのが仕事です。
気をつけてほしいのは、かじらせる物の硬さです。子犬には硬いおもちゃ・ナイロンのかじり棒・牛のひづめ・氷は歯を傷めるので避けてください。骨も与えません。指で押してへこむ程度の、子犬用のゴムのおもちゃや、布のおもちゃを複数用意して、日替わりで出すと飽きにくいです。
もう一つ、生え変わりの時期に見ておいてほしいのが「乳歯が残っていないか」です。生え変わりの時期を過ぎても乳歯が抜けずに残る「乳歯遺存」は小型犬や超小型犬に多く、永久歯の生え方を邪魔してかみ合わせが悪くなったり、隙間に歯垢がたまって歯周病の原因になったりするため、多くの場合は全身麻酔での抜歯が必要です。生え変わりの時期には口の中を見て、乳歯の横に永久歯が並んで生えていたら、獣医師に相談してください。うちで紹介しているトイプードル、チワワ、ポメラニアン、マルチーズは、どれも小型犬です。
子犬に「噛む力の加減」を教える手順|噛んだら遊びが終わる、を毎回同じに
ここがこの記事の本体です。噛む力を加減できることは、すべての犬にとって非常に大事です。理由は、成犬になって痛いときやこわいときに人に口を当てることがあっても、加減を学んでいる犬は強く噛まないからです。子犬は本来、兄弟犬と遊ぶ中で「強く噛むと相手が高い声を上げて遊びが止まる」経験からこれを学びます。家庭では、それを飼い主さまが引き受けます。手順は、AKCの解説をもとにまとめました。
| 手順 | やること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 1. 歯が当たった瞬間に、遊びを終える | 「痛い」と一言(高い声で短く)。手を引いて、体の向きを変え、手を脇の下に入れて動きを止める。数十秒、犬を見ない | 高い声で犬がかえって興奮する子もいる。その子には声を出さず、黙って背を向ける |
| 2. 落ち着いたら、遊びに戻す | 犬が離れて座った・落ち着いたら、静かにほめて、おもちゃで遊びを再開する | 「噛む=終わる/落ち着く=また遊べる」の対比を毎回同じにする。ここが崩れると学ばない |
| 3. おもちゃに置き換える | 手や足に口が向きそうになったら、先にかじるおもちゃを差し出す。おもちゃを噛んだら遊ぶ | かじるおもちゃを常に手の届く所に。「おすわり」ができる子は、座らせてからおもちゃを渡す |
| 4. 続くなら、静かに休ませる | 3回置き換えても噛みが続くなら、クレートかサークルで数分。落ち着いたら出す | 罰として入れない。静かに入れる。噛む子犬は、疲れている・眠い・トイレ・空腹のことも多いです |
| 5. 噛んでいないときを、ほめる | 落ち着いて座っている、おもちゃをかじっている、そのときに声と小さなおやつ | 「噛まないときは何も起きない」だと、噛んだときだけ反応がある形になる |
手順1の「手を脇の下に入れて背を向ける」は、犬にとっての落ち着きの合図であり、注目を引き上げる小さな罰でもあります。叩く・押さえるといった力に頼らずに「噛んでも何も得られない」を伝える、いちばん確実な方法です。子犬が自分を見失って噛むような荒っぽい遊び方をしないことも大事です。手を口の前でひらひらさせる、手で押し返す、これは犬に「手はおもちゃ」と教えているのと同じです。
足に飛びついて噛む子には、こんな方法が使えます。歩くときに脚の横で小さなおやつを持ち、脚の横を落ち着いて歩けたら渡す。足を追う遊びを、横を歩く練習に変えるやり方です。横につかせて歩く教え方の記事の、家の中の段階と同じことをします。
