犬の社会化不足による問題行動について、多くの飼い主さまが「子犬の時期に出来なったから手遅れかもしれない」と思っている方がいらっしゃいます。
その理由も、ネット検索すると「社会化トレーニングは生後4ヶ月まで」「成犬になったら治らない」と紹介している記事が沢山あり、飼い主さまの不安を煽るような内容が多いことが原因と考えています。
しかし、全く嘘を言っている訳ではないため後ほど詳しくご説明するとして、まずは社会化不足による問題行動について解説します。
社会化不足による問題行動とは
犬の社会化不足が原因となる問題行動をまとめました。ワンちゃんの問題行動について当てはまる場合は社会化不足が原因である可能性が高いため、照らし合わせてみてください。
吠え
考えられる例(一部抜粋)
人に吠える
車に吠える
インターホンに吠える
部屋で外から聞こえるエンジン音に吠える
すれ違う犬に吠える
一例ではありますが、これらの吠えの原因は社会化不足による可能性が高いです。
吠えについては単なる”吠え”ではなく、要求吠え・警戒吠えなど吠えの中にも種類があります。
社会化不足による吠え問題の多くは警戒吠えのケースが多く【モノ】に対し「このデカいモノはなんだ!」「自分の縄張りに知らない人が入ってくるから追い出さなきゃ!」と警戒してしまうことが原因です。
子犬期から家を含む自分の居住空間のみでの生活、ご家族のみにしか触れていなかった場合、ワンちゃん自身も知らないモノ・コト・ヒトに対し必ず良いイメージを持つ訳ではなく、不安になり警戒してしまうことも想像できるかと思います。
犬同士のコミュニケーション
お散歩中やドッグランで他のワンちゃんと上手く遊べず、怒られてしまったり、一方的に相手のワンちゃんに対し吠えて威嚇してしまうなどの問題行動は社会化不足が原因の可能性が高いです。
犬社会にもルールがあり、子犬期に学んでなければ犬社会でのコミュニケーションが取れず、相手を怒らせてしまったり、反対に怖いために吠えて近づけさせないといった行動をとってしまうこともあります。
挨拶の仕方、上手な遊び方、噛む力などは全て大人ワンちゃんから学ぶことになるため、犬社会から離れたワンちゃんは上手にコミュニケーションが取れない傾向があるでしょう。
この問題も社会化不足が原因かも?
実は社会化不足による問題行動は多岐にわたり、一般的な問題の多くは社会化不足が原因であることも少なくありません。
下記では「実は社会化不足が原因」な例をまとめました。
噛み
外の環境にパニックになり、触れられた際に噛んでしまうこともあります。
原因としては、ワンちゃんが野外での車や人の多さや、他のワンちゃんが多くコミュニケーションがとれず状況を処理できないことでパニックに陥り、自己防衛のために飼い主さまが触れた際に咄嗟に噛んでしまうケースです。
トイレ
環境の変化に対応できず、トイレを失敗してしまうことがあります。
例えば、ご家族以外の人と触れる機会が少なく警戒が強い子の場合、普段は失敗しないのに、来客時にのみ失敗する子は社会化不足が原因の可能性が高いでしょう。
その他
お散歩中に飼い主さまの方へ意識がいかずに周りをキョロキョロと警戒している場合は、他の社会化不足による問題行動と同様に、パニックになり飼い主さまの声も届いていない可能性が高いです。
ただ、お散歩が嬉しくてテンションが上がっている場合や元々、飼い主さまの声を聞こうとしていない場合は社会化不足ではなくトレーニング不足のため意識が向かうように学ばせましょう。
社会化不足の治し方
それでは、社会化不足による問題行動が目立つようになった場合の治し方をご説明します。
ここでは飼い主さまに覚えて頂きたいことは2つです。
1、トレーニングに正解はない
→ワンちゃんの性格によって異なるため
2、無理矢理慣れさせないこと
→ワンちゃんのペースで慣れせさせましょう
モノ・コトにゆっくり慣れさせる
「これは警戒しないで大丈夫だ」「怖いものじゃないんだ」と学習すれば自然と落ち着くようになり、お散歩中でも飼い主さまの声を聞く余裕も生まれてくるでしょう。