この手順で差がつくのは、「毎回同じか」だけです。お父さんは遊びを終えるが、子どもは噛まれても遊び続ける。これだと、犬は「この人は噛んでいい」を覚えます。家族全員で「歯が当たったら終わり」をそろえてください。生後6か月までに加減がつかない場合は、経験のあるトレーナーか行動の専門家に相談してください。
合わせて読みたい参考記事↓
犬の甘噛みはいつまで続く?勝手に直らない理由と許すと起きること
生後半年〜1歳で急に噛むようになったとき|思春期と、自分の手を噛む場合
「犬 9ヶ月 噛む」「6ヶ月 噛む」で調べて来られる方がいます。生え変わりが終わったのに噛みが戻った、あるいは強くなった。この時期には理由が2つ重なります。
1つは思春期です。93頭を生後5か月と8か月で調べた2020年の研究では、飼い主の「おすわり」に従う割合が8か月では5か月より下がり、知らない人に対してはむしろ良くなっていました。生後8か月前後は、飼い主にだけ従いにくくなる時期で、それまで入っていた「歯が当たったら終わり」も、この時期にいったん効かなくなることがあります。やることは変わりません。手順1と2に戻して、回数を稼ぎます。「反抗している」と受け取って叱ると、この時期の犬は逆に噛みが強くなります。詳しくは犬の反抗期の記事に書いています。
もう1つは、体が大きくなって力がついたのに、遊びの終え方がそろっていなかった場合です。子犬のときは「痛くなかったから」流していた歯当たりが、8か月の歯とあごでは痛い。犬から見れば、同じことをしているだけです。この場合も、遅くはありません。手順は同じで、家族全員でそろえ直します。
自分の手や足を噛む・なめ続ける
「犬が自分の手を噛む」で来られた方へ。人を噛む話とは別で、これは体の話から入ります。足先やお腹をなめ続ける・決まった場所をしつこくなめるはストレスのサインの一つです。ただし、その前に、かゆみ・痛み・皮膚のトラブル・爪や肉球のけがが無いかを動物病院で確かめてください。皮膚に問題が無く、留守番中や退屈な時間にだけ出るなら、運動と遊びの量、ひとりで遊べるおもちゃを見直します。散歩の量の考え方は散歩の頻度の記事に書いています。
やってはいけないこと|叱る・押さえる・マズルをつかむ・手で遊ぶ
噛む犬への対応で、昔から言われてきたやり方の多くは、今はしつけに使うべきではありません。米国獣医行動学会(AVSAB)の2021年の見解では、力・痛み・精神的または身体的な不快に頼る方法は、しつけにも問題行動の対応にも使うべきではなく、罰を使った方法は、人や他の犬への攻撃的な行動や、不安に関わる行動と関連が見られ、効果の面でも劣ります。噛む犬に罰を使うと、噛む理由(こわさ・不快)を増やしながら、噛む前の合図だけを消していくことになります。
- マズル(口先)をつかむ、押さえつける、仰向けにして押さえる……力に頼る方法そのものです。押さえられて逃げられない犬は戦うほうを選びます。触られることをこわがる犬にもなります
- 噛まれたときに大きな声で叱る、叩く……犬によっては「反応が返ってきた」というご褒美になり、こわがりの子には恐怖の学習になります
- 手をおもちゃにして遊ぶ……手を口の前で動かす、手で押し返す、指をくわえさせる。「手は噛んでいい物」を教えています
- 噛まれても遊びを続ける……「噛んでも遊びは続く」を教えています。痛くなくても、歯が当たったら終わりです
- 家族で対応が違う……一人でも遊びを続ける人がいると、犬はその人にだけ噛みます
- 「唸ったら叱る」……唸りは噛む前の合図です。合図を叱って消すと、次からは合図なしで噛みます
- 食べているところから器を取り上げて慣らす……物を守る噛みを強くします。近づくと器に良いものが足される、の向きで慣らします
叱り方そのものの考え方は、犬が言うことを聞かない理由の記事にまとめています。
成犬の本気噛み|ひとりで直そうとしないでください
成犬が、人に対して本気で噛む。血が出る、噛んで離さない、家族の誰かがけがをした。この段階は、この記事の手順で直すものではありません。攻撃性にはこわさ・痛み・物を守る・縄張り・遊び・転嫁など多くの型があり、複数が重なっていることも多いので、診断と見通しと治療計画は、獣医行動学の専門家の助けを借りるのがいちばんです。攻撃・不安・恐怖のような重い問題には、環境の管理・行動修正・場合によっては薬を含む治療計画が要ります。
飼い主さまがその場でやることは、順番に3つです。噛まれた人の手当てと受診。噛んだ場面を「誰が・何をしたとき・犬はその前にどうしていたか」で書き留めること(同じ場面を避けるため)。そして、かかりつけの獣医師への相談です。痛みが原因の噛みは、体を診なければ分かりません。獣医師から行動の専門家へつないでもらう形が、いちばん近道です。
法律の面も書いておきます。民法718条は、動物の占有者はその動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う、と定めています(相当の注意をもって管理していたときは除く、という但し書きがあります)。東京都では、飼い犬が人を噛んだら、飼い主は24時間以内に事故発生届を出し、48時間以内に犬に狂犬病の疑いが無いか獣医師の検診を受けさせることが条例で義務づけられています(自治体で手続きが違います)。環境省の統計では、令和4年度に全国で4,923件の咬傷事故が届け出られています。「うちの子は小さいから」は、法律にも統計にもありません。岐阜県の咬傷事故のデータベースでは、飼い主の半数が自分の犬に攻撃性は無いと捉え、過半数がしつけはできていると捉えていた、とまとめられていて、県は中〜小型犬の飼い主にも事故防止の啓発を繰り返すことが必要だとしています。
「噛む」は、いちばん相談しにくく、いちばん早く相談してほしいことです。ひとりで抱え込まずにドッグトレーナーへご相談ください。フローエンスはブリーダー直販で、お迎えのあとも、しつけのご相談を365日お受けしています。「どんなときに、どこを、どのくらいの強さで」が分かっていると、相談がその場で具体的になります。飼い主さまのほうが疲れてしまったときは、育犬ノイローゼの記事も読んでみてください。
よくある質問
子犬に噛まれて血が出ました。本気で噛んでいるのですか?
血が出た=本気噛み、ではありません。子犬の乳歯は約28本あり、先が針のように細く鋭いので、遊び噛みでも軽く当たっただけで皮膚に刺さります。遊び噛みは子犬が凶暴だという意味ではなく、正常で成長に必要なものです。ただし手当ては本気噛みと同じにしてください。犬の口の中は細菌が多く化膿しやすいので、石けんと流水で傷の中までよく洗い、傷が深い・腫れる・赤みが広がる・手の関節や顔・子どもや高齢の方は早めに受診します。叱らず、その遊びを終えて、噛む力の加減を教える手順に戻ってください。
犬が噛む理由は何ですか?
歯の生え変わり・遊びと興奮・こわさ(防御)・痛み・物を守る、の5つに分かれます。生え変わりと遊びは子犬の正常な行動で、噛んでは離してまた噛む、体が弾んでいる、が特徴です。こわさ・痛み・物を守る噛みは、その前に体を低くする、目をそらす、白目が見える、固まる、口を閉じたまま低く唸る、といった合図が出ています。いちばん多い攻撃性はこわさからくるもので、追い詰められた・押さえられた犬は逃げるより戦うほうを選びやすいです。急に噛むようになった、特定の場所を触ったときだけ噛む、なら先に動物病院で体を診てもらってください。
噛む犬と噛まない犬の違いは何ですか?