原因が社会化不足であれば【経験や体験をしていないこと=予測ができず不安】という人間でも同じ心理状態となります。
そのため、ワンちゃんに合わせてゆっくりと慣れさせていきましょう。
慣れさせる際におやつを使って意識を飼い主さまに向けることが最も有効的な方法です。
別の方に意識を向けることで不安対象への意識が薄まり、警戒心も薄れてきます。
犬社会は犬同士での学び合い
犬には犬のルールがあり、そのルールは飼い主さまが教えることはできないため、ワンちゃんが学べるキッカケを作ってあげることが重要となります。
ドッグランやお散歩などワンちゃんに触れ合える場所から飼い主さまが遠ざかってしまっては学習の機会を奪ってしまっていることになります。
そのため、犬社会での学びの時間を設けるためには飼い主さまが積極的に触れあうキッカケを作ってあげることを心掛けましょう。
注意点としては、ドッグランでいきなりノーリードで放任したり、お散歩中にワンちゃんが嫌がっているのに挨拶させようと無理矢理近づけたりしないことです。
良かれと思った行動がワンちゃんにとってトラウマとなることもありますので、注意しましょう。
また、時間が作れない場合などは【犬の幼稚園】等のご活用も視野に入れておくのもオススメです。
ご家族以外の方にも触れてもらう
来客時に吠えてしまったり、他の方が触ろうとすると噛もうとしてしまう場合は、ご家族以外の”人間”を信用していないことが原因と考えられます。
そのため、最も効果的な方法はワンちゃんが好きなおやつをご家族以外の方に与えてもらい、害がないことを学習させることです。
ここでの注意点は、ワンちゃんから歩み寄ってくるのを待ってください。人間が苦手なワンちゃんに対し、いきなり近づいてこられ頭を撫でられたら「怖い」と感じます。歩み寄ってくるのを待ち、驚かせないよう手の平からそっとおやつを与え、いきなり頭に触れるのではなく身体から触れて「怖くないよ」という意思を示すことを心掛けましょう。
成犬の社会化が難しいと言われる理由とは
なぜ、成犬になってからの社会化トレーニングは難しいと言われるのでしょうか?
それは、人間と同じで性格が形成されてしまい自我を持つようになるためです。
自我があるということは【〇〇=〇〇】といった固定観念を持つため「家族以外みんな敵だ」「車は追い払わないと」といった誤った行動が目立つようになります。
これが、社会化不足による問題行動と呼ばれるものです。
こうした背景から、固定観念を変えることは人間でも難しいようにワンちゃんも同様で治すまでに時間がかかるため、成犬になってからの社会化トレーニングは難しいと言われるのです。
しかし、時間がかかるだけで治らないわけではありません。子犬期のように柔軟に対応することは難しいですが、時間をかけてトレーニングを行えば社会性は必ず身に付きます。
ワンちゃんのペースで〇〇は怖い〇〇は不安といった誤解をゆっくりと解くことで、考え方も変わり、ワンちゃん自身もストレスなく過ごすことができるはずです。
焦らずゆっくりと行えば必ず結果はついてくるので、諦めずに励みましょう。
合わせて読みたい参考記事↓
犬の社会化に”遅い”はない!社会化の理解とトレーニングについて
社会性を身に着けることで豊かになる日々
子犬期に社会化ができず日々の生活の中で問題行動が目立ってしまったり、ワンちゃん同士のコミュニケーションがとれず吠えてしまい、お散歩中も気が抜けないといったお悩みを抱えている飼い主さまも少なくありません。しかし、本記事内で解説した通り社会化に遅いことはなく、時間をかければ成犬であっても十分に社会性が身に付きます。
社会性が身に付いたワンちゃんは飼い主さまの声も入りやすく意識が飼い主さまの方へ向かうため、トレーニングも行いやすくワンちゃん自身も警戒せずにゆっくりと過ごすことができるのでストレスの負担も軽減されるでしょう。
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