性格や犬種の差ではなく、「噛む前の合図が人に通じているか」と「噛む力の加減を子犬のうちに学んだか」の差です。目をそらせば手が引っ込む、唸れば人が離れる、という経験を積んだ犬は、噛むところまで進む必要がありません。逆に、合図を無視されて押さえられ続けた犬や、噛んだら手が引っ込む・大きな声で構ってもらえるという経験を積んだ犬は、噛みが増えます。環境省の咬傷事故の統計(令和4年度)でも、噛まれた人の状況として「犬に手を出した」が751件で、家の中の噛みの多くは人の手のほうから犬の口に近づいています。
子犬が噛まないようにしつける方法を教えてください。
噛むこと自体は止められないので、「噛む力の加減」と「口を離すこと」を教えます。手順は、①歯が当たった瞬間に「痛い」と一言(高い声で興奮する子は黙って)背を向け、手を脇の下に入れて動きを止める、②落ち着いたら静かにほめて遊びに戻す、③手に口が向きそうになったら先にかじるおもちゃを渡す、④3回置き換えても続くならクレートで数分静かに休ませる、⑤噛んでいないときにほめる、の5つです。毎回同じにすること、家族全員でそろえること、手をおもちゃにして遊ばないことが条件です。生後6か月までに加減がつかない場合は、経験のあるトレーナーか行動の専門家に相談してください。
生後9か月なのに急に噛むようになりました。なぜですか?
理由は2つ重なります。1つは思春期で、93頭を生後5か月と8か月で調べた2020年の研究では、飼い主の指示に従う割合が8か月で下がり、知らない人にはむしろ良くなっていました。生後8か月前後は飼い主にだけ従いにくくなる時期で、入っていた「歯が当たったら終わり」がいったん効かなくなることがあります。もう1つは、体が大きくなって力がついたのに、遊びの終え方が家族でそろっていなかった場合です。どちらも手順は同じで、「歯が当たったら遊びが終わる」を家族全員でそろえ直します。反抗と受け取って叱ると、この時期の犬は噛みが強くなります。
噛んだときに叱ったり、口をつかんだりしてもいいですか?
使わないでください。力・痛み・不快に頼る方法はしつけにも問題行動の対応にも使うべきではなく、罰を使った方法は攻撃的な行動や不安に関わる行動と関連が見られ、効果の面でも劣ります。マズルをつかむ・押さえつける・仰向けにして押さえるは力に頼る方法そのもので、押さえられて逃げられない犬は戦うほうを選びます。噛んだときの大きな声も、犬によっては「反応が返ってきた」というご褒美になります。唸りを叱って消すと、次からは合図なしで噛むようになります。やることは、歯が当たったら遊びを終える、それだけです。
成犬が本気で噛みます。どうすればいいですか?
この段階は家庭の手順で直すものではなく、獣医師と行動の専門家に相談する範囲です。攻撃性にはこわさ・痛み・物を守るなど多くの型があり複数が重なることも多いので、診断と治療計画は獣医行動学の専門家の助けを借りるのがいちばんです。その場でやることは、噛まれた人の手当てと受診、噛んだ場面(誰が・何をしたとき・犬はその前にどうしていたか)を書き留めること、かかりつけの獣医師への相談の3つです。法律の面では、民法718条で動物の占有者は損害を賠償する責任を負い、東京都では犬が人を噛んだら24時間以内の届出と48時間以内の獣医師の検診が条例で義務です(自治体で手続きが違います)。
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まとめ
犬が噛む理由は、歯の生え変わり・遊びと興奮・こわさ・痛み・物を守る、の5つで、噛む前後の様子で見分けます。生え変わりと遊びは子犬の正常な行動で、血が出るのは乳歯が細く鋭いからです。手当ては流水でよく洗って早めに受診。こわさ・痛み・物を守る噛みは、その前に体を低くする・固まる・低く唸るなどの合図が出ていて、直すのは犬ではなく状況のほうです。子犬には「歯が当たったら遊びが終わる」を家族全員で毎回同じにし、おもちゃに置き換え、噛んでいないときにほめて、噛む力の加減を教えます。生後8か月前後は飼い主にだけ従いにくくなる時期なので、叱らず手順に戻します。叱る・押さえる・マズルをつかむ・手で遊ぶ・唸りを叱るは逆効果です。成犬の本気噛みは、手当てと受診、場面の記録、獣医師と行動の専門家への相談の順で、ひとりで直そうとしないでください。
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